《韓国わいせつ動画「n番の部屋」事件》24歳管理人が書き溜めていた「博士の大百科事典」の悪辣な中身

文春オンライン / 2020年4月3日 17時20分

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わいせつ動画を配信する「博士の部屋」を管理していたチョ容疑者 ©AFLO

 裸で顔に下着をかぶる若い女性、男子トイレの床に全裸で横たわる少女、うごめく幼虫を性器に挿入する女子中学生……。未成年者と若い女性を使ったサディスティックなわいせつ動画を「テレグラム」で流布した、いわゆる「n番の部屋」事件が韓国社会に衝撃を与えている。

「テレグラム」とは、高いセキュリティと秘匿性で人気を集めているメッセージアプリだ。テレグラムのサーバーは韓国では追跡不可能で、テレグラムで交わした会話の内容は一定時間が経つと自動削除される。証拠が残らない会話ができるため、これまでもたびたび犯罪に悪用されてきた。

 3月19日、韓国警察によって児童・青少年保護に関する法律違反罪などで拘束されたのはチョ・ジュビン容疑者(24)。韓国警察によると、チョ容疑者は「博士」というハンドルネームを使って、テレグラムに「博士の部屋」という有料チャットルームを開設し、青少年と女性を脅迫して作ったわいせつ動画を流通させて数十億ウォン相当の収入を上げていた。

女性の個人情報が手に入ると“豹変”

 2019年からこの事件を取材してきた「国民日報」や「ハンギョレ新聞」などの報道を総合すると、チョ容疑者の犯罪行為は次の通りだ。

 チョ容疑者は、ツイッターなどのSNSに「広報アルバイト募集…簡単なアルバイトでひと月に300-600万ウォンまで稼げる」などという広告を掲載して、未成年者を含む若い女性を募集。それに応募してきた女性に対して、チョ容疑者は広報の仕事ではなく、オンラインデートやモデル業と称したアルバイトを勧めていた。

 経済的に苦しい女性たちを狙い、「自分の写真を撮って送るだけ」などと甘い言葉で誘い、最初のうちは顔と身体の一部を撮って写真を送るなど比較的に手軽な要求からはじめていたようだ。そして、写真が届くと「お金を振り込む」と言って、名前や住民登録番号(マイナンバー)、電話番号、住所などの個人情報を聞き出していた。

 個人情報が手に入った後は、一気に要求がエスカレートしていく。

「裸でパンツを頭からかぶって逆立ちをしている映像を撮れ」
「服を脱いでベッドに横になって、発作を起こすように目を覆って体を震わせる映像を撮れ」
「器具を使ってマスターベーションをする映像を撮れ」

 彼女たちが要求を断ると、脅迫が始まる。

「家族と友達に知らせる」
「今まで送ってきたお前の写真をインターネット上にばらまく」
「人を家に送って殺してやる」

会員が共有する「博士の大百科事典」とは?

 チョ容疑者は被害女性らを「奴隷」と呼び、彼女たちを脅迫して撮らせた猟奇的なわいせつ映像を「作品」と称した。すべての被害女性に「奴隷」「博士」などの言葉を体に刻ませ、その写真を撮らせて、「博士が作った奴隷」の証しとしたという。

 このように集めたわいせつ動画は「博士の部屋」というテレグラムのチャットルームを通じて流布された。チョ容疑者は、3つのチャットルームを開設し、その入場料の額によってアップロードするわいせつ動画の内容を調節していた。

 入場料は、20万ウォン(約1万7500円)から最高150万ウォン(約13万円)。会員は1万人ほどいたという。その支払いはビットコイン、モネロなどの仮想通貨でのみ受け付け、最も高額の部屋に入場する会員には顔写真と連絡先の提出を求めるなど、視聴者側のセキュリティを徹底していた。

 最高額の入場料を払った会員は、チョ容疑者が「奴隷」たちを陵辱する場面、たとえば刺激的なポーズを命令したり、見知らぬ人を誘惑して性行為をするように強要する映像を、リアルタイムで視聴する権利を与えられた。さらに、チョ容疑者は熱心に活動する会員を「従業員」と呼んで、彼らにマネーロンダリングを手伝わせたり、被害女性を強姦する画像に参加させたりして、自らの犯罪に巻き込んでいった。

 チョ容疑者は、被害女性らの映像や個人情報を掲載した「博士の大百科事典」という資料も作っていた。

 この資料は、一部の会員たちに共有され、会員は「事典」に掲載されている被害女性に直接連絡を取って、「博士」に代わって脅迫することもできた。この「博士の大百科事典」には未成年者はもちろん、知的障害者や外国人ら数十人の個人情報も記載されていたという。

元祖「n番の部屋」管理人は行方不明

 博士の部屋に潜伏しながら事件を取材してきた「国民日報」の特別取材チームは、次のように打ち明けている。

「アップロードされた映像を見る度に、吐き気とともに自分たちも加害者になったような罪の意識に苦しんだ」

 しかし、「博士の部屋」に集まった万人単位の視聴者は誰一人ためらったり、犯罪行為として問題視したりすることはなかったようだ。それどころか、「博士の部屋」と類似したチャットルームが、テレグラムだけで少なくとも30以上運営されており、これを26万人が視聴していたとも言われている。

 いまや性的動画を流すチャットルームの総称となっている「n番の部屋」だが、元々は、10代と推定されている「ガッガッ」という人物が作ったチャットルームの名前だった。いわば「博士の部屋」の源流ともいえる存在だ。

 ガッガッは、2018年頃からテレグラムに「1番」から「8番」までのチャットルームを開設し、未成年者のわいせつ動画を配信しはじめた。ガッガッのチャットルームは俗に「n番の部屋」と呼ばれたことから、この手のチャットルームの代名詞となったのだ。

 ガッガッも、やはり「奴隷」と呼ぶ女性を脅迫して、猟奇的なわいせつ動画を撮らせたが、2019年夏ごろ、急に「ワッチマン」と称する人物に「n番の部屋」の運営を譲渡し、姿を消してしまった。その後、ワッチマンは2019年9月に逮捕され、正体が38歳の会社員と判明したが、ガッガッはいまだ行方が分からない。

文大統領自ら「全会員の調査」を指示

 チョ容疑者は現在、児童わいせつ物制作、脅迫など12の容疑で拘束されて捜査中だが、最高で無期懲役となる可能性がある。

 だが、この悪辣な手口に、韓国人の憤りは収まりそうにない。大統領府の国民請願欄には「博士の部屋」と「n番の部屋」についての5つの請願があり、計500万人が賛同。請願では、動画を視聴していた会員の身元も全て公開することを要求している。

 実際に韓国社会では、チャットルームに参加した視聴者に対する厳重な処分を求める声が日に日に高まっている。

 文在寅大統領は3月23日、「n番の部屋(博士の部屋)運営者のみならず、会員全員に対する調査が必要だ」と特別に指示を出した。さらに閔鉀龍警察庁長官も「可能なあらゆる手段を講じて生産、流布者はもちろん、加担、幇助した者も最後まで追跡、検挙することを約束する」と述べた。

 このような雰囲気の中、3月27日には、「博士の部屋」の有料会員だった40代の男性が悩んだ末、自殺する事件も起きている。

 今回の事件を受けて、韓国国内では性犯罪に対する議論が活発化している。現行法の処罰が軽いために性犯罪者が量産されたと考えられているのだ。その反省の元、性犯罪を根絶するための強力な対策が求められている。

(金 敬哲/Webオリジナル(特集班))

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