19歳山口まゆが「大学に行かなきゃ」と決断した、“憧れの女優・井上真央”からのアドバイス

文春オンライン / 2019年10月3日 17時0分

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©鈴木七絵/文藝春秋

太平洋戦争中のフィリピンを舞台に、2人の日本人女性の壮絶な戦争体験を描いたNHK特集ドラマ『マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~』。日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた日系2世として、戦争に飲み込まれていく少女を熱演して、話題になった山口まゆさん。19歳の彼女に共演した清原果耶さんのこと、憧れの先輩俳優、20歳を前に思うことをお聞きしました。

◆◆◆

大学に入って最初の夏休みは?

――大学生だとお聞きしました。今は夏休みですか?

山口 そうです。今日までなんですけど……(笑)。

――えっ! 貴重な最終日に、お時間ありがとうございます。夏休みは満喫されましたか?

山口 大学の先輩の映画に参加したりしていました。

――大学では何を勉強されているんですか?

山口 映画学科で演技を専攻しています。

――お仕事でも演技、大学でも演技を。

山口 そうなんです。でも演技を専攻しつつも、大学では作品を0から作り上げる裏方の勉強をしたいなと思っているんです。

――ゆくゆくは自分で作品を作ってみたい?

山口 私はまだ1年生なので先になりますが、これから制作の機会が何回かあるので、そこで自分なりに作れたらいいなと。

『ハガネの女』吉瀬美智子さんに憧れて

――そもそも山口さんが女優を目指されたきっかけは劇団四季のミュージカルだったそうですね。

山口 昔のことで、なんだか恥ずかしいですね。当時、バレエを習っていて「絶対バレリーナになる!」ってことしか頭になかった時期に、母に連れられて見に行ったんです。初めての舞台観劇だったんですが、そこで見たダンスや歌で表現される世界が衝撃的で。

――何を観られたんですか?

山口 『サウンド・オブ・ミュージック』です。見た瞬間に、舞台に立ちたい衝動を抑えきれなくなって、すぐにお母さんに相談しました。まずは習い事の1つみたいな感覚で子役専門の事務所に入ることになって。

――そこから今の事務所に移籍されるんですよね。本格的に女優として頑張っていきたいと?

山口 小学生から色々出させてもらって、中学生になって少しお休みしていたんです。もう演技するのは終わりにしようか、とも話していた時に、ドラマにハマって。ちょうど母が『デ☆ビュー』という雑誌を持ってきてくれて、当時放送されていた『ハガネの女』の吉瀬美智子さんが所属されているのを見て単純に「いいな」と思ったのがきっかけでした。そこから今の事務所に入ってお芝居をちゃんと始めることになりました。

「母から聞いた経験談」を活かして15歳で演じた“14歳の母”

――女優活動を開始されて、すぐにNHKドラマ『聖女』で、事務所の先輩でもある広末涼子さんの幼少役として出演されます。子役として活動されてきましたから、演技はすんなりこなせましたか?

山口 それが全然できなかったんです。自分の中でも「できる!」という謎の自信がみなぎっていたんですが、セリフの練習から動作から何から何まで、お芝居の先生とみっちり練習した記憶しかないです。現場にも積極的に参加させてもらっていたので、あっち行って、こっち行って……すごく忙しかったです。

――大変なスケジュールですけど、まだ中学生ですよね? 忙しすぎて「もう、いや!」みたいなことはありませんでしたか?

山口 不思議とありませんでした。当時はまだ「仕事」という意識もなくて、ただ単に「お芝居している、なんか楽しい!」っていう感情だけで動いていたんですよね。

「違う人になれる!」という感覚とも少し違って、演技に対して「こういうことやってみよう」「こういうことしたらもっと楽しいかな?」そういう感覚なんです。

――そんな中で出演したドラマ『コウノドリ』では、中学生で母になる役を演じて話題になりました。当時は山口さんも中学生ですよね?

山口 はい、15歳でした。同世代の役柄とは言っても「妊娠する」「母になる」というのが未知の世界すぎて、色々調べたのは覚えています。出産の動画を見たり、お腹に詰め物をして過ごしてみたり。でも母から聞いた経験談が一番お芝居に繋げられました。出産予定日の前日はどんな思いだったのか、出産するときにどこを力めばいいのか、とか。

「今度は何をツッコもうか」佐藤浩市の息子・寛一郎と挑んだ初時代劇

――山口さんが挑戦されている役柄は少し個性的なキャラクターが多いですよね。『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』での浮気に気づく娘も、『コウノドリ』での14歳の母も、自分で経験していないことを軸に演じる役柄です。まもなく10月4日に公開される映画『下忍 赤い影』でも、薩摩藩のお姫様という役どころですよね。

山口 すごく強い女性像ではあるんですが、「お姫様」であるというバランスはすごく気をつけました。所作は普段の生活から基本の内股で歩くとか、姿勢を正すとか、手をちゃんと揃えることとか。時代の雰囲気を殺さないように。

――幕末の動乱を裏側から描く今作ですが、主演の寛一郎さんは佐藤浩市さんの息子さんです。お2人でのシーンも多かったと思いますが、共演されてみていかがでしたか?

山口 すごく自然体の姿で演じられている印象でした。寛さん演じる竜は忍者の最下層「下忍」の末裔なんですが、腕はあるけどどこか“未完成”なキャラクターなんですよね。抜けているところもあったりで見て頂くと思わずツッコまずにはいられないシーンも多いんですが、自然体の寛さんと、“未完成”な竜が合わさったときにぴったりフィットするんです。だから私も「今度は何をツッコもうか」「ここは引いてみよう」とか、ごく自然に静という役に入り込めたんです。

――まさに山口さんが芝居を楽しむ感覚が満載ですね。

山口 そうなんです。お芝居の中でも、色々と発見できることが多い作品でしたね。

「凛子役が清原さんで良かった」2人で駆け抜けた“戦争”

――今回共演された寛一郎さんは山口さんと同世代ですよね。他の作品でも徐々に、同世代の俳優さんと共演する機会も増えていると思います。先日話題となった『マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~』では、清原果耶さんとの共演でした。

山口 彼女は強い人です(笑)。自分にはない演技をされる女優さんです。撮影中は、お互いに役柄に入り切った状態で向き合えていたので、相乗効果も生まれて。

――今作は75年前の太平洋戦争が舞台です。山口さんはいま19歳ということで、なかなか想像しづらい重いテーマでもあったと思います。撮影にはどうやって臨まれましたか?

山口 これまでは事前に役を作りこんで現場に行かないと安心できないことが多かったんです。でも今回は戦争という大きなテーマの中で、「凛子(清原果耶)のために生きる」という命題があって、それを何よりも大事にしたいと「凛子を支える」ことだけを考えて撮影に入りました。

――すごく印象的だったのが、山口さん演じる綾が「あの虫、食べられるかな」と言って、おもむろに裁縫セットを取り出して、虫を茹でるシーンなんです。SNSなどでも「つらい」と話題でした。

山口 虫のシーンに限らず、苦しいシーンですべて「凛子を支えるために私が生きている」と思えたので、不思議と絶望感は生まれなかったんです。今までにない演技の仕方でしたけど、すごく良い経験になったし、改めて凛子役が清原さんで良かったと思いますね。

禁断の質問「ライバルとは誰でしょうか?」

――清原さんは朝ドラ『なつぞら』にも出演され、活躍されています。同世代の活躍は気になるものですか?

山口 やっぱり切磋琢磨していかないといけないと思います。単純にもっとお芝居がしたいし、そのためにはもっと1つ1つの役に丁寧に取り組まないといけないし。同世代の活躍はやっぱり刺激になります。単純に勝ちたいとかではなくて、自分にはない魅力を持っていたり、逆に自分に近いものがあるなと思ったりする人は多いですね。それをライバルって言うんですかね?(笑)

――意地悪な質問になると思うんですが、そういう意味でのライバルとは誰でしょうか?

山口 難しいですね……。でも、富田望生ちゃんがパッと浮かんできました。

――富田さんと言えば、朝ドラ『なつぞら』で主人公の奥原なつと同じ十勝農業高校に通うよっちゃん(居村良子)役を演じていましたね。

山口 望生ちゃんは、自分とはジャンルも違うし、私にはできない演技をしているのですごく羨ましいなと思って見ています。純粋に好きなんです、彼女の演技が。

「井上さんみたいになりたい」惹かれたのは“芯の強さ”

――その一方で、木村拓哉さんや藤原竜也さんなど先輩俳優の方々と共演をされることも増えています。

山口 撮影中は、私自身も役に入っているので客観視できないことが多いんです。でもいざスクリーンで映画を見ると、共演させていただいた方々の演技にびっくりしますよね。「こんなすごい演技をする方と一緒にお仕事をさせていただいていたのか」と。

――一番影響を受けた俳優さんは誰でしょうか?

山口 最近では『明日の約束』というドラマで共演させていただいた井上真央さんですね。撮影中に井上さんの演技を見せていただく機会が多くて。すごく余裕があって、とにかくカッコいい(笑)。役に入り込みながらも、自分自身も殺していない演技なんです。

――自分自身も殺していない演技とは?

山口 良い意味で井上さんの芯の強さを役に感じるというか。井上さんがすごく魅力的だからこそできるんだと思うんです。佇まいとか、人間性にもすごく惹かれました。「井上さんみたいになりたい」ってずっと思っているんです。

高校2年生の冬に、井上真央からもらった“アドバイス”

――井上さんにアドバイスをもらうことはなかったんですか?

山口 お芝居については恐れ多くてまだお聞きできていなくて。でも大学受験について相談していました(笑)。

――大学受験ですか?

山口 ちょうど高校2年生の冬の時期に撮影をしていたんですが、大学に行くか行かないかですごく迷っていたんです。そこで井上さんに相談させていただいていました。

――井上さんはどんなお言葉を?

山口 「記念受験として受けるのもいいし、嫌だったら辞めればいいし。でも1回経験してみるっていうのも良いと思うよ」と色々とアドバイスを頂きました。井上さんも子役デビューして俳優として仕事をしながらも大学に進学されていたので、「大学生は両立が大変だけど、楽しいよ」とか話しているうちに、自然と大学に行かなきゃダメだ、と腑に落ちたんです。

――そこで覚悟を決めて。

山口 行くんだったらここがいい! と、第一志望に落ちたら大学には進まないという選択をしました。演技に限らず写真だったり美術だったり映画だったり、自分の好きなことを好きなだけ学べる環境として、今の大学を選びました。

――まさに背水の陣で挑まれた大学受験ですね。合格は井上さんに報告されましたか?

山口 してないんです。色んな作品に参加させてもらって、一回りも二回りも成長した自分も見てほしいなって。また共演できるように頑張って、その時に「あの時はありがとうございました」と井上さんに報告したいです。

写真=鈴木七絵/文藝春秋

INFORMATION

映画『下忍 赤い影』 

https://genin-movie.com/pc/main/index.html

出演:寛一郎 山口まゆ  結木滉星 津田寛治 他

あらすじ
武士による統治が終わろうとしている幕末。忍者と呼ばれるものは、もはや時代遅れとなっていた。竜(寛一郎)は、忍者組織の最下層である「下忍」の末裔であるが、今や抜け忍となり江戸で暮らしている。そんなある日、竜はその出自を見抜かれて勝海舟(津田寛治)にスカウトされて密命を授かる。それは、「江戸に嫁がせた薩摩藩の姫・静(山口まゆ)を奪還して国に送り戻せ」というものだった。

映画『下忍 赤い影』は10月4日(金)よりシネマート新宿・心斎橋にて公開

(「文春オンライン」編集部)

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