「打ち上げで和牛・水田さんのホッとした顔が忘れられない」インディアンスが明かすM-1の裏側

文春オンライン / 2020年3月15日 17時0分

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インディアンスの田渕章裕さん(左、ボケ担当)ときむさん(右、ツッコミ担当)

M-1“隠れ優勝候補”インディアンスの痛恨 じつはネタ飛んだ「とてつもなく長い5秒」 から続く

 史上最高と言われる2019年のM-1。何が神回を作ったのか。出演した漫才師たちへの連続インタビューで解き明かしていく。

 全国的に無名だったミルクボーイが史上最高得点で初優勝。鮮烈なインパクトを残した一方、過去3度の準優勝という記録を持つ和牛が4位に終わり、大会後に「M-1卒業」を発表した。打ち上げで和牛と一緒になったというインディアンスが明かすM-1の舞台裏。(全3回の3回目/ #1 、 #2 へ)

◆◆◆

M-1の魔力「決勝が漫才師にとってのすべて」

――準決勝がいちばん緊張するという方もいらっしゃいますが、お2人は、決勝の方が緊張されましたか。

田渕 準決勝も、やばいっすね。ほんま。だって、あそこで決まるんですもんね。決勝でられるか、でれへんか。テンション上がってるのと緊張で、いつも息が持たないんですよ。去年も、ステージをはけた後、倒れ込みそうになりました。ネタ中、普段通り呼吸できてないんですよ。

きむ ただ、準決は順番は決まってるんで。そのやりやすさは、決勝終わってから気づきましたね。

――緊張の種類が違うわけですね。

田渕 予選と決勝は、完全に別物ですね。

きむ あと、終わって思ったんは、M‐1にあこがれ過ぎてたのかもしれんな、って。

田渕 決勝に出て、爪痕を残す。それが漫才師にとってのすべてだと思わせる力があるんですよ、M‐1って。でも、その夢に飲まれるとよくない。どうでもええんやぐらいの気持ちでいいんかも。そこはマジで勉強になりました。

2本目のミルクさんを「待ってました感」

――出番を終えたあと、最終決戦の3本も観られるような気分ではなかったですか。

田渕 いや、楽屋のモニターで見てましたね。

――3組ともあれだけウケるということも、なかなかないですよね。

田渕 確かにどうなるんやろと思いましたけど、1本目のミルクさんのはまり方と、2本目のミルクさんを「待ってました感」で、ああ、優勝はミルクさんやなというのは、みんな頭に浮かんだと思いますね。完璧やんって。

――M‐1は栄光と挫折の対比が、ものすごいですよね。

田渕 勝ったら一撃でしんどかったときのこと、全部どうでもよくなると思うんですよね。それって、めっちゃ気持ちええんやろなと思って。M‐1しかないですもんね。そんな舞台は。

「打ち上げで水田さんがめっちゃホッとしてはった」

――きむさんは、後番組なども含め、テレビの収録等が全部終わったあと、からし蓮根の伊織さんと飲みに行かれたんですよね?

きむ あと、すゑひろがりずの南條(庄助)さんもいました。

――田渕さんは?

田渕 僕は和牛の水田(信二)さんと、見取り図の盛山(晋太郎)さんと、からし蓮根の青空と飲みにいきました。

――どんな話をされたんですか?

田渕 いちばん印象的やったんは、水田さんが、めっちゃホッとしてはったことですかね。その席で、じつはM‐1は今年でラストにしようと思ってたという話をされていて。戦士の休息じゃないですけど、もう、なんか優しい顔になられてて。水田さんの優しい顔を久しぶりに見ましたね。「おまえら来年からまた頑張れよ」みたいなことを言ってくれたんは、めちゃくちゃうれしかったですね。この人に言ってもらえたら、なんか頑張れるなあというか。

「一度解散して、ミキの昴生さんとコンビを組んでいた」

――結成は2009年なので、あと5回チャンスがあるわけですね。

田渕 僕らはそうですね。

――お2人は2010年に一度、3、4カ月の間、解散していた時期があります。

田渕 きむはめちゃくちゃ変わったやつなんです。ケンカっぱやいところもあるし。なので、ずっと一緒におるのはしんどいなと思い始めたときに、当時、別の人とコンビを組んでいたミキの昴生さんに「俺とやらへん」って誘ってもらって。昴生さんのこと、ずっとおもしろいと思ってたんで、その日のうちにきむに昴生さんと組みたいから解散してくれって言ったんです。もう解散しようと思ってたから、まったく迷いはなかったですね。

――きむさんは抵抗しなかったんですか?

きむ 予感はあったんで。ただ、翌朝かな、昴生さんに電話して、「なんばhatch」って、いつも僕らがネタ合わせに使ってるライブハウスに来てもらって、話はしました。僕のイメージでは、昴生さんがたぶっちゃんをたぶらかして……みたいに思ってたんで。悪女にだまされた、と。なんで、「何やってくれてんですか!」みたいなことは言いました。

田渕 昴生さんが後で言ってましたけど、きむの拳がずっとプルプル震えてたらしいです。

解散して、なぜまた再結成した?

――そこまでになったコンビが、なぜ、また再結成にいたったのですか。

田渕 翌日から、毎日のようにきむがメールを送ってくるんですよ。こんなネタ書いてみた、とか。びっくりしましたよ。こんなすぐ、しかも、こんな頻度で送ってくるか?って。こっちは組み直そうなんて、微塵も思ってないのに。無視してたら、そのうちこなくなるだろうなと思ってたんですけど、結局、ずっとメールはきてましたね。

――でも、田渕さんと昴生さんが組んだら、超強力ですよね。

田渕 ウケは悪くなかったんですけど、二人とも前に出たがる性格なんで、キャラがぶつかっちゃうんですよ。お互い若いから、引く技術もないし。そんなんで、このまま続けていってもいいのかなと思い始めて。その間もずっときむからはメールがきてて。そんで、こんだけメールくれるやつもおらんかと思って、昴生さんに、やっぱりきむとまたやり直しますって言ったんです。昴生さんは、すっごい男気のある方なんで、わかったって、納得してくれました。

それからも何回も解散を考えたけど……

――その経験があるから、いま、ここにいるわけですね。

田渕 正直言うと、戻ってからも、何回も解散を考えたことあるんですよ。一度解散したとき、きむもましになってるやろなという幻想を抱いてしまって。でも数カ月で人間なんて変わらないですからね。やっぱりしんどくなって、明日のネタ合わせのとき、解散を切り出そうかなとか。まあ、それを乗り越えて今にいたってるわけですけどね。

――M-1決勝の翌日は、どうされていたんですか。

田渕 渋谷の「ヨシモト∞ホール」というところでネタ合わせをしてました。僕ら、毎日、ネタ合わせしてるんですよ。きむが毎日、連絡くれるんで。だから決勝翌日も、何時に劇場集まろうぜ、って。OK、OKと。新しいアイディアなんて、なんも出てないんですけど。でも、集まってなんかしゃべるだけでも、まあ、ええかなって。そうやって、どんなときでもネタ合わせをできるのはきむのお陰ですね。

【1回目】インディアンスが語るミルクボーイのM-1最高点「トイレまで“ウケ”の声が聞こえた」  へ

写真=山元茂樹/文藝春秋

インディアンス/田渕章裕(ボケ担当)ときむ(ツッコミ担当)のコンビ。田渕は1985年6月2日兵庫県出身。きむは1987年12月24日大阪府出身。大阪NSC31期の同期生。

2009年に結成。2010年、一度解散したことがあり、田渕は現ミキの昂生と「やぶれかぶれ」というコンビを組んでいた。15年、18年NHK上方漫才コンテスト準優勝。16年から拠点を東京に移す。

16年、18年にM-1準決勝進出。19年初のM-1決勝で9位に。

(中村 計)

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