中学受験「フェイク学力」にご用心!偏差値60の6年生が50台前半に急落した理由は…親?

文春オンライン / 2020年8月31日 11時0分

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習い事として根強い人気のある「そろばん」 ©iStock.com

 中学受験勉強で努力が結果に結びつきやすい子どもと苦戦続きの子どもでは何が違う? そして小学校高学年で失速してしまう「フェイク学力」とは――? 最新刊『 中学受験の親たちへ 子どもの「最高」を引き出すルール 』(大和書房)の共著者、カリスマ家庭教師の安浪京子さんと教育ジャーナリストのおおたとしまささんが“ガチ議論”しました。

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中学受験には公文とそろばん、どっちが有効?

おおた 中学受験を前提として、基礎学力をつけるには公文かそろばんか――って昔からあるテーマですね。

 そろばんは、「そろばん道場」というように一種の「道」であって、勉強とはちがう集中力とか“ゾーンに入る経験”などが得られると思うんです。そこは、公文にはないそろばんの魅力であり神秘的な部分ですよね。

安浪 道場は「しつけ」てもくれますしね。

おおた 一方で、コロナ休校のようなときには、公文の良さが発揮されると思います。好き嫌いは当然あるけれど、一応、例題を見てマネして数をこなすという作業で進めることを前提にしているから。

安浪 1人でできますしね。私は、母親が公文の先生をしていたので「公文っ子」なんですよ。小4で高校教材を解いていたんですけど、そのせいで、いわゆる算数ができなくなったみたいで……。公文はパターン学習だから思考力がいらないんです。

おおた 公文は代数の計算問題をいかに効率よく解くかに特化してつくられたメソッドですからね。

安浪 だから私、「数量」の分野に弱いんです。数字はあくまで「数字」であって、「数」という量的概念を持たずにきたので、男子最難関校の数量分野の問題、今でも苦手なんですよ。

おおた へえ、きょうこ先生が、実は……。

安浪 今は何十年もやってきたから解けるんですけどね。

おおた 以前、僕が公文の本を書いたとき、「3年生までにF教材(小学校6年生相当)」と書いたんです。というのも、F教材は分数と小数の四則計算なので、中学受験で有利な条件として働かせるのなら、塾に入る前までに、欲をいえば3年生までにという意味なんですが、どうでしょう?

安浪 3年生でF教材を終えるような子はそれなりに優秀です。そういった子は、公文があってもなくても上位校に入れる素養があり、そもそも「公文そろばん論争」は必要ないと思います。

おおた なるほど。

安浪 あと、計算はやらないと忘れるんです。今、教えている6年生の男の子は、1年生でG教材(中学1年生相当)まで進んでいたんですが、しばらく公文を休んでいる時期があって、5年生から私が中学受験算数を教え始めたら「通分」を忘れていました。計算も英会話と同じで、やらないと忘れてしまうんです。そういう意味では、早ければいいってものでもないですね。

ライトノベルでは国語力は身につかない?

おおた 計算力と並ぶ基礎学力といえば、国語の「読解力」ですが、読書と読解は別だとよく言われますね。

安浪 「読書しないから、ウチの子、国語ができないんです」とみなさん言われますが、結局、国語で点数をとるのは読解技術だよ、という話なんですけどね。

おおた とはいえ、小さい頃から本を読むのが苦じゃない子は、テストで有利だろうなと思いますね。それは当然で、ペーパーテストが、印刷された活字を読んでそれに対して文字で解答する、紙の上でのコミュニケーションを前提としている以上、文字を読むことに慣れているのは有利。サッカーするうえで足が速いと有利になるのと同じくらいの、ベースの力としてね。

安浪 たしかに、それはあると思います。ただし、読書といっても、国語の点数を上げたいなら何でも読めばいいってもんじゃない。入試に直結するのは、ライトノベルじゃなくて文学作品です。ライトノベルは登場人物が小学生や中学生が多く、自分の生活範囲と一緒だからわかりやすい。でも文学作品は、主人公がおじいちゃんだったり、時代設定が戦時中だったりして、やたら想像力を働かせないといけない。

 過去問や塾のテキスト、公文などの国語の教材がいいなと思うのは、自分で読むものを選べない、ということなんです。与えられたものを想像力を駆使して読むから、ありとあらゆるジャンルのものを読む訓練になっていくんです。過去問には、小説から随筆や詩まで、いろんな内容が載っていておもしろいですよね。

おおた 過去問集は本当におもしろいですね。ちょっと興味のある学校の過去問を読んでいて、「あっ、ここの学校の問題ってなんか楽しい」と子どもが感じられることは、かなり重要だと思います。いや、「楽しい」とまではいかなくても「あんまりイヤじゃないな」と感じられればいい。それは学校に入ってからも、その校風になじみやすいかどうかのリトマス試験紙的なものじゃないかと思います。

安浪 はい、それはありますね。「コロナ休校中、時間があるから、いろんな学校の過去問を解いて“相性”を見たほうがいいですか?」という質問がわりとあったんです。

 でも、1つ言わせてもらいたいのは、過去問を解いて、相性がよいか悪いかがわかるのは、ある程度の学力が完成する6年生の秋以降ということ。すごく行きたい学校があって、どうしてもそれより早い時期に過去問を見てみたいのであれば、国語の問題に親が目を通すこと。国語でどういう文章を出しているかで、その学校のスタンスがわかります。

好成績なのに…失速する「フェイク学力」とは?

おおた 小学校のテストで何点とれれば中学受験に「参戦」できるか――というテーマもありますが、目安としては、ほとんど100点で、たまに80点をとるくらいでないと上位校を目指すのは厳しいというのは現実だと思います。

安浪 80点とれないような子は中学受験をする資格がないかというと、それはちがうんじゃないの?というところもあると思いますけど。

おおた はい、その子の中学受験のあり方を理解してくれる人さえいれば、その子なりの中学受験の伸び方ができるはずです。

 中学受験するか、高校受験するかは、結果的にどちらが偏差値の高い高校に入れるのかという価値観に落とし込まれやすいけれど、「子どもに合った学校に入れればいい」という受験をするのであれば、どちらにしてもやり方はあると僕はとらえています。

安浪 子どもの学力が伸びる時期もまちまちで、4年生あたりは学力をはかるのが難しい時期ですからね。

「うちの子、算数ができないんです」とG君のご両親に相談されたのは5年生の春。算数の偏差値は40でした。実際にG君を指導してみると、考え方の道筋を示されれば「あ、そういうことか」と自力で解き進めていき、「こういうふうにも考えられるよね」と別解をどんどん見つけ、自分の言葉で説明してくれます。「実際は60近いポテンシャルがある」という手ごたえどおり、最終的に難関校を受験するまでに至りました。

 一方、最難関校を目指しているMちゃんは5年生の終わり頃まで偏差値が60近くありましたが、解法を丸暗記して基礎が脆弱な、いわゆる「フェイク学力」。6年生の内容はどんどん高度になるし、暗記で太刀打ちできなくなるよとさんざん伝えましたが、勉強の仕方を変えないままどんどん成績が下がっていき、最終的に偏差値50台前半に落ち着きました。

おおた たぶんMちゃんは丸暗記の勉強法をするしかない子だったんでしょうね。Mちゃんは、中学受験で難関校に入るような学力をつける勉強スタイルには向いていない子だったんだろうなと思う。そういう個性をもともと持っていた。

安浪 真面目で黙々と勉強するタイプですね。

おおた そう、真面目だからこそ、一生懸命、目先の点数をとることをがんばって、それが裏目に出ちゃった。

「丸暗記の勉強法をする子にも2種類います」

安浪 このMちゃんみたいな子はけっこう多くて……。実は、こういう子ほど、しっかりと丁寧に教えればちゃんとできるんです。勉強のやり方を知らないだけだから、プロをつけて基本からやり直すとか、塾でいい先生に出会うといった「ちがう勉強のやり方」を教えてもらうことがカギになるんです。

おおた なるほど。僕はどんな勉強法をしていても、それを1つの個性と認めるといった話をしましたが、でも一方で、単に勉強法を知らないだけかもしれない。指導さえ受ければ変わるかもしれない、と。

安浪 変わるんです、こういう子たちは。

おおた ただ、このMちゃんの勉強法が個性ではなくて、親が目先の点数をとらせることに一生懸命になっているから子どもがそうせざるを得なくなっているとしたら、それは不幸だと思います。

安浪 実際のところ、親が目先の点数をとらせようとしてやっているんです。

おおた そうですか……。

安浪 丸暗記の勉強法をする子にも2種類います。親がやらせている子と自分で考えてやっている子。この両者では、中高に上がったときに学力の伸び方がちがうんですよ。

おおた そうなんですか!

安浪 中学受験でどちらの子が受かりやすいかというと、親がやらせている子です。最難関校を目指して猛勉強させる家庭は、この「力技」で難関校に案外合格させることができちゃったりするんです。

 でもこのやり方の一番不幸なところは、中高に入ってもその「力技」の勉強法をし続けないと、点がとれないということ。子どもは中学に入ってもこの勉強法をさらに加速させないといけないから疲れ果ててしまう。反抗期も始まるし、本当にかわいそうです。結局、学校をやめたり、大学受験で3浪、4浪したりしてしまうんです。

 一方、「暗記勉強法」を自分で確立してきた子は、先生であれ本であれ、正しい勉強の仕方と出合って軌道修正をかけることができます。特に、主体性が育つ中学校時代に自分の力で勉強方法を確立できるのは大きな財産ですよね。

(おおたとしまさ,安浪 京子)

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