遺言書を“無視する”方がうまくいく!? 国税OBが教える「理想の相続」の意外な近道

文春オンライン / 2019年10月25日 6時0分

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 東京国税局出身の阿保秋声税理士は、相続税の申告書作成をこの数年間で50件以上行った。同業の税理士から回ってきた難しい案件も多かったという。

「相続人の1人か2人が欲を出して揉めたのが2割ほど。揉めて、相続人同士が同じ書面に印を押したくないと言い出し、同じ内容で別々の申告になってしまったものもある。一方で相続人同士がお互いのことを考えて譲り合い、気持ちのいい相続もありました」(阿保税理士)

 阿保税理士は様々な相続の形を見て来たが、相続人同士がお互いのことを考えて譲り合えるのは、理想の相続の1つだという。

「法定相続」は一見公平に見えるが……

 民法では、例えば相続人が配偶者と子供2人の時は「配偶者が2分の1、子供はそれぞれ4分の1」というように、配偶者・子供・兄弟姉妹という相続人の有無に応じ、相続時の遺産の分配割合が細かく定められている。

 この「法定相続」は一見公平に見えるが、相続人の考えがまとまり、譲り合うことができれば、法定相続通りにはならない。逆に譲り合えず、揉めた時には法定相続で解決するしかなくなる。

 相続には、人の気持ちも大きく影響する。

「理想の相続は、亡くなっていく親と、残される配偶者や子供達の気持ちが合うこと。しかしどうしても合わなかったり、気持ちが通じなかったり、想定外のことが起きるものです」(大阪国税局出身の内堀郁江税理士)

生前に「財産分配表」を作成しよう

「国税OBが教える『相続』」シリーズ第3弾( 「文藝春秋」11月号 に掲載)では、ガンを発症し死を目前にした夫が妻の先行きを考えて準備したプランに、妻が応えることができなかった例や、ある経営者が将来のことを考えて早々に子供の1人を後継者に決めて準備を進めたが、思わぬ悲劇に遭った例などを紹介している。

 現在の70、80代は、堅実に貯金してきた人たちが少なくない。そうやって築いた財産を巡り、子供たちが争うのは親にとってはやり切れないだろう。

 大阪国税局出身の秋山清成税理士は、両親の生前に、子供それぞれにどのくらい財産を渡したかを記録する「財産分配表」の作成を勧める。

「財産分配表を作成するのは、相続時に、親からの過去の資金援助の多寡が原因になり、兄弟姉妹が不仲になることが多いからです。事前に話し合ってデータの形にしておけば、将来揉める可能性は大きく下がります」(秋山税理士)

 事前に話し合いができるからこそ、財産分配表の作成ができる。話し合いができるのは、理想の相続に向けた第一歩となる。

「遺言書を無視する」ことで理想の相続に近づく!?

 遺言書を遺せば理想の相続になるだろうか?

 相続は、遺言書があれば、相続人に不満があっても遺言書通りに遺産を分配することになる。

 しかし実は、相続人全員が合意すれば、遺言書を無視し、相続人同士で話し合って決める遺産分割協議に変更できる。そして、遺言書を無視したほうが理想の相続に至ることもある。

 シリーズ第3弾では、国税OBたちが遭遇した実例から「理想の相続」の形を探った。

(坂田 拓也/文藝春秋 2019年11月号)

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