伊勢谷友介「入手ルート黙秘」でも釈放されるのはレアケース 裁判所が認めた理由とは?

文春オンライン / 2020年10月4日 20時0分

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保釈され、警視庁東京湾岸署を出る伊勢谷友介被告(9月30日夜、東京都江東区) ©時事通信社

 起訴・釈放を受けて一段落したかにみえる伊勢谷友介の大麻所持事件。だが、肝心の入手ルートについて口を閉ざしたまま釈放を勝ち取ったのは、最近の芸能人の薬物事件ではかなりレアケースだ。歌手のASKAなどは入手先についても「自供」したうえで釈放を勝ち取ってきたようにもみえるが、果たして釈放の判断を下した当局は何に忖度したのか。

 9月30日夜、警視庁東京湾岸署を出る釈放後の伊勢谷友介被告に大量のフラッシュが焚かれた。もはや見慣れた光景といっていいだろう。思いつくだけでもピエール瀧(コカイン使用の罪で有罪)、ASKA(覚醒剤など使用の罪で有罪)など。報道陣が撮影しやすい位置にわざわざ歩を進め、頭をゆっくり下げる所作まで同じだ。

 車両に乗る直前にユーチューバーが駆け寄って警察に連行されたところだけは従前と違って時代の変遷を感じさせたが、その後、報道が沈静化するところも過去のパターンを辿っているようにもみえる。

留置場にいて、身体拘束を受けるなかで

《私は無責任極まりない甘さで、自分をそして自分と一緒に活動してくれている方々を、さらに世間の皆様を裏切ってしまったことを今、留置場にいて、身体拘束を受けるなかで、噛み締めています。すべては私自身の奢り、未熟さや愚かさ、役者、及び経営者としての責任感の欠如により引き起こした事態です》

 釈放にあわせて発表された本人の直筆メッセージもある程度共感を呼び、沈静化に貢献したようだ。

 後は公判まで報道も小休止、というところだろうか。「そもそも伊勢谷友介は沢尻やASKAほどお茶の間に近くなく、報道もそこまで盛り上がらなかった」。警視庁担当記者はそう述懐する。

 だが、ピエール瀧やASKAとの違いはもう一つある。伊勢谷被告は大麻の所持については認めていても、入手ルートについては一貫して黙秘しているのだ。

“新宿の薬局”を壊滅させた「ASKA供述」の破壊力

 ピエール瀧もASKAも、沢尻エリカ(MDMAなど使用の罪で有罪)も、逮捕後は入手ルートについても当局に打ち明け、実際、入手先と疑われた先も逮捕されるなどしている。

 特に圧巻だったのはASKAの捜査だろう。ASKAが2014年5月に逮捕されると、同年9月、警視庁がASKAの入手先の一つとされた指定暴力団住吉会の3次団体「大昇会」を家宅捜索。15年6月までに組幹部ら20人以上を逮捕し、組織を壊滅的状態にまで追い込んだ。

「大昇会」はただの3次団体ではない。上部団体は住吉会で「最強」とされる幸平一家。新宿・歌舞伎町に拠点を構え、「薬物なら何でもいつでも供給できた」(捜査関係者)。「新宿の薬局」とも呼ばれ、薬物関係者では知らぬものがいない一大供給拠点となっていた。19年にはそのトップも逮捕された。ASKAの供述がそのきっかけのひとつとなったわけだ。

暴力団捜査につながるからこそ黙秘した?

 常習者となっていたASKAの入手ルートは一つに限らない。15年には日本最大の指定暴力団山口組のなかでも最大の2次団体「弘道会」の傘下組織の組員もASKAへの覚醒剤供給に関与したとして逮捕されている。

 山口組、住吉会という2大暴力団の、それぞれ最大の2次団体の捜査につながったASKAの供述の破壊力は相当なものだ。

 それにひきかえ、伊勢谷被告は……といいたいところだが、逆に入手ルートの供述が暴力団の捜査につながるからこそ、伊勢谷被告は供述を控えているとも考えられる。

密売7割が暴力団……「報復の恐れ」

 実は、薬物の所持・使用などで逮捕された容疑者が入手ルートについて明かさないことは、珍しいことではない。

 司法関係者は「薬物の売人は実名を名乗ることも少なく、そもそも客は自分が誰から買ったか、わかっていないことも多い。わかっていたとしても、売人のバックには暴力団がいるのが確実で、報復を恐れて供述しないのがむしろ普通」と解説する。

 伊勢谷被告の釈放も相場を大きく外れたものではないということになる。

 警察庁の統計では今年1~6月に薬物事件で検挙された6321人のうち、暴力団関係者は3割以上を占める。密売事件に限れば暴力団関係者の割合は7割近くに上り、入手ルートの供述が暴力団関係者への捜査に発展する確率はかなり高い。ひいては「報復」の恐れも増すことになる。

ピエール瀧や沢尻、ASKAより法律上、罪は軽い

 伊勢谷被告とほかの芸能人の事件との違いには、薬物の種類もある。伊勢谷被告が逮捕された容疑は大麻の所持。ピエール瀧や沢尻、ASKAが手を出したのはコカイン、MDMA、覚醒剤などで、大麻はこれらの薬物よりも法律上、罪が軽いのだ。

 大麻の単純所持罪は最大懲役5年だが、コカイン・MDMAの単純所持罪は最大7年、覚醒剤の単純所持罪は最大10年。しかも、大麻は所持に罰則はあっても個人的な使用に罰則はない。

「大麻は《使用》で再逮捕できない」

 捜査関係者は「大麻は覚醒剤などの薬物と違って使用で再逮捕できないので、勾留期間がそもそも短く、容疑者を『落とす』時間も限られる」と話す。

 選んだ薬物が大麻でよかった、と伊勢谷被告が考えるか、どうか。「入手ルートを明かさなければ芸能界復帰は難しい」とする声も上がっており、問われているのは伊勢谷被告の価値観だ。

(末家 覚三/Webオリジナル(特集班))

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