王、原、松井に続け……巨人・岡本和真「3年連続30発」の可能性

文春オンライン / 2020年6月23日 11時0分

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「3年連続30本塁打」に挑む岡本和真 ©時事通信社

 プロ野球に、ようやく球音が戻った。夏を前にした6月19日。およそ3カ月遅れで、公式戦が開幕した。

 連覇を目指す巨人の4番・岡本和真内野手は開幕第2戦、同点に追いつかれたばかりの4回に値千金の決勝二塁打。7回にもダメ押しのタイムリーでチームを連勝スタートに導いた。

 今シーズン、その岡本が挑む大記録がある。チーム生え抜きでは松井秀喜氏以来22年ぶりとなる「3年連続30本塁打」だ。80年を超える歴史の中でも、巨人の生え抜きで3年連続30発を記録した選手は王貞治、原辰徳、松井秀喜の3人のみ。長嶋茂雄や阿部慎之助ですら達成できなかった高いハードルだけに「真の4番」の座に向けた試金石になると言っていいだろう。

厳しい状況下での「3年連続30本塁打」へのチャレンジ

 ただ、その道のりはなかなかに厳しい。世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大は人々の生活のみならず、あらゆるスポーツに影響を与えた。東京五輪は1年の延期を余儀なくされ、プロ、アマチュアを問わず、世界中でリーグ戦などの中止が相次いだ。日本のプロ野球も例外ではなく、3月20日の開幕から大幅に延期された。

 球界関係者に感染者も出た。3月下旬に阪神の藤浪晋太郎投手、伊藤隼太外野手、長坂拳弥捕手の3人が新型コロナに感染。近鉄と日本ハム、楽天で監督を務めた梨田昌孝氏や、日本ハムと阪神で活躍した片岡篤史氏らも感染するなど、目に見えないウイルスは脅威となった。

 感染の原因となる「密閉・密集・密接」の3密を避けるため、各球団は活動の休止や自主練習として対応。そして新規感染者が落ち着いてきた5月25日、「6・19」の開幕が決定。政府が4月に緊急事態宣言を発令して以降、国内のプロスポーツで公式戦の開催が決まったのは初めてだった。

 ただし、例年通りには実施できない。5月から6月にかけて行われる予定だった1チームあたり18試合の交流戦は初の中止となり、真夏の祭典であるオールスターゲームも取りやめとなった。日本シリーズの開幕は例年より約1カ月も遅い11月の下旬だ。

 覇権を懸けて戦うレギュラーシーズンの試合数は、「143」から23試合少ない「120」に削減された。野球協約には「ホーム・ゲームの数は60試合を最低数とする」と定められており、ビジター60試合との計120試合を実施できれば、シーズンは成立する。

 しかし、選手の記録への影響は避けられない。打者なら安打や本塁打、打点、投手なら勝利や奪三振など、積み上げる数字に関しては例年より落ちると思われる。そんな状況下での「3年連続30本塁打」へのチャレンジなのである。

 岡本は2018年から2年連続で全試合に出場し、スラッガーの証でもある30本をクリアした。30号に到達したのは、33本を放った18年が126試合目、31本だった昨シーズンは137試合目。試合が減る今シーズンは、序盤からアーチの量産が求められる。単純計算で4試合に1本のホームランが必要となり、これは従来の143試合に直すと約36発ペース。つまり自己新記録のペースで打ち続けなければならないのだ。

そのバットが及ぼす影響は1チームの枠に収まらない

 岡本は奈良・智弁学園高から2014年秋のドラフト会議で、巨人に1位指名され、入団した。球団は当初、投手を指名する方針だったが、当時の原辰徳監督が、スカウトから「将来はジャイアンツで4番を打てます。必ず打てるようになります」と進言され、変更したエピソードがある。

 右の長距離砲として期待された若者は、入団から3年間で計1本塁打。その才能が開花したのが、4年目の18年だ。高橋由伸監督の若手を積極的に起用する方針に見事に応え、打率.309、33本塁打、100打点をマーク。同年6月には21歳の若さで巨人の「第89代・4番打者」の座に就いた。同年限りで退任した高橋監督から「勝負強さはたいしたもの。頼もしさが日々、増していくと感じる」と高く評価された。

 原監督が3度目の監督復帰となった昨シーズンは打率.265、31本塁打、94打点をマーク。交流戦の期間中に不振に陥り、4番を外れたが、134試合で4番を務めた。18年より成績を落としたとはいえ、主砲の役割を果たした。

 プレッシャーのかかる巨人の4番は「聖域」と言われる。かつては川上哲治や長嶋茂雄、王貞治、原辰徳らが4番を務め、常勝軍団の重責を担った。その一人である原監督から4番を託された岡本にとって、今季は名だたるレジェンドの系譜に名を連ねるための重要な1年になる。

 過去2シーズン、主軸を担った経験を踏まえ、岡本は「(自分が)打てれば勝てる試合が増えるし、打てなければ難しい試合が増えると感じた」とチームの浮沈を背負う自覚を示しているが、そのバットが及ぼす影響は1チームの枠に収まらない。

 ようやく開幕日が決まったばかりだった6月上旬にはチームメートの坂本勇人内野手、大城卓三捕手が新型コロナウイルスに陽性反応を示した。幸い軽症で公式戦は無事に開幕したものの、今後も球界に感染者が増えれば、リーグ戦が中断される可能性を残す。それどころか、感染拡大の第2波が来れば、プロ野球はおろか人々の生活すら再び脅かされかねない。

 しのびよるコロナウイルスの脅威を感じながらの1年。だが、そういった暗い空気を吹き飛ばし、明るさや希望を示すことこそが本来のプロ野球の役割であり、野球にはその底力があるはずだ。中でもホームランは野球の華。岡本のような若きスターには、日本の明るい未来を切り開く豪快なアーチを1本でも多くかけてほしいと願っている。

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(福住 淳)

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