トイレの温水洗浄は大NG 40代からの「お尻」に絶対やってはいけないこと

文春オンライン / 2020年10月29日 6時0分

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 最近、腟や肛門のかゆみやムズムズ感、においに悩み、病院を訪れる女性が増えているという。 週刊文春WOMAN創刊号(2019年正月号) の「更年期特集」でも、腟と泌尿器の不調をひっくるめた「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」への反響はかなり高かった。そこで今回は、これら腟・泌尿器に加えて、肛門の健康についてもより詳しく追究したい。実はこれらの症状は、トイレの使い方や日頃のケアを見直すことでかなり改善するのだ。

 なぜ、40代からお尻ケアが重要かというと、お尻は年齢とともに外形だけでなく、内側の外陰・腟まわりも変化していくからだ。下着メーカーのワコールの研究によれば、お尻のフォルムは内側に向かって流れるように下がっていく(下図参照)。

 GSMや骨盤臓器脱の治療・研究で名高い、三井記念病院産婦人科医長の中田真木氏は、「こうした体型の変化と同時に、腟・外陰部も変化し、下がってくるといえます」という。

 その原因は、まず女性の40代から50代の更年期に起こる女性ホルモンの減少に関係していると考えられる。

「女性ホルモンは、皮膚にハリと弾力を与えるコラーゲンを増やす働きをしています。女性ホルモンが減少すると、顔や全身に乾燥やくすみが出るように、腟まわりでも変化が起こります。大陰唇はぽってり感がなくなり、薄くなって垂れ下がります。小陰唇は短くなり、最終的にはなくなってしまうこともある。尿道口は縦に閉じていたのが開いて円形になり、腟壁は薄く硬くなり、点状出血が起こることもあります」と説明するのは、米国のGSM事情にも詳しい女性泌尿器科医の関口由紀氏(女性医療クリニックLUNAグループ理事長)だ。

 GSMという概念は、2014年に初めて米国の北米閉経学会などによって提唱された。具体的な症状は「陰部のかゆみや痛み」「泌尿器系の症状(頻尿、尿もれ、繰り返す膀胱炎)」「性交痛、それによる性的意欲の低下」の3つとされる。米国での疫学的研究では、「閉経後の女性50%に何らかのGSM症状があり、その症状はケアしないと進行していく」(関口氏)という。

「閉経関連泌尿生殖器症候群」という日本語訳は、現在、日本女性医学学会が検討中のものだ。ようするに、これまで40代以降の女性に起こる腟のかゆみや性交痛は婦人科で、尿もれは泌尿器科でとそれぞれに治療が行われてきた。もっと前には、「どれも、年だからしかたないと医療の対象ですらなかった」(関口氏)という時代もあった。しかし今後は、閉経期からの腟と生殖器の不調をひっくるめてGSMと呼び、女性のQOLをひどく下げる重大な疾患としてみていきましょうということだ。

 医療的には、腟の痛みや炎症、性交痛は、「萎縮性腟炎」として早期に手当てすればHRT(ホルモン補充療法)がよく効くとされている。女性ホルモンのエストロゲンを補充するので皮下のコラーゲンが増え、腟や外陰部に厚みと潤いが戻ってくるからだ。中でも、GSMには局所投与(腟剤)のHRTが効果的とされている。

 また、尿もれや尿意切迫感には、抗コリン薬やβ3刺激薬などの過活動膀胱の薬も処方されている。最近出てきたのが、腟内へのレーザー療法で、細いレーザー光を腟内にあて、腟壁の修復を促すというものだ。

「2回~3回の照射で、GSM症状改善効果が期待されている」(関口氏)という一方で、「海外では施術上のトラブルも報告されている。婦人科や女性泌尿器科など、婦人科診察(内診)の実績がある医療機関で行うことが重要」(中田氏)という声もある。

更年期の女性が「自分が尿臭い」と思う理由

 しかし、こうした治療を受けても、なかなか症状がパッとしないことがある。中田氏は、GSMにはエストロゲン欠乏など内分泌の変化に加え、日頃のケアの悪さが炎症を起こすもとになるとみている。

 たとえば、創刊号でも紹介したがトイレでの排尿のしかただ。前述したように、外陰部が下がってくると、排出された尿が外に出にくくなり、腟に入り込んでしまう。

 そうして排尿時に腟に入った尿があとで出てくると、あたかも尿が漏れているかのように感じることがある。このため下着が濡れることもあるし、「自分が尿臭い」という憂うつの原因になっている人もいるだろう。

 また、水洗トイレのトイレットペーパーは、排水管のつまりを防ぐために水に浸すとほぐれやすいことが優先されてきた。ところが、そういう紙でお尻をごしごし拭くと、腟や肛門まわりに紙の繊維の断片がはりついて残ってしまう。

「腟に入った尿やペーパー屑にしみこんだ汚れが刺激となり、皮膚が荒れてかゆみや乾燥感を引き起こすのです」(中田氏)

 中田氏は、洋式トイレでは足を大きく広げて、尿がしっかり前に飛ぶように出して、と患者さんには指導している。また、「エンボス加工」などお尻に張り付きにくいタイプのトイレットペーパーを使うこと。お尻を「拭く」というより、「押しあてる」か「タップ」して尿を吸い取るのが正しい方法だという。

「外陰部は石けんで洗わない」といわれて育ってきた人も多いと思うが、中田氏は「外陰部には皮脂を分泌するアポクリン腺があるので、泡の立つソープを使って指先で洗ったほうがいい」という。デリケートゾーン専用洗浄剤でなくても、弱酸性の赤ちゃん用全身石けんなど、無香料で沁みないと感じたものを使えばよいそうだ。腟の中までは洗わなくていい。

 一方、関口氏は、「腟・外陰部の血流の悪さと乾燥が、GSMを悪化させます」として、GSMの患者さんには骨盤底筋トレーニングと、お風呂のあとの保湿をすすめている。

「デリケートゾーンとはいっても、腟まわりは日頃から尿や血液などの体液にもさらされる場所なので、顔の皮膚よりは弱いが、腹部や腕の内側よりも強くできています。ボディに使って肌荒れしない保湿剤は、ほとんどの場合外陰部の皮膚(陰毛の生えているところ)にも使えます」(関口氏)

温水洗浄のあてすぎは危険!

 どちらにも言えるのは、治療の前にまず日々のケアが重要だということなのだ。

 ただ「お尻を洗う」といっても、温水洗浄便座でシャワーをあてることではない。これは大きな誤解で、外陰部や腟だけでなく肛門を含め、かゆみなどの症状のあるときは、むしろトイレでの温水洗浄はしないというのが、正しいお尻のヘルスケアだ。

 このことは、各メーカーの温水洗浄便座でも「産後、術後、炎症があるときなどには使わない」といった一文が取扱説明書に明記されている。それがなぜ、守られていないのだろうか。

 女性専用の肛門外科、日本橋レディースクリニック院長の野澤真木子氏は「むしろ、かゆいからきれいにしなければと思い込み、お尻を消毒したりトイレのたびに温水洗浄を強くあてることを繰り返す。このせいで、肛門の周りに炎症を起こしている人が多いのです」という。

 また、水流で肛門を刺激することで便を出そうとする人も増えているそうだ。こうなると、温水シャワーを当てないと便意がなく、水流も次第に強くしたくなる。かゆみを起こす皮膚炎はますますひどくなり、洗えば洗うほど悪循環が止まらない。

 これを「温水洗浄便座症候群」という専門家もいる。腟に比べて、肛門は刺激に強いと思われがちだが、「石けんでごしごし洗わない、トイレで温水洗浄の温度や水流を調整し、できれば使用を控える。この2つだけでかゆみが止まる人もいます」(野澤氏)という。

 また、今回、各医師から使いすぎがよくないという指摘があったのは、おりものや尿漏れ用のシートだ。

「特に薄型タイプは、しっかりした防水シートが入っているので腟の出口に蓋をしているようなもの。軽い尿漏れ感は本当の漏れではなく、拭き残しのことが多いので、シートをあてるよりもまずはトイレで拭き残しのないよう気を配ってほしい」(中田氏)

「おりものシートはでかけるときやスポーツ、長時間の立ち仕事のときだけにして、家の中では木綿の下着で風通しよく過ごしてほしい」(関口氏)

 肛門のかゆみにも影響する。

「月経のときだけかゆみが出るという人も多いが、ナプキンの種類を変えてみると改善することもあります」(野澤氏)

 骨盤底筋トレーニング(体操)にも触れておこう。これは、子宮や泌尿器、大腸など骨盤内の臓器を支えている筋肉を鍛えるトレーニングだ。

 腟や肛門の筋肉を10秒ほど引き締めたら、完全に力を抜いて15秒リラックス。こうして「締める、緩める」を繰り返す。

 関口氏がすすめる「ピフィラテス」では、「ベッドの上で仰向けに寝て膝を立て腰を高く上げるブリッジ」や「立位では、両足を開いて膝を曲げるスクワット、左右の足を前後に開いて膝を曲げるランジ」などのエクササイズと呼吸法をとりいれている。

 他にもさまざまな方法があり、「くしゃみでもれることがある」というような軽度な尿もれに有効なことは、古くから報告されている。

 ただし、膀胱の神経に異常がある場合には、この方法は適さない。巷では、「排尿中に尿を途中で止める」という方法が紹介されることがあるが、これも危険。中田氏は「いったん止めた排尿を再開する時に腹圧をかけることになり、かえって腹圧性尿失禁がひどくなる恐れがあるので絶対にしないでほしい」といっている。

突然、神経がやられてるかのような痛みが

 GSMの痛み・かゆみ・尿もれ感は、いつの間にか進行しやすいのも特徴だ。

「腟まわりの炎症は、ある程度悪くなると、まるで、神経がやられているのではないかと思うほどのひどい違和感が襲ってきます。ところが、それより前の段階では、なかなか気づくことができないのです」と中田氏は言う。

「ちょっとムズムズするだけだから」とトイレの温水洗浄で刺激をしたり、掻いてしまう。とりあえずドラッグストアで買った軟膏でしのいでみる。こうしたその場しのぎの対処を続けているうちに、悪くなってしまうのだ。

 関口氏は、このちょっとした我慢が「慢性骨盤痛症候群」の原因になるとする。

「ある1箇所にずっとかゆみや痛みを感じ続けると、脳内の視床下部に知覚の変調が起き、セロトニンやアドレナリンの分泌異常を起こして炎症もないのに痛みを感じるようになります。広い意味での『慢性疼痛症』というものです。腟の痛みから骨盤全体へと広がり、さらに全身の痛みやだるさにもなり、ひどくなると線維筋痛症や重度のうつ病になることもあるのです」と警告する。

更年期と痔に関係はある?

 さて、お尻まわりと言えば、痔の存在も女性を悩ませる。更年期や閉経は、痔には直接関係はないそうだが、老化とともにお尻の筋肉が緩んでくると、痔は悪化しやすくなるからだ。

 痔には、主としていぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、痔ろうの三つがある。男女ともにもっとも多いのはいぼ痔で、肛門の外にできる「外痔核」と、直腸内にできる「内痔核」とに分けられる。内痔核は、肛門の内側にあるときには痛みもないが、大きくなってくると残便感や出血、違和感などが起こり、肛門の外に脱出してくる。

「内痔核は、あってはいけないものでもないのです。肛門は肛門括約筋によって締められていますが、筋肉だけだと隙間ができます。その隙間を埋めてくれるのが痔で、肛門を締めるクッションの役割にもなっています」

 と野澤氏はいう。痔を穏やかなクッションのままにしておくためには、便秘を防ぎ、いきまずに排便することが大切だ。

 女性は、ホルモンバランスの影響で腸の動きが悪くなり、便秘になりやすい。食物繊維の豊富な根菜やイモ類、海藻類、果物を十分にとること。また、ヨーグルトなど乳酸菌とオリゴ糖を含む食品(他にはちみつ、タマネギなど)をよくとって善玉菌を増やし、腸内細菌を整えよう。

 理想的な排便とは、便意を感じてトイレに行き、便座に座って軽くいきむだけで、練り歯磨き状の硬さの便がすっと出るというもの。すべての行程が、2~3分以内で終了するのがベターだ。

「5~10分も座っているのは、それだけで痔の悪化要因です。トイレを休憩場所にせず、スマホもゲームも本も持って行かないでください」(野澤氏)

 なお、痔と間違われやすいものに「皮垂:スキンタグ」がある。肛門まわりにできた皮膚の盛り上がりで、特に女性の腟と肛門の間にあることが多いとされる。切れ痔のあとや出産後にできやすいという説もあるが、野澤氏はそうともいえないという。

 実は、皮垂は『子どもの病気ホームケアガイド第4版』(日本小児科外科学会編著、医歯薬出版)にも赤ちゃんのお尻にあるものとして取り上げられ、ここでも「外科的な手術などは必要ない」とされている。

「そんなことより重大なのは、痔による出血と思い込み、大腸がんを見逃してしまう人が多いことです」と野澤氏はいう。

赤い血でも大腸がんの可能性

「大腸がんの出血は黒っぽく、赤い血なら痔によるものと思われていますが、これは危険な思い込みです。日本人は肛門に近いS字結腸と直腸にがんができやすいと言われ、その出血は痔の出血の色とよく似ているので、痔にだまされることも多いのです」

 大腸がんは、女性のがん死亡原因の第一位(国立がん研究センター2017年統計)。野澤氏のクリニックでも「赤い血だから痔からの出血ですよね」といって受診する人の中に、進行性の大腸がんを発見することがままあるという。これは40代、50代にも起きている。もし、大腸がん検診の便潜血検査で陽性反応(出血あり)が出たら、痔のせいにしないで必ず精密検査を受けることも重要だ。

「便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、便が少量しか出ないのに排便回数が増えたなどの便通の変化も、大腸がんでは見られます」

 女性は年を重ねるほど、お尻からのサインに鈍感になってはいけない。かゆみや違和感を含め、「自分の体の訴えを聞く」ということが、心地よく生きる秘訣になるはずだ。

これだけでかゆみ、におい、イガイガ、不快感が改善!
「お尻まわりを老けさせないトイレとお風呂のルール」

●座り方

・洋式トイレでは足を大きく開いて座り、前傾姿勢をとる(尿がまっすぐ前に飛び、腟に入りにくくなる)
・便座が高いときは台の上に足をのせると、股が開きやすい
※排便では、出やすいポーズは人によって違うので、無理に前傾姿勢をとらなくてよい

●拭き方

・お尻にペーパー屑の残らないトイレットペーパーを使う(パッケージの「エンボス加工」「シャワートイレ用」「吸水力が高い」「お尻にはりつかない」などの表示を参考に)
・こすらず、軽くタップして尿を吸い取る
・紙を換えて2~3度タップし、水分がつかなくなるまで仕上げを
・トイレットペーパーでかゆみやかぶれが出る人は、古い肌着などでふき取り布を作るとよい(30枚ほどあると洗い替えできる)

●温水洗浄便座

・原則として排便時のみで排尿時には使用しない
・水流を強くしない
・当てすぎない(1回に10秒程度)
・尿道口や腟に直接当てない、ビデは使わない
・排便の前に肛門を刺激しない
・かゆみ、ムズムズ感、痛み、炎症などのあるときは、温水洗浄はしない

●洗い方

・一日1回、お風呂でよく洗う
 沁みない洗浄剤(弱酸性、赤ちゃん用ボディソープなど)を使い、指を使ってていねいに優しくすすぐ
・痔のケアには浴槽でよく温まる

●スキンケア・下着

・外陰部や腟粘膜に適した保湿剤を使う
・綿・絹のきつくない下着を使う。くいこむ下着、スパッツなどはかゆみ、炎症、黒ずみなどの原因
・症状のひどい人は下着の洗濯に洗濯石けんを使用し、合成洗剤や柔軟剤を使用しない
・おりものシートを漫然と1日中あてることはしない。使いすぎは蒸れや炎症のもと
・尿もれパッド、生理用ナプキンは肌に合うものを使う。月経時だけかゆみが出る人は、製品を変えてみる
・腟のかゆみ止め、腟カンジダ用の塗り薬は自己判断で使わず、婦人科、泌尿器科、皮膚科に相談を

(南雲 つぐみ/週刊文春WOMAN 2019GW号)

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