日本人グループ「NiziU」は韓国で愛されているのか? 「K-POPか、J-POPか論争」現地レポート《12・2デビュー》

文春オンライン / 2020年10月2日 17時0分

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韓国のファンもSNSなど限られた情報を通じてNiziUに注目している(NiziU公式Twitterより)

〈『Make you happy』のMVを見ました。とても可愛くて、さわやかで、きれいで…! NiziUの魅力に落ちました^^。YouTubeで見つけたコメントはみんな海外のファンか、日本のファンだったので、韓国のファンコミュニティが存在するということだけでとても嬉しいです〉

 これは、韓国のNiziUファンが集まるサイトに投稿された入会の挨拶だ。いよいよ12月2日、正式にデビューすることが決まって日本で人気が過熱しているNiziUだが、韓国での活動はほとんどない。そのため、韓国の大手検索サイト「NAVER」でNiziUのファンクラブを検索しても、3つのサイトしか出てこない。会員数は合わせて300人を下回る。

 しかし、韓国人ファンのNiziUへの情熱がないわけではない。

 冒頭で紹介したNiziUファンサイトには、毎日数十件の書き込みがある。日本で販売されているNiziUグッズの購入方法、NiziUが出演した日本のテレビ番組の韓国語字幕の共有など、ファンにとっては貴重な情報で溢れている。いまは正式デビューを目前に控えたNiziUを応援するためのイベント開催についての議論で盛り上がっているのだ。

NiziUの一挙手一投足を追う投資家たち

 韓国では、熱心なファンたち以外にも、NiziUの一挙手一投足に大きな関心を持っている人々がいる。株式投資に熱を上げる韓国の若者たちだ。

 NAVERの「株討論コーナー」など株式投資コミュニティでは、NiziUを生み出した「JYPエンターテインメント」株へのNiziUの貢献度についての分析が盛んに行われている。

〈現在時点で、今年3月の最安値比2.5倍上昇。目標価格は5万ウォン以上。時価総額2兆ウォン突破の可能性が高い!〉

〈JYPエンターの株はNiziUの正式デビュー前の今が一番安い! 目標価は5万ウォン以上です!〉

〈NiziUに対する日本反応は一大センセーションですね。11月中に6万ウォン行けると思います!〉

 JYPエンターテインメントは、今年7月に時価総額1兆ウォンを達成。先行していた少女時代を生み出したSMエンタテインメント、BIGBANGのYGエンターテインメントを抜いて、韓国市場のエンターテインメント株のトップ銘柄へと躍り出た。

 JYPエンターテインメントの創業者で、NiziUのプロデューサーのパク・ジニョン氏は8月12日、MBCテレビに出演し、時価総額1兆ウォン達成は「NiziUのおかげ」と、NiziUの貢献度を高く評価した。

Zeebraの不倫スキャンダルの影響も

 一方、手放しでNiziUを評価する株式市場とは違い、韓国の音楽シーンでは、その評価が分かれている。

 もっとも目立つのは、メンバー全員が日本人であることを取り上げ、昨年夏から悪化している日韓関係とからめた議論だ。

 日刊紙「MONEY TODAY」は、NiziUのメンバーが選ばれて間もない6月30日付で、次のように報じた。

〈NiziUの正式デビューが迫り、オンラインコミュニティでは国籍論争が繰り広げられている。NiziUは果たしてK-popか、J-popか、という論争だ。(中略)反応の中には、NiziUをJ-popと規定し、反感を示す意見もあった。韓国の企画会社が全員日本人でガールズグループを作ったことが問題だという指摘だ。音楽サイトが、NiziUをJ-popに分類した点を挙げて、不買運動の主張も出ている〉

〈昨年、JYPがNizi Projectを行った際も“親日”議論が起こった。日本との協業によるK-POPの技術流出に対する懸念や「日本にだけいい思いをさせている」という批判が相次いだ。これは昨年から続いている反日感情の延長線上にあると受け止められる〉

 さらに8月下旬になって、NiziUのメンバー・リマの父親で、ラッパーのZeebraの不倫スキャンダルが報じられると、韓国のネット上では、リマのルーツをめぐる議論が起きた。

〈オンライン上で最も話題になったのは、リマの父方の曾祖父で、Zeebraの母方の祖父である横井英樹だった。(Zeebraの)熱愛説を報じた日本メディアは、Zeebraを“戦争成金”の企業家・横井英樹の孫だと説明したが、横井英樹は第2次世界大戦のとき軍服製造会社を設立し、日本軍に軍服を売って富を蓄積し、その後、不動産、海運業などで大金持ちになった人物だ」(韓国経済ドットコム、8月27日)

 この報道を受けて、韓国のネットユーザーの意見も割れているという。

〈ネット民の意見は錯綜している。一部では「リマまで連座制で烙印を押すのは無理がある」という意見がでているが、「K-POPグループとして活動するには致命的」との意見も出ている〉(同前)

K-POPのシステムを“日本に売り渡した”?

 JYPのパク・ジニョン氏は、先に紹介した番組で、NiziUをめぐるこのような論争に対して、次のような考えを語ったことがある。

「否定的な世論が広がったときには戸惑いましたが、彼女らは外国人(で構成された)グループだが、外国グループとは言えません。(中略)NiziUの9人は全員、わが社と契約しているわが社所属の歌手です」

「全員韓国人のグループにしろ、もしくは韓国人が50%以上のグループにしろ(とよく言われますが)、そうすれば、私たちの成長に限界が生じてしまいます」

 音楽専門のウェブマガジン「イズム(IZM)」所属で、大衆音楽評論家のファン・ソノプ氏は、この論争について次のように分析する。

「今の段階では、NiziUの存在は韓日間の対立を解決する要素ではなく、むしろ対立を誘発する“ホット・ポテト”(困難な問題)となっています。韓国では、K-POPの優秀なシステムを“日本に売り渡した”と考える人も少なくない。NiziUが正式デビューして、もし韓国語バージョンのシングルをリリースすることになると、韓国人の中には『日本人なのにK-POPだと偽装した』と反感を持つ人も出てくるかも知れません」

 YouTubeで大衆音楽チャンネル「ジャスト・ポップ」を運営する音楽評論家、チョン・ミンジェ氏も、韓国でのNiziUの活動に悲観的な立場だ。

「韓日関係が今のように悪化する前に合流したTWICEのサナ、ミナ、モモや、NCTのユウタなどの日本人メンバーは、デビューした時も韓国ファンの反感は大きくなかった。しかし昨年7月以降、急激に悪化した韓日関係を考慮すると、NiziUが韓国大衆の感情をすぐに克服するのは難しいとみています」

NiziUはK-POPの最終形

 しかし、NiziUが世界的なアイドルに飛躍するためには、K-POPの本場である韓国の音楽シーンを攻略することが不可欠。NiziUが韓国で活躍するためには、どんな戦略が必要なのか。

 前出のファン氏は、様々なコンテンツを開発して積極的に発信すべきだとアドバイスする。 

「韓国のオーディションはセミプロの事務所所属の練習生らが参加しますが、『Nizi Project』には純粋なアマチュアの参加者が集まりました。日本のNiziUファンは、その純粋さや明るさで夢を追いかける“アマチュアの成長物語”に感情移入しましたが、韓国ではその効果は期待できません。それゆえ韓国では、さらに積極的なコンテンツ開発が必要です。既にJYPが取り組んでいる日韓の字幕付きのSNSなどに加えて、波及力を考えたらメジャーメディアの活用も必要不可欠。そのときに最も大事なことは、韓国ファンの機嫌を取るような『みんなに愛される戦略』ではなく、堂々と自分らしさを見せる『確実なファンを作る戦略』を取ることです」

 最後に、チョン・ミンジェ氏は、NiziUの成功にかける日韓両国の期待について、次のように語る。

「NiziUの音楽性や資質は既存のアイドルグループに比べて決して劣らない。しかし、韓国マーケットで成功するためには、まず韓国語が上手でなければならない。韓国では音楽番組に出演しただけでは成功できない。K-POPの主なファン層である若者が好むバラエティー番組に出演して人間的な魅力をアピールし、話題を作ることが重要だからです。

 その結果、NiziUが日本で認められた後、韓国に“逆輸入”されて成功すれば、日本としては自国出身アーティストが世界的に認められるという点で喜ばしい。さらに韓国としては、パク・ジニョン氏やイ・スマン氏らが10年前から計画してきた『K-POPの3段階戦略』の最終形にあたる“韓国人のいないK-POP”の成功という快挙として受け入れられる。NiziUをめぐる『J-POPか、K-POPか』といったアイデンティティ論争は不毛です。世界中で認められているK-POPの本質は、国籍や言語ではないのです」

 筆者もK-POPを愛する一人のファンとして、日本人のみで構成されたNiziUが、K-POPの「希望の星」として浮上してくる日に期待したい。

(金 敬哲/Webオリジナル(特集班))

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