まもなく逮捕へ……河井克行・案里夫妻の“買収問題” 東京地検特捜部は全貌を解明できるか

文春オンライン / 2020年6月16日 11時0分

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河井克行・案里夫妻 ©AFLO

 自民党の河井克行(57)と案里(46)夫妻の摘発が間近に迫っている。昨年7月の広島の参院選をめぐり、広島地検が昨年来、選挙ウグイス嬢の報酬問題から始まり、当人による選挙買収へと捜査の手を伸ばしてきた。

 夫妻で地元議員ら約100 人に渡した選挙の買収総額は、実に2600万円に上ることが明るみに出ている。検察当局は6月17日の通常国会閉幕を待って、両人を公職選挙法違反容疑で逮捕するものと目される。

 当初、稲田伸夫検事総長の肝煎りで始まった捜査は、すでに大阪地検からの応援検事に代わり、東京地検特捜部の精鋭部隊が主力となって進められている。黒川弘務の辞任を受け新たに東京高検検事長に就任した林眞琴(62)が、東京地検管轄の事件として本格捜査着手の指揮を執る。注目の捜査だ。

捜査の焦点は1億5000万円の“公認料”

 捜査の焦点は言うまでもなく、昨年7月21日投開票の参院選に向け、自民党が河井夫妻陣営に振り込んだ1億5000万円の“公認料”である。

 同じ選挙区の自民党候補である溝手顕正に対する公認料の10倍という法外な金額が、昨年4月から参院選挙公示日の7月までのあいだに、克行の選挙区である自民党の広島県第3選挙区支部と案里の参院選挙区第7支部の口座へ数回に分けて入金された。

 広島県選管が参院選挙費用として認めている上限は4726万9500円だから、そもそも1億5000万円の“公認料”そのものが上限をはるかに超えていることになり、それ自体の問題もある。一方、河井陣営が選管に提出した収支報告書によれば、参院選の選挙運動費用は2405万円、チラシの作成費用などを含めた支出額を2688万9896円と計上している。

 つまり1億5000万円からそれを差し引いた1億2311万104円が、不明朗な政治資金といえる。いったいどのように使われたのか。

 資金の行方を捜査してきた東京地検特捜部は、夫の克行を選挙買収の中心と睨んできた。克行は案里が参院選へ立候補を表明した昨年3月以降、95人の広島県議や後援会関係者に2400万円の現金を渡して票の取りまとめを依頼し、当の案里も克行の指示で5人に150万円を配ったとされる。選挙買収に使われたこの2550万円プラスアルファの2600万円の原資が、1億5000万円の法外な“公認料”だと見ていい。それでもまだ、1億円近くの行方が謎である。

案里を担ぎ出したのは安倍か、菅か?

 夫妻の摘発は間違いないだろう。が、問題はそれを誰が出したのか。そこが政界における最大の関心事だ。周知のように元来、参院自民党の広島選挙区は溝手の出馬が決まっており、そこへ2人目の候補として河井案里を割り込ませた。そのための“公認料”である。

「形の上では選挙資金なので党の二階俊博幹事長決裁になる。が、ポイントは安倍首相と菅官房長官のどちらが案里を担ぎ出したか、という点だ。安倍首相側は菅官房長官が子飼いの河井の妻を擁立したんだといい、逆に菅官房長官側は溝手嫌いの安倍首相が判断したんだと互いをけん制している」と自民党関係者は言う。

 事件はもはや修復不可能といわれる官邸内の首相対官房長官の確執に飛び火しそうな雲行きだ。ここへ来て、「菅と案里の写った2ショットチラシに1億円かかった」なんて話まで飛び出しているが、仮に黒川が東京高検検事長としてそのまま居座っていればどうなっていたか、とも囁かれる注目の捜査。検察の威信をかけた東京地検特捜部はどこまで全貌を明らかにできるか。(敬称略)

◆◆◆

 森氏が指摘する河井夫妻の買収疑惑と黒川氏の定年延長問題だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大以来、安倍政権は大きな批判を浴び続け、支持率は過去最低を記録した。その背景にいるのは「官邸官僚」たちである。全戸一斉配布を謳った「アベノマスク」や安倍首相自らが出演した俳優・星野源とのコラボ動画問題などは、経産省出身の佐伯耕三秘書官のアイデアだとされる。なぜ官邸官僚たちは失策ばかりを続けるのか。

「文藝春秋」7月号及び「文藝春秋digital」に掲載した森氏の論考「 『官邸官僚』の自爆 」では、アベノマスク配布や一人当たり10万円の特別定額給付金などコロナ対策を巡る官邸官僚たちの動きに加え、法案の見直しに追い込まれた検察庁法改正問題の深層についても詳述している。

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(森 功/文藝春秋 2020年7月号)

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