USGの歌声に思う、jpopにあって歌謡曲にないもの――近田春夫の考えるヒット

文春オンライン / 2019年11月9日 17時0分

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絵=安斎 肇

『Phantom Joke』(UNISON SQUARE GARDEN)/『Happy Go Ducky!』(the pillows)

 jpopと歌謡曲に絶対的違いはあるのか。また、我々にとってロックとは…… and so forth。いつも思う。たとい毎週この原稿を書くことをしていなかろうと、俺はきっと死ぬまでそんなこんな“あれこれ”をずーっと考え続けていく体質なのだろうなァと。

 ところで。ロックのことはとりあえずさておき、歌謡曲vs.jpopだ。そこには、音よりコトバの問題が大きくたずさわっているような気がする。すなわち“歌詞”である。そして、歌詞のあらわすものはと申せば、畢竟(ひっきょう)「世界観」ということにもなろう。

 無論重複するところはあるよ、だけど俯瞰すればやはり、歌謡曲およびjpopから喚起される情景は、それぞれ別の秩序なりによって成立しているようにも思えてならない。

 例えば、そこに暮らす人々の層/人種だ。どちらが多彩、複雑だと思われるか?『北酒場』や『ズンドコ節』が流れて来るような街角は、まずjpopには無理な話だ。そう考えると、歌謡曲であらわせるものの方がjpopよりキャパシティがあり、フレキシビリティに富んでいるとはいえないか? その点に異論はないと思うが、諸賢はどうか。

 jpopには、どこか学生気分の抜けないところがあるというか、人々がこれから“メンタリティの部分”で大人になってゆく過程がテーマの場合が少なくない。いっとき流行った“モラトリアム”てぇヤツだと思うが、そのせいなのか、いくつになろうとも「十代のような心」を歌い上げるのにふさわしい喉を持つボーカリストが、jpop界では幅を利かせている、もとい! 人気を博している。

 今週のUNISON SQUARE GARDENなどにしても、このボーカルの人って一体何歳なのかしらんね? まるでアニメの主人公のような――永遠に少年のような――容姿を想像せずにはおれぬほどの、物凄い若々しい発声で新曲を歌い切ってみせている。

 それは、高音とはいえ、米良美一などのカウンターテナーとも違う、小田和正やクリスタルキングでもない、フランキー・ヴァリとも当然別物の、あえていうのならば、若き日のあいざき進也の歌唱をタフにしたような印象なのだが、人工合成でもしたかとも思われるほどの安定性は、今の時代ならではのものである。

 楽曲の内容をみても、そこには〈たとえ幻が僕らを阻もうとも、この世界を愛して参りましょう〉というメッセージ(作詞作曲の田淵智也)が込められているようである。

 こうしたタイプの楽曲と歌唱表現が、歌謡曲/演歌にはちょっと不向きなのは、耳にすれば誰もが納得するはずである。

 歌詞だけではない。jpopと歌謡曲の間には色々相いれぬものが横たわっているのだ。

 the pillows。

 89年結成というから、ざっと数えても、もはやベテランの域だろうに、jpopと呼ぶに相応しい、歌詞の“青さ”にプロの矜持を見る思いがした次第だ。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2019年10月31日号)

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