《ジャニーズの正統派》少年隊の「女性を抱かない」不器用なアイドル像が、私たちをときめかせた

文春オンライン / 2020年10月2日 17時0分

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少年隊

 9月20日、少年隊の錦織一清(55)と植草克秀(54)が年内いっぱいでジャニーズ事務所を退所するとファンクラブサイトなどで発表したことが、多くの人に驚きをもたらした。東山紀之(54)は残留となる。

 現在のジャニーズ事務所は17組のグループ、14名のソロアーティストと約300人のJr.たちで構成されている。近年、SMAP解散騒動や「新しい地図」をめぐる独占禁止法違反の疑惑、嵐の二宮和也の結婚騒動、元TOKIO・山口達也の逮捕など、ジャニーズ事務所をとりまく状況はめまぐるしく変化している。そんななかで今年35周年を迎える最年長グループ少年隊は、後輩タレントたちにどのような影響を与えたのか。

「歌って踊れて立ち振る舞いも美しい、そんな“ジャニーズの帝王学”を受けてきたのが少年隊なのだと思います」

 そう語るのは、自らもファンとして四半世紀以上ジャニーズを応援し、 “ジャニヲタ・エバンジェリスト(伝道師)” として「ジャニヲタあるある」(アスペクト)、「ひみつのジャニヲタ」(青春出版社)、共著で「大人のSMAP論」(宝島社新書)などを上梓しているみきーる氏だ。少年隊が後輩に残したものとは。みきーる氏に話を聞いた。

◆◆◆

 錦織さんと植草さんの退所報道には大変驚きました。またいつか3人のステージを見ることができると信じていたからです。

 今の若いジャニーズファンの方々にとって、少年隊はもはやお父さんのような存在かと思います。しかし今のJr.や若手のグループにも少年隊が築き上げた伝統は脈々と受け継がれています。それは、少年隊が“ジャニーズの帝王学”を受けた特別な存在だったからにほかなりません。少年隊の功績と、今のジャニーズタレントが少年隊からどんなことを受け継ぐべきなのか、この2点を明らかにしていきたいと思います。

ジャニーズになかった「ジェントルな男子路線」

 少年隊は、1985年にデビューしました。彼らに先んじて3人組で人気を博したのはたのきんトリオやシブがき隊ですが、いずれも女子をキュンとさせるオラつきや、ちょっとした“不良み”も魅力だったグループです。そんななか少年隊は、かつてない“ジェントルな男子“というイメージを打ち出してきました。

「オレはつけこんで彼女を抱こうと……いけない!」

 特に印象深いのは、フジテレビ系「月曜ドラマランド」という枠で1983年に放送された「胸さわぎの放課後」というドラマです。たのきんトリオが「3年B組金八先生」(TBS系)、シブがき隊は「2年B組仙八先生」(TBS系)に出演し、なにがしか問題のある生徒を演じていたなかで、少年隊(当時はジャニーズ少年隊)が出演した「胸さわぎの放課後」は、さわやかな学園ドラマであり、高校生の男女が憧れる等身大の恋愛を描いたものでした。

 本作で少年隊は日本の男の子たちが恥ずかしいものとして捉えていた「不器用でも、女性の気持ちに優しく寄り添う男子」を演じ、ジャニーズファンではない女性たちをもときめかせました。

 作中、万引きの嫌疑をかけられて悩むヒロインをグッと抱きしめる……のではなく、「今、彼女は弱って自分を頼っている。そしてオレは、それにつけこんで彼女を抱こうとしている。……いけない!」とふみとどまって、本当に彼女のためになることをする。そんな、紳士で愛すべき現代の“王子さま的ジャニーズアイドル”の基本形が、ここで初めて築かれたのだと、私は考えています。

舞台プレゾンで「ジャニーさんが目指したアイドルそのもの」に

 そして少年隊が後輩に残した最も大きな功績のひとつが、1986年から始まった夏の恒例ミュージカル「PLAYZONE(通称・プレゾン)」です。

 ウエストサイドストーリーなどのブロードウェイミュージカルに傾倒していたジャニーさんにとって、自らが擁するタレントたちに舞台を実現させるのは長年の悲願でした。そのため、少年隊は実際にブロードウェイのミュージカルを生で鑑賞したり、マイケル・ジャクソンの代表曲「スリラー」の振付師マイケル・ピータース氏や、「THIS IS IT」の振付師トラヴィス・ペイン氏を招いた本格的な舞台の英才教育を受けています。もちろん歌唱力も徹底した指導を受けて磨き上げ、その結果、少年隊は歌も踊りも完璧な、ジャニーさんが目指したアイドルそのものに育ったのだと思います。

 鍛練を重ねたパフォーマンスのお披露目の場として、デビュー翌年から毎年行われたのがプレゾンでした。年ごとに演目は異なりますが、確かな基礎に裏打ちされた演技とダンスが圧巻で、少年隊主演の23年間のうち観客動員数は約138万人を記録したそうです。そのためプレゾンはジャニーズのなかでも特にダンスに秀でた出演者が集まる伝統的なショーとして、2015年まで計30年間続くことになります。

 まさに、少年隊は“ジャニーさんの夢そのもの”のようなグループ。「胸さわぎの放課後」を皮切りに女性にスマートに添う恋人像を、プレゾンではダンスの英才教育による洗練された身のこなしを、そして長年にわたる“座長経験”を経てきた少年隊は、“ジャニーズの帝王学”を受けた存在と呼べるのではないでしょうか。それこそが、少年隊が50代になった今もアイドルとして尽きぬ可能性を秘めている所以です。

伝説となった「青山劇場での“お見送り”」

 少年隊のスマートさを象徴するこんなエピソードがあります。少年隊は2008年の舞台を最後にプレゾンの主演を退いていますが、この最後の公演で彼らはタキシードでお客さまをお見送りするというサプライズをもたらしました。青山劇場のエントランスで正装した3人がパフォーマンスしてくれたのですが、あまりの素敵さから、熱湯をかけられた綿菓子のように一瞬で心を溶かされてしまうファンが続出。その後も語り継がれる伝説となっています。

 後輩が主演を受け継いだあとのプレゾンでも、今井翼さんやKis-My-Ft2、中山優馬さん、A.B.C-Zなどタキシードを着たイケメンが総出でアーチを作り、その間を通ってお客さんが帰る“お見送り”は、恒例の行事にもなりました。正装した“推し”が間近で微笑んでくれる“お見送り”の威力は、想像を絶するものがあります。このお見送りが「アイドルに対してひときわ高い高揚感や、愛とも恋とも言い難い特別な感情を抱くようになったきっかけ」だというファンも少なくありません。

「大人アイドル」の象徴としての少年隊

 このように、現役時代の少年隊が礎となって作ったジャニーズの正統派文化は、後輩にきちんと受け継がれています。しかし、少年隊が後輩に与えた影響はこれだけではありません。少年隊は後輩たちにとって、「近未来の象徴」でもあると私は思っています。

 現在は若くキラキラ輝いているKing & PrinceやSixTONES、Snow Manのようなグループも、10年、20年と活躍していくと、さらに若い世代のグループが現れ、大人アイドルとして彼らをリードする立場になります。そんな日が来たら、どう振る舞うべきか。それを後輩たちに示しているのが少年隊の3人です。

堂本光一主演「Endless SHOCK」で代役を果たした植草

 東山さんは今でも事務所のレッスン場に姿を現し、後輩たちを見守っていると聞きます。東山さんのトレーニング道具を見た後輩が、「お借りしても良いですか?」と尋ねてきたときは「もちろん!」と出し惜しみせず、華麗なポージングまで決めて快く貸し出してくれたとか。そのカッコイイさまをモノマネする後輩も現れ、愛される先輩としてのエピソードは、ファンのなかでも有名です。ベテランになっても気を抜かず、どんなときでもアイドルでいることを、東山さんに学ぶ後輩も多いでしょう。

 植草さんは、「先輩は、後輩の爆弾処理班も買って出る」という姿勢を見せてくれています。2015年の堂本光一さん主演の舞台「Endless SHOCK」で、植草さんは怪我で降板された前田美波里さんにかわって1日で台本を覚え、見事代役を果たしたことがありました。先輩はどんなことがあっても後輩のピンチを救う存在であれ、という気概を示してくれたのではないかと思います。

私が垣間見た“リアル錦織”の器の大きさ

 錦織さんは主に舞台演出や脚本家として活躍しています。つい最近では、A.B.C-Zが主演する10月23日公開の「オレたち応援屋!!」という映画(原案)の演出を担当しています。ステージ上だけでなく、さまざまな形で作品には関われるのだ、ということを錦織さんは後輩に示してくれているのではないでしょうか。

 余談ですが、私は以前お仕事で錦織さんとお会いしたことがあります。音楽関係者や舞台関係者の方が大勢集まる打ち上げだったと記憶しているのですが、その時に錦織さんは周囲の人に常に気を遣いながら、軽食を振る舞ってくださったり話で場を盛り上げてくださいました。誰に対しても分け隔てなく面倒見良く接してくださり、威張る様子が微塵もない錦織さんを見て、ジャニーズという大きな組織で、後輩たちから常に見上げられる存在で居続ける人の器の大きさを感じたのをよく覚えています。

 植草さんと錦織さんが退所してもグループ名が存続となることが話題となりましたが、私はグループ名やその概念は、メンバーと同じく“ひとりのアイドル”だと思っています。休止するから、解散するからといって誰かが“消す”ことなどできないし、姿は変わっても生き続けるのではないでしょうか。

 “少年隊”もそう。少年隊は、これまでと同じ“輝き”でなく、先輩らしいスタンスのとりかたや「未来」の姿まで後輩に示し、ジャニーズがこれからも長く続いていくための道しるべとなる存在だと思います。彼らが築いてきた伝統を若手がどのように受け継いでいくのか、ファンとしては非常に楽しみです。

(みきーる/Webオリジナル(特集班))

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