「急に怖くなった」「私は気にしない」歌舞伎町のキャバ嬢たちはいま

文春オンライン / 2020年4月2日 17時0分

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自粛要請の影響が直撃した日本一の歓楽街、新宿歌舞伎町 ©渋井哲也

 新型コロナウィルスの感染拡大にともなって、世界一の歓楽街とされる新宿・歌舞伎町には、ほとんど人が歩いていない。居酒屋やキャバクラ、バーなどでは客足が遠のいていることがはっきりしていた。

 4月1日の夜、筆者が雨の降りしきる歌舞伎町を歩いていると、居酒屋などの店舗内は閑散とし、キャバクラやガールズバーは店舗を休業にしているところも少なくない。外から客席が見える店舗では、座っている客は数えるほどしかない。一人も確認できない店も複数あった。

 夜の街から客足が遠のいた大きな理由は、3月30日に行われた小池百合子都知事の記者会見だ。そこでは、「キャバレー」「ナイトクラブ」「バー、酒場等」などの“特定業種”に関連した感染者が38人いたことが明らかにされた。年代別では20代が6人、30代が9人、40代が13人、50代が7人、70代が3人となっている。

「感染経路が不明な症例のうち夜間から早朝にかけて営業しているバー、そしてナイトクラブ、酒場など接客をともなう飲食業の場で感染したと疑われる事例が多発していることが明らかになりました。感染のリスクが高い『3つの密』、換気の悪い密閉空間、多くの人が密集する場所、近距離での密接した会話。この『3つの密』がより濃厚なかたちで重なる場となっております」

小池都知事の会見をきっかけに「急に怖くなった」

 歌舞伎町の飲食店を訪れた客たちは、居酒屋のほか、キャバクラ、バー、ナイトクラブ、スナック、風俗店などに流れたりする。会見での小池都知事の呼びかけが、そうした層に響いたのだろうか。いつもなら、競うように声をかけるキャバクラの客引きたちも、いつになく大人しい。

「先週から極端にお客さんが減りました。それでも、声をかければ、来てくれる人はいたんですが、今週になってから、街を歩いている人も減り、声をかけても、帰る人ばかりです」

 キャバクラ店で働いている女性キャストのEさん(20代)。先週までは出勤しており、「お客さんが減った」と話しながら勤務していた。しかし、3月30日夜、小池都知事の会見をきっかけに、「急に怖くなったので、自分から休むようにした」という。大学生でもあることから、生活費の不足分は親からの仕送りを増額交渉をしてまかなうつもりだ。

「生活もあるので、ギリギリまで働きます。」

 また密着した接客をウリにしているセクシー系キャバクラのキャスト・Sさん(30代)は、「生活もあるので、お店を閉じるときまで、ギリギリまで働きます。お客さんも少ないですし、いつもならお客さん同士の距離も近いですが、一人分をあけています」と説明する。ただ、一般のキャバクラよりも“濃厚接触”が激しい。そのためか、同日になって、店自体が当面、臨時休業となった。

 一方、別のキャバクラのキャストであるAさん(20代)は、自粛要請も気にせず、この日も勤務していた。

「特に店側の指示はありません。自粛ムードでもないですね。お客さんは少ないですが、来店する人はいないわけではないので。これからどうなるかはわからないけど」

 新宿区によると、歌舞伎町のキャバクラ店や風俗店で働く女性のうち十数人が感染していることが公表されたが、「特に気にしてないですね」。

シフトを減らしたり、雇用を止める店も

 歌舞伎町に隣接する新宿ゴールデン街はどうか。小さなカウンターバーが約280店舗をかまえている雑然としたエリアだ。店内は、「密閉、密集、密接」のいわゆる「3密」そのものの場所が多い。当面の間、店を閉めることを案内する張り紙をしているところも複数見かけた。数週間前に、ある店舗に出かけたときは、マスクをする客もほとんどおらず、他人事として新型コロナウィルスの話題をしている様子だった。

 新宿ゴールデン街の一部の店舗でつくる「新宿三光商店街振興組合」によると、数ヶ月前から全体として客数が減っている。状況が改善されないと、経営が厳しく、継続が厳しくなる店舗もあると見ている。

「すでに従業員を辞めさせている店も出てきています」(同組合)

 ゴールデン街の店舗では、時給や歩合制などアルバイトの雇用形態はさまざまだ。経営に影響するのは時給で雇っている店舗だ。客数が減れば、必然的に売り上げに響く。売り上げがなくても人件費は発生する。そのため、シフトを減らしたり、雇用を止める店もある。

コロナ騒動が収まっても、すぐには安定しない可能性

「初心に戻って、一人でカウンターに立つという店主もいるようです。店や店主に付く客ばかりではなく、アルバイトの従業員に付くお客さんもいます。そういうお店の場合は、アルバイトがいないと客数は減ってしまいます」(同)

 ある店主(30代)は、自身のほか、数人のアルバイトでシフトを回している。しかし、先月から客数が極端に減り、厳しい経営を迫られている。「当面は自分だけで立ちます」。

 昨年のラグビーワールドカップのときは、ラグビーファンが多く押し寄せた。試合後は、大いに盛り上がり、警官隊が出動するほど、路地に人が溢れた。当時と比べると、外国人観光客もいない。客足を取り戻すにも時間がかかる。そのため、コロナ騒動が収まっても、すぐには安定しない可能性もあるだろう。

経済的な理由での「死」が現実味を帯びている

「この状況が続いて経営が厳しくなると、店主が自殺をしてしまう心配もあります。組合としては、そうならないための対策も案内しています」(同組合)

 同組合では、新宿区の中小企業向け制度融資「商工業緊急資金(特例)」を勧める。貸付金額は500万円以下、貸付期間5年以内、金利は区が全額補助、信用保証料の負担もなし、というもの。ただし、助成金ではなく、あくまでも貸付である。

「紹介している区の融資は、ハードルがもっとも低いと思います。必ず貸付されるとは限りませんが、申し込みだけでも済ませておくように話しています。それだけでも、ストレスが軽くなるはずです」(同)

 夜の街に繰り出すことを自粛するよう都知事はメッセージを発信したが、数字だけ見れば、「夜の街」が突出しているわけではない。ただ、収入を絶たれた側にとって経済的な理由での「死」が現実味を帯びている。自粛要請をするのなら、まずは「夜の街」で働く人たちへの保証を充実させることが必要ではないか。

(渋井 哲也)

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