【熊本豪雨に令和流皇室は?】天皇皇后の被災地訪問に立ちはだかる「3密」の壁

文春オンライン / 2020年7月6日 16時0分

写真

昨年12月、台風19号の被災地訪問を終え、羽田空港に到着された天皇、皇后両陛下 ©共同通信社

「天皇・皇后両陛下は熊本豪雨の被害に大変、心を痛められていると拝察しています。しかも新型コロナウイルス禍によって、昨年の台風19号の被災地のようにお見舞いに行くことが、当面は難しいとみられていることも、ご心痛を深められている要因となっておられるのではないでしょうか」

 宮内庁関係者はこう語る。7月4日、気象庁が熊本、鹿児島両県に大雨特別警報を発した熊本豪雨では、多くの死者や行方不明者が出る甚大な被害が発生。球磨川の氾濫で流された家屋や土砂崩れで寸断された道路や下敷きになった家屋、広範囲にわたる冠水による床上浸水被害など未曽有の災害となった。梅雨時期のため、雨が続けば被害はさらに拡大する恐れもある。

同行する供奉員や記者を限定することは可能でも……

「両陛下は昨年10月12日に上陸した台風19号の被害では、被災地の復興作業を優先させたうえで、御即位に伴う一連の儀式が終わるのを待って、12月26日に日帰りで被害が大きかった宮城、福島両県をお見舞いに訪れられました。被災者約50人が身を寄せる宮城県丸森町の花田応急仮設住宅では、『怖い思いをされたでしょう』などと声を掛けられるなどしました。

 しかし、被災地ご訪問では、密閉・密集・密接の『3密』を回避するのは困難です。同行する供奉員や記者を限定することは可能でも、お会いする被災者をごく少数に限定するのでは、両陛下がわざわざ足を運ばれる意義が薄れるからです。ワクチン開発は年内は難しいとも言われており、新型コロナ禍は両陛下にとっても両陛下をお支えする宮内庁にとっても、被災地をお見舞いするうえで頭の痛い問題なのです」(同前)

「常に国民を思い、国民に寄り添い」令和流のキーワード

 天皇陛下は今年2月21日、誕生日を前にした記者会見で「常に国民を思い、国民に寄り添い、象徴としてあるべき姿を模索しながら務めを果たし、今後の活動の方向性についても考えていきたいと思っております」と述べられている。

 また、雅子皇后は昨年12月9日の誕生日に合わせて発表した文書の中で「陛下とご一緒に、国民の皆様の幸せを常に願いながら、寄り添っていくことができましたらという思いを新たにしてまいりました」と綴られている。キーワードはやはり、国民に寄り添っていくというものだろう。

終戦後に昭和天皇が始めたご巡幸に通ずるもの

「地震大国と呼ばれる日本において、温暖化に伴う近年の豪雨被害も相まって、両陛下は被災地のお見舞いを最も重要なお務めの1つとお考えです。その根底にあるのが国民に寄り添うというお考えなのだと思います。これは、終戦後の1946年から昭和天皇が始めたご巡幸に通ずるものです。昭和天皇は敗戦で沈んだ国民の心を癒やし、復興に向けて前を向くように励ますため、返還前の沖縄を除く46都道府県を1954年まで8年かけて回ったのです。

 まさに国民に寄り添い、日本の復興のために先頭に立って国民を元気付けたわけです。このなさりようは上皇陛下に受け継がれ、上皇・上皇后両陛下は戦争犠牲者の慰霊の旅に加え、昭和時代には戦前は侍従が、そして戦後は三笠宮さまなど皇族方が昭和天皇のご名代として訪問していた被災地についても、長崎・雲仙普賢岳の噴火(1991年)を皮切りに、阪神淡路大震災や東日本大震災などの被災地のお見舞いを重要なお務めと位置付けられました。天皇・皇后両陛下は、これをしっかりと受け継がれているのです」(同前)

 それだけに、熊本豪雨の被災地訪問が新型コロナ禍のためにままならないであろうことに、天皇・皇后両陛下は心を痛められているというわけだ。レムデシベルやアビガン、アクテムラなど、効き目に期待が寄せられている治療薬はあるにはあるが、まだ不透明な状態にある。ワクチンも年内は困難となると、両陛下は被災者に寄り添うために、別の手段を編み出されるしかないが、果たしてそんな手段があるのだろうか。

天皇陛下が雅子皇后と一緒に行う“令和流”ビデオメッセージは

「新型コロナ禍で4月7日に政府の緊急事態宣言が出された後も取りざたされたビデオメッセージがいいのではないでしょうか。上皇陛下は東日本大震災の発生から5日後の2011年3月16日、ビデオメッセージを発表し、被災者を勇気付けられました。すぐにでも現地を訪問されたいお気持ちだったにもかかわらず、被災状況の把握や被災者の捜索など現地の状況を踏まえ、お見舞いは後回しにして、まずメッセージを出されたわけです。

 被害が甚大だった宮城、岩手、福島3県のうち宮城に最初に入られたのは、4月27日です。震災発生からおよそ1カ月半後です。もちろん現状では1カ月半で天皇・皇后両陛下が熊本入りすることは叶わないはずですが、熊本の被災者に心を寄せている事実を両陛下の直接のお言葉でお伝えし、近い将来、必ず見舞いに行きたいと思っていらっしゃることを示すことで、被災者はとても励まされるのではないでしょうか。しかも皇后陛下の肉声は、必ず被災者の心に響くはずです」(同前)

 雅子皇后の肉声を国民が聞いたのは、病気療養に入られる前の2002年12月の記者会見が最後だ。上皇陛下がお一方で行ったビデオメッセージを、天皇陛下が雅子皇后とご一緒に行うという“令和流”に寄せられる被災者の、そして国民の期待は、小さくないのではなかろうか。

(朝霞 保人/Webオリジナル(特集班))

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング