目先の相続税にとらわれたら損をする!? 税理士も間違える「落とし穴」とは

文春オンライン / 2019年10月3日 5時30分

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「相続制度は複雑です。その制度を理解して利用できる人だけがトクをする。知らない人は損をします。一番失敗するのは生半可な知識で対応した時です」

 大阪国税局出身の片山敏彦税理士はこう話す。

 失敗とは、例えばどういうことなのか。

(1)節税を目指し、長年かけてトータル1億円以上の生前贈与に成功したつもりだったが、税務調査で贈与を否認され、3000万円以上を追徴課税された例。

(2)納税資金捻出のために土地を売ろうとした時に初めて、その土地が建築基準法にひっかかるため売れないとわかった例。

(3)付き合いのなくなった法定相続人に相続放棄を求め、念書まで取ったが、相続時に手続きの不備を突かれ、逆に多額の遺産を取られた例……失敗は、家族それぞれ様々な形で起きることが特徴だ。

父の遺産は母と子供でどのように相続すべき?

 相続は「2次相続」までを見据えた対応が重要になる。両親がいれば、相続は2回あることに気が付いていない人は多い(最初の相続を「1次相続」、次の相続を「2次相続」という)。

 父親が先に亡くなった時、配偶者優遇制度を利用すれば母親がすべての財産を非課税で相続できる。しかし、目先の相続税ゼロにとらわれれば、母親が亡くなった時に相続税が高くなる恐れがある。1次相続で母親と子供が半々に相続すれば、1次相続で税金を払っても通算すれば相続税を減らすことができる。

 大阪国税局出身の秋山清成税理士はこう話す。

「1次相続で配偶者がどれだけ相続すればもっとも有利になるかは、夫妻それぞれの財産と相続人の数、家族の状況によって異なり、百の家族があれば百通りある」

税理士の選任を正しく行わなければ間違える

 問題は、税理士も時に間違えること。

 父親か母親が亡くなった時、または夫や妻が亡くなった時、相続税の申告を依頼できる税理士の顔が浮かぶだろうか。

 一生に1回か2回の相続では税理士の顔が浮かばないのは当然だが、それは税理士の側から見ても同じだ。

 全国約7万8000人の税理士の多くは、定期的な収入が見込める法人税や所得税の申告が専門で、不定期の依頼しかない相続税の申告を柱にしている税理士は少ない。相続税申告の経験を積めない税理士は多いが、相続税の申告報酬は1件当たりでは法人税や所得税よりも高いため、経験がなくても申告を引き受ける税理士がいるという。

 そして、しばしば間違える。上記に挙げた失敗例も税理士の提案だったものがある。

 相続そして相続税の申告には、「落とし穴」が多い。相続制度をある程度理解し、税理士の選任を正しく行わなければ間違えるものなのだ。

「国税OBが教える『相続』」シリーズ第2弾( 「文藝春秋」10月号 に掲載)では、国税OBが体験した実例を紹介しながら相続の「落とし穴」をレポートした。

(坂田 拓也/文藝春秋 2019年10月号)

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