慰安婦と売春婦は「似たようなもの」発言の韓国名門大教授がついに告訴された!

文春オンライン / 2019年10月8日 18時42分

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現地テレビでも柳錫春教授(左)の発言は大きく取り上げられた(KBSテレビHPより、9月23日)

 韓国の名門大学、延世大学(ソウル市)の柳錫春・社会学科教授(64)が、大学の講義で「慰安婦を売春婦と同一視し、元慰安婦の名誉を毀損した」として、猛烈な非難にさらされている。

 柳氏はこの問題で、ソウル・日本大使館前に「慰安婦像」を設置したことでも知られる韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)を前身とする「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)から名誉毀損で告訴されて、ついに法廷に立つことになりそうだ。

「知りたいなら、一度やってみますか」

 柳氏は9月19日の講義で、慰安婦について「(売春婦と)似たようなものだ」と発言。さらに、韓国メディアによれば、慰安婦について、次のような“問題発言”をしたという。

「売春の理由は貧しさのためだ。昔もそうだった」

「日本が強制連行したという記録はなかった」

「(慰安婦問題の)直接的な加害者は日本ではない」

「日本がとんでもない国として扱われるのは韓国だけだ。日本は世界的な大国だ」

 これらの発言に、講義を受けていた学生らは反論。

「日本がいい仕事をあげる、教育を受けられるとだまして、ハルモニ(元慰安婦の女性)たちを連れて行ったのではないか」「慰安婦の被害者が自発的に行ったということか」

 と教授を問いただした。

 柳氏はこれら学生の質問に「今も売春に足を踏み入れる過程はそんなものだ。知りたいなら、一度やってみますか」と答えたという。

 この講義での柳氏の発言の一部は、何者かによって録音されており、ネット上で拡散された。

批判殺到で大学授業は中止に

 韓国メディアの報道が本格化したのは、発言から4日が経った9月23日ごろからだった。まず、延世大学の学生自治会や同窓会などが柳氏の発言に猛反発して、「人類史上、最も醜悪な国家暴力の被害者(元慰安婦)を『自発的売春』などと罵倒し、あざ笑った」として、大学に柳氏の罷免を要求。さらに、市民団体「庶民民生対策委員会」が、名誉毀損や虚偽事実流布、セクハラの疑いで柳氏を告発した。

 今回の柳氏の発言は、左派系紙の「ハンギョレ」だけでなく、保守系の「中央日報」なども紙面やネット上で報道。さらにテレビもほぼ全局が報じたが、特に非難が集中しているのは、柳氏の「知りたいなら、一度やってみますか」という発言だ。

 柳氏は「一度調べてみればどうか」という研究を勧める意図だったと釈明したのだが、この発言は当然ながら「女子学生へのセクハラ」と受け取られた。「売春を勧める発言だとの指摘は言語道断だ」と柳氏は反論したものの後の祭りだった。

 特に、慰安婦報道に熱心なハンギョレ紙などは、社説でも「事実歪曲で、糾弾されるのは当然」「基本的礼儀さえ知らない。教授を即刻、辞任すべきだ」(9月23日付)と柳氏批判に熱を上げている。

 延世大学側は、学生や世論の批判や要求を受けて、「遺憾の意」を表明。柳氏の授業を中止とし、この発言の詳細についての調査を進めている。また、市民団体の告発を受け、ソウル西部地検は、警察を通じての捜査に入っている。

これまでも左派の“標的”

 渦中の人物となった柳氏とは、どんな人物なのだろうか。

 柳氏は、1955年生まれで、韓国中部の慶尚北道安東出身。米イリノイ大学大学院で博士号を取得。延世大学大学院で地域学の主任教授を務めるほか、同大学サイバー教育支援センター所長、社会学科長、朴正熙記念財団理事、李承晩研究院院長、アジア研究基金の事務総長などを歴任している。

 2017年には、韓国の最大野党で保守系の自由韓国党において「革新委員長」に就任しているが、政治家ではない。純然たる社会学者だ。朴槿恵前大統領の弾劾を「(左派による)政治的な報復だ」と批判しており、思想・信条的には保守派に属する。

 そもそも柳氏の保守性は左派から毛嫌いされている。その上で、韓国で議論することすら許されない“聖域”と化している慰安婦問題に真っ向から持論を展開したことで、左派としては格好の標的となった。

 柳氏はかつて、京郷新聞主催の座談会で「左派、進歩陣営はわれわれに『極右、守旧』と言うが、極右とはテロを犯した安重根(伊藤博文の暗殺犯)のような者のことであり、私は鉛筆1本も投げられない」と発言し批判された。また、歴史教科書の国定化に賛同する「正しい歴史教科書を支持する教授の集い」のメンバーとして活動したことも「代表的な右派人物」と評される理由だ。

 さらには、2004~10年に事務総長を務めたアジア研究基金が「(韓国で右翼の大物とされる)笹川良一が設立した日本財団の資金で作られた財団である」(ハンギョレ紙)とされ、柳氏は「歴史歪曲」「破廉恥な妄言」をする人物と決めつけられている。2年前に「革新委員長」として柳氏を招いた自由韓国党でさえ、今回の発言は「不適切だ」として遺憾の意を表明している。

1億ウォンの損害賠償請求

 柳氏は「売春が貧しさゆえの、やむを得ぬ事情による選択だったと説明したが、一部の学生が受け入れず同じ質問を繰り返した」と真意を説明し、「売春を(女子学生に)勧める発言でもない。非がないのに謝罪はできない」と主張し、信念を曲げていない。講義での発言が録音されていたことなど、不可解な点もいくつかうかがえるのだが、状況は日々、柳氏に不利な方向に向かっている。

 柳氏は講義で、元慰安婦を支援する正義連を「北朝鮮と関連した団体」「元慰安婦を教育して、新たな記憶を作った。元慰安婦を利用した」「問題に介入して国家的被害者という考えを持たせた」などと批判した。

 正義連に対する柳氏の認識はあながち外れているとは言えないと筆者は考えている。正義連は毎週水曜日にソウルの日本大使館前で、時には高齢の元慰安婦を動員し、慰安婦問題をめぐる日本への抗議集会を続けている。

「法的措置」を公言していた正義連は、ついに10月1日、柳氏を名誉毀損でソウル西部地検に告訴。1億ウォン(約900万円)の損害賠償請求訴訟も合わせて起こした。正義連はさらに、「その家族の意向に沿い、今後さらなる法的措置対応もとる」「名誉毀損行為が処罰されるように法的制度を設ける必要がある」と訴えている。大使館前の集会でも、柳氏の発言報道があった直後の9月25日、翌週の10月2日に、柳氏を痛烈に非難した。

「慰安婦は生き神様なのか」

 韓国では慰安婦の存在は絶対的で、神聖視されもしている。慰安婦やいわゆる徴用工などの強制性を否定し、韓国でこの夏、ベストセラーとなった『反日種族主義』の共同著者である李宇衍・落星台経済研究所研究委員は、フェイスブックへの投稿文で、柳氏の発言は「現在の状況を念頭に置き展開されたあり得る推論だ」と指摘。「慰安婦は生き神様なのか」と疑問を呈した。

 すでに左派から批判の標的にされ、物理的な攻撃も受けていた李氏。今回、柳氏を擁護したことで、「暴言を吐いた」と再度批判に晒されている。李氏は以前から、慰安婦問題をめぐって正義連に公開討論を求めているが、正義連はその要求を無視している。

 柳氏や李氏のような発言をすれば、韓国では必ず正義連などの市民団体を中心とした“社会的制裁”を受ける。慰安婦問題についての学術書『帝国の慰安婦』の著者である朴裕河・世宗大学教授が代表例だ。朴氏は元慰安婦の名誉を毀損したとして、民事裁判で敗訴が確定し、刑事裁判は1審無罪、2審は逆転有罪となっている。

 韓国では、慰安婦問題をめぐり元慰安婦はともかく、支援団体の意に沿わない主張をした学者ら専門家は、間違いなく吊し上げられる。学生らから非難を受けた末に、大学を追われた学者もいる。被告人とされた朴氏の裁判は本人が法廷で訴えていたように「魔女狩り」も同然だった。

 状況は違っても、主義、主張がどうであれ、韓国では慰安婦問題への「異論」は許されず、即刻、敵視され、非難の的となる。

 社会的に抹殺されることを覚悟の上で、柳氏は研究者として、それでも主張を翻さない構えのようだ。

(名村隆寛(産経新聞ソウル支局長)/週刊文春デジタル)

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