最新防災グッズ3種の神器とは? 豪雨被害で知っておきたい、プロが実践する防災術

文春オンライン / 2020年7月11日 6時0分

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九州での豪雨のあと、熊本県人吉市で店から泥を運び出す女性 ©時事通信社

 コロナ禍の中、去年に続いて2020年も記録的豪雨が続いている。2019年のケースでは、ライフラインの回復に時間がかかるケースが相次いだが、今年はどうなるのか? オール電化住宅、スマホ一元管理といった最新のライフスタイルにはどんな対策が必要? 防災のプロに取材した。

日本に近づく台風や大雨は巨大化、激甚化の傾向

 災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏によると、このような極端な気象は「今後も増加する」という。

「日本に近づく台風や大雨は巨大化、激甚化の傾向にあります。気象庁のデータでも、1時間の雨量が50ミリを超える大雨の発生回数が、40年前の1.5倍に増えているという記録が示されています。また19年の災害で露呈したのは、比較的整備が進んでいる都市部においても、治水のインフラ整備の能力が、最近の気象の変化には対応できなくなっているということです」

 とはいえ、備えは何年も前に購入した防災リュックのみという人も多いのではないだろうか。そこで「被災に備えて」「被災したら」という両面から、プロが実践する最新防災術を紹介していきたい。

水の備蓄は 500mlペットボトルを96本

 前出の和田氏は、前職はアウトドア雑誌の編集者。アウトドアやキャンプの備蓄食料、生活用品を備えておけば「防災用にも流用できていい」と言う。

「量の目安は“1週間プラス3日分の水と食料を用意しておき、残り1週間分になったら補充”というペース。水は一人1日3リットルの計算です。私はクリスタルガイザーの500mlペットボトルを96本ずつ備蓄。48本に減ると買い足しています」

ほぼ配給がされない生理用品・化粧品

 いざ避難所で過ごすことになると、プライバシーのない空間での寝泊りは女性にはつらい。

「アイマスクや耳栓は健康被害対策としてマスト。インフルエンザやノロウイルスなどの感染症が蔓延しますので、消毒用のウェットティッシュやマスクも必要です。女性の場合、意外に重要なのが生理用品や化粧品。なかなか配給されないので、避難袋に一定量を入れておきましょう」(同前)

 避難所では盗難が横行しがちなため、持ち物には名前を書くといった自衛手段も必要だという。

「避難所に行くのは自宅周辺に危険が及ぶと予測される場合、そして自宅が使用不能になった場合です。小さなお子さんや高齢者がいる場合はより早いタイミングでの安全確保を」(同前)

最新防災グッズ3種の神器

 一方、自宅でインフラ回復を待つ場合は、いかにライフラインを代替するかがポイントとなる。和田氏が愛用するのは、普段から使えて持ち運びも楽なもの。

「ガスや電気がストップしても食事をするには、カセットコンロは必須。私が使っているのはイワタニの『カセットフー 達人スリム』。カセットコンロの中でも圧倒的に軽くコンパクトなところが気に入っています。灯りは『折りたたみ式 LEDランタン ソーラーパネル』。太陽光で6~8時間でフル充電でき、LEDライトが10個内蔵されているのに軽量。平らになるから携行するのにも最適です。Travelcool社の『エアーマット キャンピングマット』は、寝袋の下に敷くことで地面からの冷気を防ぎ、同時にクッションの役割も果たすキャンプマット。自宅で暖房が止まったときにも使えますし、避難所では敷布団にもクッションにも。畳めば長さ22センチ。付属の膨張袋で簡単に膨らますことができるのも便利です」

 冬の寒さ対策にはガス、石油のストーブを用意するといい。筆者の地元の北海道では、18年秋の北海道胆振東部地震の際には、電池で動くポータブル式石油ストーブが完売状態になった。一方、猛暑の時期の停電では代替策がないのが現実だ。最近は車でエアコンを利かせて過ごす人が多いという。

 冷蔵庫はどうするか。

「日ごろから冷凍庫に保冷剤や凍ったペットボトルを保存しておき、停電時に冷蔵部分に移動させれば、1日程度は生鮮品を腐らせずに保存できます」(同前)

デジタル時代の新・防災グッズは?

 デジタル社会の今、買い物時の支払いやスケジュール管理など、何でもスマホで行っている人は多い。

「電子マネー化が進んでいますが、すべてカードやスマホ決済にすると災害時に困ります。停電に備え、現金も保持しておくと安心です。主要な電話番号などのメモも財布に入れておきましょう」(同前)

 電源がない場所での充電を考えると、モバイルバッテリーは持っておきたい。

「おすすめは、スマホ3回の充電が可能な10000mAh程度のもの(重さ300gくらい)。それ以上のパワーになると、重くなって普段持ち歩けません。避難所に持って行く用に、ソーラー充電が可能な『Next Gadgetモバイルバッテリーソーラーチャージャー』(26800mAh)もおすすめです」(同前)

タワマンは上の階ほど資産価値が高いといわれるが……

 2019年の台風19号による豪雨では、神奈川県川崎市の武蔵小杉駅前のタワーマンションが停電で大混乱に陥ったことも、クローズアップされた。雨水などが下水道から逆流する「内水氾濫」が起き、地下の電気室にあった電気設備が浸水したため停電。水も止まり、エレベーターやトイレが使えなくなった。

 住宅ジャーナリストの榊淳司氏が解説する。

「タワマンは、上の階ほど資産価値が高いといわれていますが、停電になると大変です。災害時に自家発電で動く緊急用のエレベーターがあるタワマンも多いですが、エレベーター操作が出来る管理会社の人が被害に遭って駆けつけられない場合もありますし、確実に動かせるとは限りません」

 マンションを買う、あるいは借りる際、電気室の場所はどうやって確認すればいいのだろうか。

「購入する際の契約図面に全体計画図が必ずあり、各階の平面図に電気室の場所も書いてあります。大抵の場合、住戸にも管理室にも駐車場にも使えないような場所に設置するため、最下階にあることが多い」(同前)

 また、近年急増した「オール電化住宅」の場合は、停電時はやはり何もできなくなってしまうのだという。

「オール電化の家は、停電時にはすべての機能が止まってしまい、生活が困難になります。電源停止に備えてガスなどの代替燃料や備蓄バッテリー、ソーラーまたはハイブリッドカーからの電力供給などの対策をとっていれば、逆に停電しても一定時間同様の生活が可能になります」(和田氏)

災害に強い土地、住宅の見つけ方

 災害に強い地域、住宅はどう見極めたらいいのだろうか。

 地理空間情報アナリストの遠藤宏之氏は「水害に備えるならハザードマップを見ること」と言い切る。

「ハザードマップとは、災害を防ぐことに特化してつくられた地図で、シミュレーションに基づいた被害の予測と、避難所の場所などが載っています。マップは各市町村が発行し、基本的に全戸配布しています」

 マップは、各自治体のサイトでも大抵見られる。

 前出の住宅ジャーナリストの榊氏は、実は家選びで失敗しているのだという。

「18年前に江戸川区に戸建てを買いましたが、今ハザードマップを見ると確実に浸水する場所で、区からも『ここにいてはダメです』といわれている地域です。でも現在のようにハザードマップが見られるようになったのは、僕の感覚だとこの4、5年のことで、購入時は深く考えていませんでした。江戸時代から陸地でしたし、地元の人に聞いても『水害は聞いたことがない』と。価格も安かったので買いましたが、今なら選ばないですね」

旧耐震の中古マンションは要注意

 榊氏は、今なら低層のマンションを選ぶという。

「60戸くらいのマンションで、停電でエレベーターが止まっても、階段で上がりやすい3階か4階くらいがいいですね」

 中古マンションは年代によって耐震強度が違う。

「旧耐震と新耐震があります。1981年6月に新耐震の建築基準法が施行され、概ね82年6月以降に竣工したマンションが新耐震です。旧耐震とは地震に対する強度が違い、阪神淡路大震災や東日本大震災でも、新耐震のマンションで建て直しが必要になった建物は一つもありません。ただし、旧耐震だから必ず壊れるわけではなく、弱い設計をしているマンションが危険ということ。不動産店で聞いたら教えてくれます」(榊氏)

 落・袋・つる(鶴)・うめ(梅) がつく地名は要注意

 最後に、『地名は災害を警告する』の著者でもある前出の遠藤氏が、「この字が地名に入っていたら要注意」という漢字を教えてくれた。

 災害を繰り返してきた日本では、災害の恐ろしさを地名に託して後世に伝えようとしてきたのだという。

「落」地すべり地、崩落しやすい崖、氾濫痕跡、地すべりにより川がせき止められた場所。※「落合」は川が合流する場所。

「袋」遊水地。

「つる(鶴)」氾濫常襲地。地すべり地。

「うめ(梅)」人工的に埋め立てた場所、土砂崩れなどで埋まった場所。

 また、「田」「谷」「沢」「川」などは低地に多い地名で、「島」も周囲が低地であることが多い。ただし、元来特定の場所を示していた地名が、住居表示などで広いエリアに拡大されているケースも多いので、「実際の地形で判断したほうがいい」。新興住宅街などは、「○○ヶ丘」「○○台」といった地名がつけられていることが多いが、元々の地名は「過去の地図を見ることでほとんどわかる」という。

 以下にまとめたのは、ネットで見られる遠藤氏おすすめの地図の一覧だ。たとえば、自分の住む地域は「海を埋め立てて作られた土地」といったことまで調べられる。一度チェックしておくといいだろう。

災害リスクを調べるならこのサイト!

地理院地図
(地形図や年代ごとの航空写真、土地条件図などが閲覧できる)
https://maps.gsi.go.jp

今昔マップ
(明治以降の旧版地図と現在の地図を対比して見ることができる)
http://ktgis.net/kjmapw

歴史的農業環境閲覧システム
(明治時代に作成された「迅速測図」が閲覧できる)
https://habs.dc.affrc.go.jp

ハザードマップポータルサイト
(全国のハザードマップの整備状況や一部図面の閲覧ができる)
https://disaportal.gsi.go.jp

重ねるハザードマップ
(全国のハザードマップをシームレスに閲覧できる)
https://disaportal.gsi.go.jp/maps/index.html

(梅津 有希子/週刊文春WOMAN 2020年 創刊1周年記念号)

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