ぺこぱが振り返るM-1ネタ「キャラ芸人になるしかなかったんだ!」はなぜウケたのか

文春オンライン / 2020年6月14日 11時0分

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ぺこぱのシュウペイ(左、ボケ担当)と松陰寺太勇(ツッコミ担当)

“非吉本芸人”ぺこぱがM-1楽屋で感じたアウェイ感「隣のかまいたち濱家さんが怖くて……」 から続く

 史上最高と言われる2019年のM-1。なぜあれほどの“神回”になったのか。出場した漫才師の連続インタビューでその答えに迫っていく。

「かぶってるなら俺が避ければいい」「もう誰かのせいにするのはやめにしよう」……“ノリツッコまないボケ”で、大逆転劇を演じたぺこぱ。なかでも「キャラ芸人になるしかなかったんだ!」は初見なのになぜかグッときた。M-1のネタについて深掘りしていく。(全4回の3回目/ #1 、 #2 、 #4 へ)

◆◆◆

M-1スタッフの知られざる「プロの仕事」

――ぺこぱの漫才は非常に動きが大きいですけれど、マイクが音を拾ってくれないのではという不安はないのですか。

松陰寺 マイクを離れても、フットマイクがあるし、ガンマイクも追いかけてくれていたので。

――それなら、安心ですか。

松陰寺 ただ、「右だって言ってんのに、なんで3回も左に曲がると……右になってる」っていうところで、僕が完全に後ろを向いてしまうシーンがあるんです。そこは、どうしてもマイクで拾ってもらえなくて。予選でも、そこだけ声が聞こえなくなったりしてたんです。なので、決勝はあのシーンは削ろうかとも思ったんですけど、ウケるところなのでもったいないな、と。でもオンエアを見たら、ちゃんと聞こえてて。僕が後ろを向いた瞬間、ミキサーの人が音を上げてくれたんじゃないですかね。僕らのネタを知っててくれて「向くぞ、向くぞ、今だ」って。

――だとしたら、プロの仕事ですね。

松陰寺 勘違いかもしれませんけど、心なしか、後ろ向いたときだけノイズの音も大きくなってる気がするんですよね。

「キャラ芸人にしかなるしかなかったんだ!」はなぜウケたのか

――ぺこぱのネタは、おもしろいだけでなく、どこか哀愁が漂っていますよね。シュウペイさんに「うるせー、キャラ芸人!」って言われて、松陰寺さんが「キャラ芸人になるしかなかったんだ!」って叫ぶところ、なぜかグッとくるんですよ。お笑いにはマイナスかもしれませんが、苦労してきたんだなって。涙笑いになりかける。

松陰寺 それ、よく言われます。哀愁出そうなんて、微塵も思ってないんですけど。

――オードリーの若林正恭さんがラジオで2人のネタを聞いてて泣きそうになったと話していましたが、なんかわかります。

松陰寺 ただ、「キャラ芸人になるしかなかったんだ!」っていうセリフは、実人生とかぶっているところもあるんですけど、それは今日初めて見たという人にはわからないじゃないですか。僕らの歴史を知ってる人なら、笑ってくれるかもしれないけど。

――松陰寺さんがかつて、着物を着ていたとか、ローラースケートをはいていたとか、そういうことを知らなくても、なんとなく名残はありますよ。お化粧もされてますし。

松陰寺 確かに、あのセリフはどこでやっても、不思議とウケたんですよね。

――M-1の1本目は、相当手応えあったんじゃないですか。

松陰寺 ありましたね。ただ、一番最後の「急に正面が変わったのか?」というところは、ライブではウケないこともあったんです。

――観客席から見て左側、いわゆる舞台の「下手」をシュウペイさんが向いて立つところですね。

松陰寺 M-1の予選で初めてウケたんです。会場も広いですし、お客さんも通な方が多いので。でも、決勝はどうかな、と。そこはいちばん不安でした。

――でも、あそこも大爆発でした。

松陰寺 そうですね。ホッとしました。

上沼さんの“96点”で「完全にキャラを忘れちゃった」

――得点はオール巨人師匠から始まって「93」「94」「91」「94」「92」「94」「96」と非常に高得点でした。最後の上沼さんが96点を付けましたしね。ただ、一瞬で計算できないので、順位はすぐにはわかりませんでした。それでも松陰寺さんは、腕を突き上げていましたね。

松陰寺 松本さんの94点と、上沼さんの96点で「いったか?」と。ぜんぜんわからなかったですけど。3位か4位かなと。なので「行けーっ!」と。あのときは完全にキャラを忘れちゃってました。

――結果、トータル654点で3位の和牛を2点上回りました。ミルクボーイが史上最高得点(681点)を出したときも盛り上がりましたが、あの瞬間も同じくらい盛り上がりました。最後の最後でのどんでん返しでしたから。

松陰寺 頭、真っ白になってましたね。

――シュウペイさんは笑顔でした。

シュウペイ 僕は楽しんでいたんで。

松陰寺 あんま、覚えてないな。あのときのこと。

最終決戦の直前に「ペットボトルの水をこぼした」

――最終決戦は一転、トップバッターになったので、休むことなく連続でネタを披露しなければなりませんでした。

松陰寺 めちゃくちゃ疲れましたね、僕は。セリフ量が多いので、よく息を吸うのを忘れちゃって、セリフの途中でガス欠しちゃったりするんです。そうならないようにすごく気をつけてもいましたし。

――1本やると、ぐったりくるわけですね。

松陰寺 僕は疲れますね。ただ、あそこでいったんCMに入ったんで、2分ぐらいは休憩できたと思うんです。なので、そこでちょっと落ち着いて。もう裏で興奮し過ぎて、ペットボトルの水をこぼしたりしてたんで。

2本目、ローラースケートを用意していたって本当?

――2本目、ローラースケートをはこうかどうか迷ったと話していましたが、本当なんですか?

松陰寺 いちおう持ってきていたんです。時間に余裕があったら、おそらく楽屋には戻っていたでしょうね。そこで、どうしようかなと考えたと思います。

――2本目のあのネタを、ローラースケートを履いてやろうと。

松陰寺 はい。登場のときだけシューッて出てきて。戻るときもまたシューッて。でも、今考えたら、やらなくてよかったですよね。

――やらなくてよかったと思います。

松陰寺 もともと、いらんことばっかり考えちゃう方なんですよ。だから、ここまでくるのにこんなに時間がかかっちゃった。やんなくてよかったな。

(【続き】 ぺこぱにあえて聞いてみた『あと3回出られるM-1。今年もやっぱり挑戦しますか?』  を読む)

写真=山元茂樹/文藝春秋

ぺこぱ/松陰寺太勇(ツッコミ担当)とシュウペイ(ボケ担当)のコンビ。松陰寺は1983年11月9日山口県出身。シュウペイは1987年7月16日神奈川県出身。アルバイト先の渋谷の居酒屋で出会い、2008年に結成。

 2019年『ぐるナイ』の「おもしろ荘」で優勝。M-1では10年、16年3回戦、18年に準々決勝進出。19年に初の決勝進出で3位に。

ぺこぱにあえて聞いてみた「あと3回出られるM-1。今年もやっぱり挑戦しますか?」 へ続く

(中村 計)

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