各紙は「新聞の軽減税率」をどう論じてきたか? 自信とプライドの「読売」、歯切れの悪い「朝日」、電子版はまさかの10%

文春オンライン / 2019年10月1日 5時30分

写真

軽減税率対応の電子レジ ©時事通信社

 さて問題です。「オロナミンCとリポビタンD、消費税率はそれぞれ何%?」

 正解は清涼飲料水のオロナミンCは軽減税率の対象で「税率8%」、医薬部外品のリポビタンDは「税率10%」。

 クイズのようにややこしい消費税の軽減税率。ほかにも例をたくさん見かけたと思う。

新聞は「新聞の軽減税率」についてどう論じてきたか?

 しかし最大の“なぞなぞ”がある。新聞だ。

 軽減税率の対象には「酒類・外食を除く飲食料品」のほかに「週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」が含まれている(国税庁HP)。

 私は新聞を12紙定期購読しているので8%据え置きは助かるが、でもどうしても次の疑問が浮かぶ。

「新聞て生活必需品なの?」

 私は新聞はもう「嗜好品」だと思っている。タバコや酒と同じ。だからこそ12紙読んでる好事家を面白がってくれる人や媒体も出てくるのだろう。なので新聞が生活必需品だなんて違和感しかない。

 では新聞は「新聞の軽減税率」についてどう論じてきたか?

 2015年の12月に軽減税率論議がうごいた。当時の社説を読み比べて拙著『 芸人式新聞の読み方 』にくわしく書いたが、今回一部を抜粋してみる。各紙のキャラが出ていて今振り返っても興味深いのだ。

 まず自身が軽減税率の対象となることに、まったく照れがなかったのが「読売新聞」だった。

【読売】軽減税率の対象であることへの自信とプライド

《新聞と出版物は、民主主義の発展や活字文化の振興に貢献してきた。単なる消費財でなく、豊かな国民生活を維持するのに欠かせない公共財と言える。こうした社会的役割を踏まえ、日本でも、新聞と出版物に軽減税率を適用すべきである。》(社説・2015年12月13日)

 照れてない!

 ナベツネ(渡邉恒雄)が言っていると想像して読んでほしい。もっとわかりやすくて面白いはずだ。

 この7日後、読売社説は怒った。枝野幸男(民主党・当時)が新聞の軽減税率に疑問を表明したのだ。

 すると、

《見過ごせないのは、枝野氏が新聞への軽減税率適用に関して、「新聞よりも水道や電気が必需品だ」と発言していることだ。》(2015年12月20日)

 さっそく読売(ここもナベツネが言っていると想像)が噛みついていた。さらに、

《民主主義や活字文化を支える重要な公共財である新聞や出版物に対する理解を欠いていると言わざるを得ない。》(同)

 まったく照れてない! 軽減税率の対象であることに自信とプライドを持っている。

【朝日】「日常生活に欠かせない」位置づけを重く受け止め……

 一方、読売に比べてどこかモジモジしていたのが「朝日新聞」であった。同じ時期の社説をみてみよう(2015年12月16日)。

《新聞が対象に加わった。》

《私たち報道機関も、新聞が「日常生活に欠かせない」と位置づけられたことを重く受け止めねばならない。》

 なんだこの感じ。おすもうさんが「謹んでお受けします。横綱の名に恥じぬよう精進します」とかしこまって述べているようではないか。

《軽減税率問題を通じてあらためて浮かび上がったのは、財政の再建と、所得や資産が少ない人への配慮、すなわち「再分配」強化の両方を同時に模索することの重要性だ。》

 なんか歯切れが悪い。自分たち新聞の税率が据え置きになることに対してバツがわるいようにみえた。

 朝日と言えば先週の土曜に山本太郎インタビューを載せていた(9月28日)。

 その中で「消費税を廃止すればその穴は20兆円を超えます。できます?」と質問する記者に「むしろできない理由がわからない」と持論を述べる山本太郎。さらに「消費に対する税の影響力は大きい。新聞だって部数が落ち込むのが嫌だから、軽減税率の適用を求めたわけでしょう」と切り返した。

 それまで挑発的に質問してきた朝日記者は何も答えず。完全に一本取られていた。こういうツッコミは今後も新聞には有効なのだろうなぁ……。

同じ新聞でも「電子版」は10%という謎

 さて、新聞の軽減税率についてはもっと「なぞなぞ」がある。

 同じ新聞でも「電子版」は10%なのだ。

 エエーーーー!

 私は12紙のうち半分以上は電子版で購読しているから税率が異なる。ややこしい。

 なぜこうなるのか? 国税庁によると、

《インターネットを通じて配信する電子版の新聞は、電気通信回線を介して行われる役務の提供である「電気通信利用役務の提供」に該当し、「新聞の譲渡」に該当しないことから、軽減税率の適用対象となりません(消法2(1)八の三)。》(国税庁HP)

 いろいろ言ってるが、インターネットは生活必需品ではないから電子版は10%という言い分が浮かぶ。しかし私が今回下世話に想起するのは「新聞販売店」の存在である。

 新聞の命綱を握る販売店がある以上、定期購読というシステムはたとえ細々となっても保たれる。ここを「保護」する必要があったのではないか? まるで絶滅のおそれがある希少種を保護するように。

 逆に言えば「紙の新聞の配達システム」をお上に特別扱いしてもらったことになる。こうなると今後は政府の政策論議、とくに税金に関して新聞は腰が引けることはないだろうか。素朴な疑問である。

 冒頭に記したとおり、今回の消費増税ではクイズ解説のようなものばかりで「増税後にあれもこれもぶっこむ政府の景気対策は本質を見失ってないか?」などのツッコミが薄かったように感じた。新聞はまさか“握られてしまった”のか。

 とりあえず、10月以降は税金の問題点の記事を2%ほどアップして書いていただきたいと思います。

(プチ鹿島)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング