元広島・梵英心が“苦しんでいる”田中広輔に伝えたいこと

文春オンライン / 2020年9月2日 11時0分

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田中広輔 ©文藝春秋

 皆さん、初めまして。元広島東洋カープの梵英心です。

 2017年のオフにカープを退団した後は、社会人野球のエイジェックでプレーを続け、昨年現役を引退しました。現在は広島県福山市にあるJFE西日本野球部のコーチとして日々奮闘しています。

 エイジェック時代は栃木に住んでいて、年末年始くらいしか広島の実家に帰る機会はありませんでした。なので、今年の2月中旬から社員寮に泊まり込みでチームに帯同しているのですが、食堂に行くと選手たちがカープ中継を見ていたり、街中で買い物とかしていると声をかけていただくことも多くあり、そこで“広島だなぁ”と改めて実感しています。

 選手からも「菊池(涼介)の守備ってやばいですか?」「西川(龍馬)のバッティングってやばいですか?」「鈴木誠也ってやばいですか?」といったことを聞かれ、「そりゃやばいに決まってるでしょ」といったやりとりをしたり、上本崇司と一緒にプレーしていた選手や、他にも誰かの先輩後輩だったりする選手がいたりするので、必然的にカープの話題になることは多いですね。

田中広輔に今だからこそ伝えたいこと

 さて、今回は田中広輔について話していきたいと思います。

 社会人卒、ショート、一番打者、盗塁王、選手会長、膝の故障……。僕と共通点が非常に多い選手なので、気になってしまう存在です。

 正直なところ、今シーズンの広輔はかなり苦しんでいます。チーム状態が良ければ、多少数字が悪くても、ある程度ごまかしは効くと思います。しかし、チーム状況が悪いと、なかなか変わるきっかけを掴みにくかったりと厳しいはずです。

 監督、コーチ陣が入れ替わり、3連覇のメンバーも勤続疲労で調子が良くなかったりと、チーム環境が大きく変わった今。そんな中で選手会長になったということで、やっぱりチーム状況が良くないと、モヤモヤしてしまうこともあると思います。

 僕が現役時代だった頃は、今とは状況が全く違いました。優勝争いから遠ざかっている中で回ってきた選手会長のバトン。一方で、広輔は常勝チームで、黄金期と言われている中で回ってきた選手会長のバトン。違うプレッシャーがあって当然なので、苦労が想像できます。

 自分のこと、チームのこと、野球界のこと、たくさんのことを考えないといけない立場。大変だとは思いますが、それでも必ずこの経験が生きてくるときが来ると思います。今は辛抱のとき。かと言って、あまり一人で抱え込まないでほしいですね。周りの選手をもっと頼って良いと思います。

この苦しさを乗り越えた先に

 昨年8月に右膝の手術を受けたというところでも、僕の現役時代と重なります。

 手術後にベッドで横になっているときは、毎日不安でした。もう走れないんじゃないかな、プレーできないんじゃないかな、ということばかり考えてしまっていました。

 そんなとき、リハビリテーションのおじいちゃんおばあちゃんから「膝痛いのに大変ねぇ」「頑張ってね、応援してるよ」というあたたかい言葉をもらって、気持ちが楽になったのを覚えています。あとは、リハビリに来ている子どもたちもたくさんいたので、自分がまた活躍するとこで良い刺激を与えられたらいいなとも思えました。

 極端に言えば、半月板損傷というのは、アキレス腱や靭帯の故障に比べたら、大きなものでないです。なので、そこはどうにか割り切って、気持ちを腐らせずに練習に取り組んでいました。

 広輔の守備の動きなどを見ている限り、あまり違和感はありません。ですが、プレーしていて全く気にならないという状態ではないと思います。感覚的に、本人はそこまで気にしていなくても、体は痛いときのことを覚えているんです。それで勝手に制御をかけてしまうというか。走っているつもりでも走っている感覚がなかったり。踏み込んでいるつもりでも、体がストップをかけて踏み込めていなかったり。そういうことが僕自身あったので、それをなくすための取り組みに苦労しました。

 それでも、故障があったからこそ気が付くことができたこともありましたし、これまでと違った角度で野球に関して見ることができるようになりました。

 年齢もまだ31歳と、野球選手としては一番良いとき。この苦しさを乗り越えることができたら、必ずまた活躍できる未来が来るはずです。今は数字にはとらわれないように。そして、チームのためはもちろんだけど、自分のために頑張ってもらいたいですね。

 そして、現役時代はライバルというポジションというのもあり、プライベートで一緒に食事に行く機会というのはありませんでした。なので、できることなら、そのうち一緒にテーブルを囲んでゆっくり野球の話をしたいですね。

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(梵 英心)

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