小池都知事の「AI(人工知能)」発言のブラックさとは?

文春オンライン / 2017年8月19日 7時0分

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(左)©杉山秀樹/文藝春秋

小池百合子 東京都知事
「それはAI(人工知能)だからです。人工知能とはつまり、政策決定者である私が決めたということです。回想録に残すことはできると思うが、最後の決定は文書として残していません」

テレ朝news 8月10日

 名言、珍言、問題発言で2週間を振り返る。小池百合子東京都知事が定例記者会見でおかしなことを口走った。

 長らく紛糾した東京都の市場移転問題を巡り、「豊洲移転・築地再開発」の最終判断に関する記録が都に残っていないことが毎日新聞の情報公開請求で判明。移転方針が事実上、外部有識者との協議を経て決まったことも報じられていた(毎日新聞 8月5日)。数千億円規模の巨大プロジェクトの最終判断が「密室」で下され、その資料も存在していないということになる。小池都知事は就任以来、折に触れて「情報公開は東京大改革の一丁目一番地」と語ってきたが、自らの方針に逆行しているのは明らかだ。

 8月10日の記者会見で毎日新聞の記者に「情報公開という知事の方針に逆行するのでは」と問われた小池都知事から「それはAIだからです」という珍回答が飛び出した。「回想録に残すことはできると思う」とも語っているが、そんな主観だらけのものを後々発表されても意味がない。石原慎太郎元東京都知事に「都民が知りたいのはファクトだ」と迫った同じ人とはとても思えない(ハフィントンポスト 2月17日)。

 小池都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」所属の都議会議員、おときた駿氏は自らのブログで、小池都知事が毎日新聞社主催のAIなどをテーマにしたフォーラムに出席したことに触れ、「リップサービスの意味を込めて笑顔で『AI』という切り返しに至ったのではないか」と擁護している(8月11日)。冗談だったというのか。

「密室」で下された意思決定のプロセスにも批判が集まっている。前大阪市長の橋下徹氏はツイッターで「この意思決定は大問題」と批判した(8月10日)。それに対して、おときた氏は、「自ら『決定責任はすべて取る!』と明確にした意思表示であり、これまでの都政の意思決定のアンチテーゼ」とあらためて小池都知事を擁護。さらに「民意を受けた政治家が政策決定するにあたり、個人的な相談や思考内容をどこまで残して公開するべきかというのは、非常に難しい問題でもあります」と議事録を残さなかった判断を肯定してみせた。一連の流れについて、民進党の板橋区議会議員、中妻じょうた氏は「『都政の完全ブラックボックス化』完成」と表現している。

 17日、小池都知事が任命した2人の特別秘書の給与について、都が情報を開示しないのは不当だとして、フリージャーナリストの三宅勝久氏が情報公開を求める訴えを東京地方裁判所に起こした(NHK NEW WEB 8月17日)。小池都知事は、政策への助言などを行う特別秘書として、都民ファーストの会の野田数(かずさ)代表と元読売新聞記者の宮地美陽子氏を任命しているが、7月に三宅氏が情報公開請求した2人の給与などに関する文書は黒塗りにされていたという。これも「都政の完全ブラックボックス化」の表れなのかもしれない。

 議事録などの記録がない、というのは、森友学園問題で財務省のあらゆる記録が廃棄され、公開された公文書も黒塗りにされていたことを思い出させる。安倍政権は国民の不信感を招き、内閣支持率急落の一因となった。小池都政も同じ轍を踏むのだろうか。

野田 数 都民ファーストの会代表
「異次元の規模で発信、情報公開をしている」

Sponichi  Annex 8月13日

 毎日新聞が7月の東京都議選で当選した127人の都議に行ったアンケート結果が議論を呼んでいる。安倍政権の評価や憲法改正の賛否についての質問に、第1会派「都民ファーストの会」の議員のほとんどが無回答とし、その理由についてほとんどの議員が「都政に専念するため」と書き込んだためだ。都民ファーストの会本部から示された模範回答をそのまま書き込んだものと見られており、所属議員からも「自由な発言が許されない雰囲気がある」という声が上がっているという(毎日新聞 8月6日)。

 都民ファーストの会は新人が39人を占めるが、都議が報道機関の取材に応じる場合は原則として本部の許可を得る必要がある。報道機関も本部に都議への質問内容を事前に提出することを求められている。このことについて野田数代表は「民間企業なら当然の対応。うちは既存政党よりも確実に情報公開が進んでいる」とコメントしている。

 野田代表はスポーツニッポンの取材に対して、「(メディア規制との)批判は承知していない。事実ではないので何のコメントもない」と回答。どこかで見たやりとりだな、と思ったが、これ、菅義偉官房長官の「菅話法」そっくりだ。

「開かれた政治集団だと我々は自信を持って言える」「異次元の規模で発信、情報公開をしている」とも語った野田氏。い、異次元! ならば、特別秘書としての給与もすぐに公開するだろう。また、自らが非議員であるということについては「選挙に選ばれたら偉いんですか。米国の閣僚は選挙で選ばれてますか。日本の大臣だって民間人もいるでしょ」と返したという。野田氏が偉そうということはよくわかった。

若狭 勝 衆院議員
「新党の名称は、全く別の国民の皆様に親しみをもって呼んでいただける名称にしなければならない」

ブログより 8月9日

 小池百合子都知事の側近で、自民党を離党した若狭氏が立ち上げた政治団体「日本ファーストの会」。言うまでもなく「都民ファーストの会」が国政進出した際の受け皿となる団体だ。

 当初は「国民ファーストの会」という名称になると思われていたが、後藤輝樹氏が5月に政治団体「国民ファーストの会」を届け出していたことから、重複を避けたと見られる。また、発明家のドクター・中松氏も今年4月に「日本ファースト党」の商標登録を出願しており、ツイッターで「『日本ファースト』の元祖はドクター・中松であることをお忘れなく」と念押ししている(東京スポーツ 8月12日)。船出早々、すさまじいケチのつきっぷりだ。

 日本ファーストの会という名称への批判も巻き起こっている。多くの人が思い浮かべるのは、ドナルド・トランプ米大統領が唱える「アメリカ・ファースト(米国第一)」。国際協調よりも自国の利益を最優先する主張だ。排外的な空気が色濃く、差別も容認する。在日特権を許さない市民の会(在特会)の前会長、桜井誠氏が立ち上げた政治団体の名も「日本第一党」である。日本ファーストの会の名と酷似しており、桜井氏は同会に質問状を送付したという。

 作家の平野啓一郎氏はツイッターで「モロに極右のネーミングやな。対外的にどう見られたいのか?」と批判(8月6日)。ジャーナリストの江川紹子氏は「名は体を表すというが、自国優先や排外主義を思い起こさせる名前にためらいはなかったのだろうか。センスが悪すぎる」とコメントした(佐賀新聞 8月14日)。

 名称に関する批判が起こると、若狭氏はブログで「将来設立される新党の名称ではありません」と釈明。「全く別の国民の皆様に親しみをもって呼んでいただける名称」にしなければいけないと書き込んだが、じゃ、なんで「日本ファーストの会」って名前にしたんだろう? 適当だったんだろうか? 若狭氏の物言いもずいぶん適当に見えてしまうのは気のせいだろうか。

江崎鉄磨 沖縄北方担当相
「しっかりお役所の原稿を読む。立ち往生より、答弁書の朗読かな」

産経新聞 8月7日

 内閣改造で支持率もアップし、一息ついた安倍政権。ところが、いきなり新閣僚の失言が飛び出した。沖縄北方担当相の江崎鉄磨氏が、5日、地元の愛知県一宮市で開かれた祝賀会合後に、国会答弁について「答弁書の朗読」と語ったのだ。

 担当する北方領土問題についても「素人は素人。皆さんのいろんな知恵で色を付けてもらうことが一番大切」と語った。江崎氏は「謙遜のつもりだった」と説明したが、やる気あるの? と言われても仕方のない失言だ。もともと入閣への意欲は皆無で、安倍晋三首相から入閣の打診を受けても固辞していた。江崎氏を説得した二階俊博自民党幹事長からのアドバイスは「紙に書いてあること以外読むな」だったという(『週刊文春』8月17日・24日号)。言われたことをそのまま言っちゃったのか。

 会合の映像を見ると、江崎氏は大変上機嫌で舌もなめらか。冗談交じりのリップサービスだということは明らかで、人の良さもよくわかるのだが、それと閣僚としての資質は別問題だ。産経新聞からも「江崎氏の発言は軽率のそしりを免れない。国民の政治への信頼が揺らぐ中で、新閣僚の失言は厳に慎むべきタイミングだった」と叱り飛ばされている。

 江崎氏は安倍首相も怒らせている。初閣議の直後に振る舞われた日本酒を2杯も飲んだ酒好きの江崎氏に向かって、安倍首相は「ダメだダメだ、江崎さん。これから会見なんだから」と諭したという。それでも「これで勢いがついて、舌が滑らかになります」と言いつつ飲み続けようとした江崎氏に首相は手でバツ印を出してキレたとか(『週刊文春』8月17日・24日号)。

 この日のことを記者に問われた江崎氏はこう言い放った。「不適任だというなら、いつでも私(大臣を)辞めてやるから」。

菅義偉 官房長官
「ここは質問に答える場所ではない」

朝日新聞デジタル 8月10日

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題で、記者からの質問を受けた菅官房長官の回答がこちら。もはや「記者会見」「質疑応答」という言葉の意味が崩壊している。

 愛媛県と同県今治市の担当者が2015年4月に首相官邸を訪れた際、同行した加計学園幹部も安倍首相の秘書官だった柳瀬唯夫・現経済産業審議官と面会していたという報道についての質問に対するもの。菅官房長官は「国会で述べた通りだ」と繰り返した上で、「ここは質問に答える場所ではない。政府見解を、事実に関連して質問していただきたい」と返答した。

 同日の記者会見では「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」と語った政治家について問われた菅官房長官。「知りません」と一蹴したが、「これは、官房長官の著作に書かれているのですが」と返されて焦りの色を見せる一幕もあった。

ドナルド・トランプ 米大統領
「悪い団体がいたが、もう一つの団体もまた非常に暴力的だった」

産経新聞 8月16日

 米南部バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義の団体と反対派の衝突事件で、トランプ大統領は15日に記者会見を開き、「両方の側に責任がある」と主張した。衝突事件では、抗議する人たちの中に極右集会に参加していた男性が自動車で突入し、ヘザー・D・ハイヤーさんが死亡したほか、19人が負傷している。ほかにも複数の衝突で15人が負傷した(BBCニュース 8月14日)。

 トランプ大統領は会見で「(事件の)映像を入念に見た」とした上で、「悪い団体がいたが、もう一つの団体もまた非常に暴力的だった。誰もそのことを言いたがらない」と語った。事件の発端となった「右派の団結」集会の参加者については「全員が白人至上主義者というわけではなかった」と擁護している。日本のネットユーザーの中にも「原因は抗議する側にある」と白人至上主義者側を擁護する声が見られた。

 トランプ大統領には「人種差別を容認するのか」と与野党から批判が殺到。ともに大統領を務めたブッシュ氏親子が連名で「アメリカは常に人種差別を拒絶しなければならない」という声明を出した(NHK NEWS WEB 8月17日)。

 16日には大統領の助言機関から経済界トップの離反が相次いだ。ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト会長は「トランプ氏の発言は深刻な問題だ」と語り、米製造評議会のメンバーからの辞任を決めた。同評議会の3分の1にあたる約10人が辞任を表明している。もう一つの重要な助言機関である戦略・政策評議会は「不寛容、人種差別主義や暴力は米国の価値を傷つけるものだ」と声明を発表した(日本経済新聞 8月17日)。

 陸海空と海兵隊の4軍トップも人種差別への批判を表明。陸軍のミリー参謀総長は「陸軍は人種差別や過激主義、憎しみを許さない」とツイッターに投稿。海兵隊のネラー司令官も「海兵隊には人種的な憎しみや過激主義の入り込む余地はない」と投稿した(日本経済新聞 8月18日)。

 亡くなったヘザーさんの母親は16日に行われた追悼式典で、怒りを憎悪や暴力、恐れに向けず、意見の違う人との対話に向けてほしいと話し、「何がおかしいのか見つけて。傍観しないで。(世の中を)変えるために何ができるのかを自問して。それが娘の死を意味あるものにします」と訴えた(毎日新聞 8月17日)。また、ヘザーさんの父親は取材に対して「わたしは娘を殺した人を赦す。無知から生まれる憎しみをこの社会からなくしていくことが娘の願いだった」と語った。

 一方、四面楚歌状態に陥ったトランプ大統領は日本時間の17日夜、ツイッターにお得意のフレーズを書き込んだ。「人々は、フェイクニュースメディアがいかに不誠実か気付いている。これらのメディアは私の発言を正しく伝えていない。恥を知れ!」(NHK NEWS WEB 8月17日)。

(大山 くまお)

文春オンライン

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