下着泥棒は日本で最もポピュラーな変態!? 韓国でベストセラーの“反日”本『六本木キム教授』とは

文春オンライン / 2019年11月5日 20時27分

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『六本木キム教授』の表紙

 日本では、爽やかな笑顔で挨拶する隣のイケメンがパンティー泥棒であることもある――。

 そんな変わった角度から日本を紹介する書籍が、いま韓国で売れている。この9月に刊行された『六本木キム教授』と題された一冊だ。ソウル在住のジャーナリストが解説する。

「韓国人YouTuberが書いた本で、発売後に即重版が決まりました。いわば“嫌日”本です。韓国には特定のジャンルの日本批判本は少なくありませんが、日本社会を網羅的に批判する本は珍しい。ソウル市内の書店のランキングでは一時、『政治・社会部門』で2位に入りました」

 実際にソウル市内の中心部にある大型書店を訪れてみると、入口正面という一等地で大展開されていた。不買運動のポスターをイメージさせる表紙は、日本関連書籍の中でもひときわ目立つ。いったいどんな内容の本なのか。

キム教授とは何者なのか?

 本書によれば、著者である「キム教授」は企業経営に携わるビジネスマンで、西武文理大学サービス経営学部(埼玉県狭山市)で教鞭を執った経験のある韓国人。日本での生活体験を元に、その日本文化や生活風習などを紹介するYouTubeチャンネル「六本木キム教授」を運営し、チャンネル登録者は10万人を超える。

 本書は約220ページの単行本で、韓国・グリーンハウス社が刊行。「PART1 世界最悪の国、日本の素顔」「PART2 NO NO JAPAN 安倍政権没落の引き金」の2部構成で、計16章からなる。「住むのに本当に不便な国、日本」「ギャンブル天国 日本」「独島が騒がしくなれば安倍が笑う」などタイトルを見ただけで内容が思い浮かぶ章から、森友問題を取り上げた「日本で北朝鮮をみた『極右幼稚園』」など時事問題を扱った章もある。

 執筆動機については、〈(日韓関係をめぐる)最近の事態を通じて、韓国国民に日本の実態を知らせるべきだという使命感を持つようになった〉と本書中で説明している。

「彼の日本での生活実感は伝わってくるが、全体的にそれを誇張して書いている印象がある」(前出・現地ジャーナリスト)という指摘の通り、とにかく極端な記述が多い。

 冒頭で紹介した“変態”文化への考察もその一例だ。〈日本は名実共に変態が最も多い国として認められている。私も生活して実感としてそう思う〉として、次のように続ける。

〈(日本において)最もポピュラーな変態が「パンティー泥棒」だ。(略)女性であれば、一度はパンティーを盗まれた経験があるほど、よくいる変態だ。このようなパンティー泥棒たちのせいで、日本の女性は下着を気軽に干すことができず、他の洗濯物との間に隠すように干さなければならない。(略)恐ろしい事実は、パンティー泥棒は何の特徴もないということだ。爽やかな笑顔で挨拶する隣のイケメンがパンティー泥棒であることもある〉

 本文中にパンティー泥棒を紹介する写真まで掲載する念の入れようだ。別の記述では、日本社会を紹介するため、さまざまな日本の「世界一」を紹介していく。

 青年自殺の割合世界1位、ペットの殺処分世界1位、家事分担をしない夫の割合世界1位、農薬使用量世界1位、さらには、水道水の塩素の使用量世界1位まで、細かいデータまで注目しながら、「日本の暗部」に切り込もうとする。

 日本の精神科病院の数が世界一という記述では、〈全世界の精神病院に入院する患者の5人に1人が日本人という計算〉とした上で、〈日本でいわゆる「変態性のある内向的な犯罪」が多く発生する理由は、このような文脈で推測することができる〉と、日本の“変態”犯罪と精神科病院をいとも簡単に結びつけてしまうのだ。

弁当文化には、ある思想が隠されていた?

 一方、日本女性の人権問題についても熱く語られている。世界有数のGDPを誇る日本は一見、人権侵害とは無縁のように見えるが、キム氏の経験では女性に対する人権意識は「世界最悪」だと一刀両断。海外でも有名な日本のアダルトビデオ業界をとってみても、〈日本の女性の人権が地に落ちているという事実が分かる〉と指摘する。

 そして、旧優生保護法をめぐる日本での判決などを紹介しつつ、歴史認識問題にまで話が展開していく。

〈何より私が心配しているのは、韓国との問題、強制徴用と慰安婦などに関する謝罪と賠償である。自国民の明らかな被害に対しても賠償責任がないという厚かましい判決を下した日本が、果たして韓国に謝罪するだろうか。極めて残念だが、私は懐疑的に見ている〉

 さらに、「日本は全体主義の思想に取り憑かれている」というのが、キム氏の主張。その象徴とされるのが、なんと「弁当」。日本の駅弁などを例にあげながら、小さな箱に色とりどりの食材が詰め込まれている姿が「日本の全体主義の思想がそのまま溶け込んでいる」ように感じられるのだという。

〈個人の自由を最重要と考える民主主義とは異なり、日本式の民主主義は個人を集団という枠組みの中に詰めることで、(人間を)究極的には国家のための消耗品として使用しているのだ〉

「日本が謝罪するまで不買運動を」

 そんな彼が読者に呼び掛けるのが、「必ず続けなければならない」と主張する日本製品の不買運動だ。

〈韓国の日本への不買運動は波及力が大きい。不買運動が日本に致命的な打撃を与える“観光産業ボイコット”に繋がるためだ〉

〈もし、不買運動が続いて(韓国からの)観光客数が著しく少なくなれば、(日本の)各地域経済は取り返しのつかない破局を迎える可能性も十分ある。それは単なる経済悪化にとどまらないだろう〉

 恐ろしい物言いだが、さらには日本で韓国メーカーの製品が売れないことまで不買運動の理由にしてしまう。

〈全世界で唯一、反韓デモを行う国が日本だ。世界で唯一、現代(ヒュンダイ)車が売れない国が日本だ。世界で唯一、サムスンのロゴをつけると売れない国が日本だ。このような状況で、我々が不買運動をしてはならないという声が出ている事実が嘆かわしい。はっきり言うが、今こそ日本が謝罪するまで不買運動をしなければならない時だ。絶対に途中で止まってはならない。安倍政権を引きずり下ろすまで、我々は徹底的に不買運動、日本旅行のボイコットを維持しなければならない〉

 日本のあらゆる“問題点”を、強引に「安倍首相が悪い」と結論付ける傾向のあるキム教授。ただYouTubeでは、十八番の安倍批判をしていたはずが、気付けば矛先が母国へと向かっていた。

「現在、日本の社会は狂わされつつあります。ドイツの政治家らがヒトラーの墓の前で参拝をしますか? 想像もできません。日本の政治家は毎年定期的に靖国神社を参拝しています。今、日本は非常識で理性を失ってしまいました。

 ところが、韓国の状況はもっと深刻です。私が安倍政権と日本を批判すると、(韓国では)文在寅を称賛する共産主義者だと見なされます。親北朝鮮主義者だというのです。常識的にとんでもない話で理解できません」(YouTube「六本木キム教授」2019年7月17日)

 キム教授の悩みは尽きそうにない。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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