1,400万東京都民に特大罰ゲーム『都知事選』のお時間がやってまいりました

文春オンライン / 2020年6月12日 11時0分

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2017年6月20日、会見で豊洲移転を発表 ©文藝春秋

 子ども周辺のママ友の間でも、年寄りが集まる介護施設でも、都民が集まる場で小池百合子さんの話題で持ちきりなんですよ。

 私なんかは小池百合子さんは政治家として論外だと思いますけどね。安倍ちゃんを真似たのか、質の低いお友達政治に邁進した挙句、築地から豊洲市場に移転する際には勝手に「立ち止まる」とか言って100億円単位の都税を無駄に。また、東京オリンピック関連では森喜朗さん相手に自慢の政治力が通用せず、国立新競技場も二転三転した上に湾岸都民の生活に必要な2号線ができない上、ホストなのに五輪開催の意志決定から実質的に外される。

たぶん、今回の都知事選でも完勝することでしょう

 さらには、都議会選挙で「都民ファースト」なる私兵集団が善戦したのに気を良くして国政にちょっかいを出そうとし、党勢拡大が果たせず行き詰っていた旧民進党の棟梁だった前原誠司さんを篭絡して自分はリスクを犯さないまま「希望の党」とかいう絶望的な組織を作って階上に前原さんを上げ、梯子を外して放火するという。何してんだよ。いや、前原さんもこんな分かりやすい罠に引っかかるなよ。結果、希望を失った希望の党の後継政党である国民民主党なる泥船の船長を押し付けられた玉木雄一郎さんが泣いているぞ。

 まあ、要するに小池百合子さん本人が独善的すぎて、巻き込まれた周りの人たちが沈んでいく運命にあるんですよね。たぶん、今回の都知事選でも小池百合子さんは完勝することでしょう。

 真っ先に手を上げたのがN国党の立花孝志さん。なんかホリエモン新党とか掲げてますけど、全然勝てる要素もなければ泡沫候補としての価値もないでしょう。もはやNHKすら関係ないじゃん。同姓同名の「小池百合子」さんを擁立する話もあるらしいですが、静岡4区補選で同姓同名候補立ててもほとんど票取れなかったの分かってるでしょ。

 そして、その流れで出馬観測まで出た堀江貴文さん。結局は都知事選のタイミングで出版した本の宣伝目的でエア出馬の噂を流しただけなのかよ。せっかくの箕輪厚介責任編集だったのに。セクハラで燃えた箕輪さんの最後の仕事になるかもしれないんですよ、分かってるんですか。それに、なんだ、あのホリエモン新党ってのは。何名前貸ししてんですか。仕事が雑過ぎるでしょ。「東京都改革」に噛みに来るのなら、もっと真面目にやれって思いますよ。

イタ電ラッシュで涙の出馬見送り

 さらには、左派の期待を集める“日本のサンダース”、宇都宮健児さんが出てくるかと思ったら、今度は山本太郎さんも出馬するかも知れないとかいう風評が出て、これもう左派の内ゲバ待ったなしじゃないですか。なんでただでさえ乏しい左派票を宇都宮・山本で分割する必要があるのか。

 これもう、左派陣営の中での勝つ負けるというメンツ争いに他ならないでしょう。普通に立候補しても小池百合子さんにはどうせ勝てないけど、立候補しないまま宇都宮さんに次点取られたら山本太郎さんの東京での左派からの声望が失われるから、是が非でも立候補して宇都宮さんよりも票を取りたいんですかね。非常にレフトな思想ですね。お陰で昨日から「山本一郎は宇都宮健児さんの邪魔をするな」とか「山本一郎はクズだから立候補を見送れ」などとクレームメールが殺到してるんですよ。いいですか。私は山本一郎であって、山本太郎じゃないんですよ。

 候補者調整ぐらいしろや、と言いたいところですけど、よく考えたら前回の選挙では、なぜか突然鳥越俊太郎さんが出馬すると言いだして、先に出馬を決めていた宇都宮陣営に「お前は出るな」とイタ電ラッシュで涙の出馬見送りとかやっていたのを思い出した。その結果が、鳥越俊太郎さんはスキャンダル報道でグズグズになり、炎天下の中で選挙カーの上で演説をすることもままならずに大失速して晩節を素敵に演出しておられましたね。

東京のコロナウイルス対策で本当に頑張ったのは……

 このように、小池百合子さんを取り巻く環境は、小池百合子さんがどうであるかを別として、勝手に周辺が自沈し、当選の見込みがあまり望めない人ばかりが対抗馬になることで「どう考えても小池百合子圧勝」で終わりそうになるのです。ヤベぇぞ、小池百合子。ますます調子に乗るぞ。

 絶対に余計なこと思いついて適当なことをやるんですよ、小池百合子さんは。来年に予定される東京オリンピック、開催見送りをするにあたって、「東京改革のシンボルに」とか言ってでかい公共事業でもやろうとするんじゃないですかね。また無駄遣いされて、呆然とする都民。でも誰にも止められない。だって他にいないんだもん、小池百合子さん以外。

 小池百合子さんを絶賛するママ友たちは、皆さん口を揃えて「コロナウイルス対策で、小池さんは頑張ったから」と言います。待て待て待て待て、東京のコロナウイルス対策で本当に頑張ったのは国際感染症センター長・大曲貴夫さんや東京都医師会、さらには現場を支えた看護師など医療関係者の皆さんや、東京都福祉保健局を中心とした東京都庁職員の皆さん、そして最前線で踏ん張った各保健所の保健師や技師、職員の皆さんですよ。小池百合子さんなんて設楽焼のたぬきの置物のようなものです。

自民党都連がちゃんと対抗馬を立てなければいかんのです

 小池百合子さんが何をしたかと言えば、「夜の街クラスター」など苦境に喘ぐ目立つ産業に対する無原則な都税ばら撒きと、謎の「東京アラート」で真っ赤に染めた都庁庁舎にレインボーブリッジですよ。三密やめろと言いつつ、観光名所に人だかりを作ってどういうつもりなんだよと思います。

 こんな無茶苦茶でも、小池百合子さんは勝つんですよね。対抗馬が弱いから。

 本来なら、大事な東京都知事の椅子を奪われた自民党の都連(都議会自由民主党)がちゃんと対抗馬を立てなければいかんのです。副知事のポストを巡って都議会公明党に日和られても、あなたがたは良い奴っぽいけど政治家としてはイマイチ無能な知識人・増田寛也さんを立てて小池百合子さんに惨敗したあのときから4年間、いったい何をしていたんですか。

 天下の大正義・自民党としてまともな都知事候補者を育てられず、小池百合子さんには自民党本部と勝手に握られて、「どうせ小池には勝てないから」と二階俊博さんや下村博文さんに小池支援に回られて万事休すとか恥ずかしすぎる。自民党の誇りのためにも、勝てなくても独自候補立てて最後まで戦わないと駄目でしょ。

 維新は維新で、何を思ったか熊本県副知事だった小野泰輔さんを推薦。誰ですかこの人。いい人っぽいけど、もっと早く立ててくれないと知名度足りなくて善戦も覚束ないでしょ、これ。なぜか堀江貴文さんと対談しているようですが、知名度がないからって毒入りジュースを飲んで目立ちに行く姿勢は見直したほうがいいと思います。ま、この時点で「あ、堀江貴文は立花孝志や上杉隆の稚拙な策略に乗らずに立候補見送るのかな?」と思うわけですが。

 まあ、どう頑張ってもなかなか小池百合子さんには勝てないんですよ。

 しかし、どうせ駄目でも小池百合子さんがアカンという話は是非知っていただきたいということで、目下ベストセラーになっております『 女帝 小池百合子 』(石井妙子・著、文藝春秋)は皆さん是非読みましょう。力作であります。読みようによってはこんなサイコパス感の強い方が都政の真ん中で権勢を振るっていてよいのか、本当に小池百合子さんが圧勝していいのか都民として、と思う部分はあります。

じゃあ次は誰がいいのかって訊かれても……

 さらには、PR会社大手のベクトル社(ベクトルグループ)の長谷川創さんと、小池百合子さんの資金管理団体の会計責任者を務めていた某さんとの間に複数の不動産取引があったというネタが出てきました。これ、事実なら普通に選挙以前にスキャンダル失職じゃないのと思うんですよね。

 カバンに5,000万円が入らなくて辞職に追い込まれた猪瀬直樹大先生や、13万円の「ホテル三日月」宿泊で最高に馬鹿にされて都庁を去った舛添要一大先生という都民の恥を極めた歴代都知事が三途の川の手前で小池百合子さんを待っていると思うんですよ。

小池百合子都知事の同居男性 都の業務委託企業トップと不動産取引
https://bunshun.jp/articles/-/38326

 仮に今回50億円ガチャで小池百合子さんがうっかり圧勝したとしても、その後も地獄の釜の淵で手ぐすね引いて槍の穂揃えて待ち構えたいと思います。

 でも、じゃあ次は誰がいいのかって訊かれても、実は誰にも答えはない。フランス革命みたいに、ムカついたからとりあえず王政ぶっ潰せばどうにかなるだろといっぱいギロチンに貴族や活動家送ってみたけどどうにもなりませんでした、みたいなことが繰り返されると思うんですよね。むしろ副都知事になった元ヤフーの宮坂学さんがそのまま順送りで都知事やれよ、白馬村には帰さねえぞとやるのもまた良いのかとすら思います。

生活や安全に直結する候補者をきちんと育ててこなかった

 それもこれも、自民党都連じゃありませんが私たち有権者が政治不信や無関心を理由に、自分たちの生活や安全に直結する候補者をきちんと育ててこなかったことが、本当に駄目な政治家を降ろそうにも降ろせない原因なのでしょう。安倍晋三さんが必ずしも良い総理だとは思わないし、お友達内閣や面白ガースー官邸が専横の果てに愚策を連発してグダグダになり、問題を起こすたびに官僚や電通に詰め腹を切らせてもなお「頑張れ安倍ちゃん、自民党総裁4選だ」とやるのは、ひとえに有力でみんながこの人ならと思える後継者をついぞ輩出できないからです。

 同じように、安倍政権よりも能力に疑問符がつく小池百合子さんについても、彼女が駄目だと無責任に論評できても次がいないのでは、石原慎太郎閣下から猪瀬直樹、舛添要一とコロコロ都知事を替えても一向に都政は良くならず、都民は満員電車に乗り、待機児童は順番を待ち、貧困に喘ぐシングルマザーはさらに苦しい状況に陥り、豊かな中央港千代田3区や湾岸地域の発展に比して三多摩の過疎具合は進んで貧富の格差は東京の中で広がっています。

 歌舞伎町ではスカウト狩りが広がって治安は悪くなり、介護施設ではおひとり様高齢者が詰め込まれ、首都高その他インフラの改築・更新はなかなか進まず、東京都が抱える山積した問題に直面して対処をしているのは、言うまでもなく東京都庁職員や特別区・自治体の皆さんですよ。

日本人に希望を与えられない象徴が東京都政に

 そして閉塞した地方社会に見切りをつけ、日本全国から都会に憧れて東京へ次々とやって来る若い独身者男女が後を絶たないのもあり、ついに東京都民は1,400万人を超えてしまいました。東京だけが悪いわけではないけれども、結婚しない若い人たちは子どもを産まないので出生率は全国最低をキープし、ただでさえ減っていく日本人に希望を与えられない象徴が東京都政になっているのです。

 ふたを開ければ、前回の都知事選で勝利を収めた小池百合子さんが掲げた公約であった7つのゼロ、概ね合格点がつけられるのは「ペット殺処分ゼロ」ぐらいであって、「待機児童ゼロ」は達成度半分、「介護離職ゼロ」は問題外、「残業ゼロ」は寝言に近く、「電柱ゼロ」はようやく条例ができたレベル、「多摩格差ゼロ」はもう都庁を多摩移転しろよぐらいの勢いであって、批判したいというより「ま、小池さんならそうですよね……」という話なんですよね。

 それでも、「満員電車ゼロ」が一時的に達成できたのはコロナウイルス流行による緊急事態宣言のお陰であって、小池百合子さんの直近の知事支持率が上向いたのもコロナウイルス対策で小池さんが目立ったからです。コロナ特需の最大の受益者が小池百合子さんだとするならば、コロナの最大の被害者は東京都民なんじゃないかと思うんですけどね。残念ながら。

 結局は、今回の都知事選挙も「まともな政治家が選ばれる希望ゼロ」であります。

「本当に申し訳ございませんでした」と、子どもたちに謝らなければならないのかもしれません。

(山本 一郎)

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