「既得権益化」で儲かる火葬場が、「中国系資本」に狙われている

文春オンライン / 2020年3月13日 11時0分

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 作家の三島由紀夫、歌手の美空ひばり、プロレスラーのジャイアント馬場などそうそうたる著名人が火葬に付された桐ヶ谷斎場(品川区)をはじめ、都内6カ所の火葬場を運営している東京博善という企業をご存知だろうか。

 火葬場は全国で約1500カ所あるが、95%は各地の地方公共団体等が運営する非営利事業となっている。その中で、民間企業として火葬場を運営する東京博善は異質な存在だ。

周辺住民の理解が得られず、都内で火葬場の新設は不可能

 東京博善は1887(明治20)年創業と歴史があり、複数の寺院、僧侶などが株を保有していた時期もある。その後、田中角栄元首相と親交があり、“政商”とも“大物フィクサー”とも呼ばれた櫻井義晃氏(故人)が80年代に株を取得し、櫻井氏が創業した印刷業「廣済堂」(東証1部上場)が子会社化した。

 櫻井氏は04年に死亡。廣済堂は本業の印刷業が経営不振に陥りながら、子会社の東京博善が利益を出して黒字化するという状況が続いてきた。

 東京博善は、ここ数年でも売り上げ80億円前後に対して20億円前後の利益を出してきた超優良企業である。しかも火葬場の新設は周辺住民の理解が得られず、「都内で火葬場を新たに建てるのは不可能」とまで言われ、東京博善の価値は将来にわたり有望と見られてきた。

 東京博善を子会社に持つ廣済堂を巡り、買収合戦の幕が開いたのは昨年1月のことだった。

構図は「創業家 vs 経営陣 vs 村上ファンド」へ

 最初に、外部から招聘された新しい廣済堂の経営陣がMBO(経営陣による株買い取りと上場廃止)を発表し、TOB(株式公開買い付け)を開始した。

「経営陣は、廣済堂を上場廃止して長期的視野に立って事業立て直しを図ると声明を出しましたが、実態は、株の買い取り資金を出す外資系ファンドが東京博善を目当てに乗っ取りを仕掛けたと騒がれ、創業家や古参幹部などは経営陣のMBOに反対しました」(経済誌記者)

 経営陣が「1株610円で買う」と発表したことにより、400円前後で低迷していた廣済堂の株価は上昇に転じ、買い付け価格を超えて700円台まで上がった。

 買い付け価格を超えるのは、誰かが市場で買い進めているということ。

 それが、村上ファンドを率いた村上世彰氏と関係の深い2社(以下「村上ファンド」)だったことがほどなく判明する。

 村上ファンドは市場で株を買い進めた上で、3月になり、「1株610円の買い付け価格は低過ぎる」として1株750円でTOBを発表し、経営陣に対抗。両者による買収合戦が繰り広げられ、株価はさらに上昇し、両者ともTOBを成立させることができず買収は失敗に終わった。

 その後株価は下降したが、年末にかけて株価が再び上昇。一時は1000円を超えた。

 次は誰が買い進めているのかと思われていた矢先に、それが麻生グループだったことが判明したのだ。

その後も麻生グループは株を買い進め……

 麻生グループは、麻生太郎・財務相の出身母体として知られる。明治時代に福岡県で創業した「麻生炭鉱」を源流として、その後セメント事業、病院コンサルタント、人材派遣、建築土木業、スポーツ施設運営等に業容を広げ、グループ総売り上げ3800億円、グループ会社数102社(19年3月末)を擁する福岡を代表する企業グループになった。

 創業者の麻生太吉は麻生財務相の曽祖父であり、麻生財務相も政界へ進出するまで前身の麻生セメントの社長を務めていた。現在の麻生泰会長は麻生財務相の実弟であり、麻生巌社長は麻生財務相の甥に当たる。

 年が明けた今年2月、村上ファンドが大量に保有したままだった持ち株を麻生グループに売却していたことが判明した。

 これにより、村上ファンドは大きな利益を得たと見られる。

「大雑把に計算すれば、村上ファンドが昨年3月時点で保有していた約13%の株の取得価格は、平均1株640円。その大半を1株950円で麻生グループに売却したのです。村上ファンドは7~8億円の利益を得たでしょう」(経済誌記者)

 村上ファンドに比べて割高で株を取得した麻生グループだが、その後も株を買い進めて保有割合を19%まで高め、投資額は43億円に上っている(2月21日時点)。

ラオックス買収の中国系ファンドも参戦

「廣済堂全体の業績は低迷し、過去5年で2回しか配当を出しておらず、株を19%持ったままで利益が出ません。完全買収を目指し、その後は他の事業を売却し、東京博善だけ残すのが妥当でしょう」(同)

 ただし新たな買収合戦には、家電量販店ラオックスの買収で名を上げた中国出身・羅怡文氏に連なるグループも参戦し、20億円以上を投じて株を取得している。麻生グループが完全買収を目指せば紆余曲折があることも予想され、中国系資本との関係も気になるところだ。

(清水 俊一)

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