「反政府運動」というパワーワードが持つ意味 “説明拒否”という力技は外交では通用しない!

文春オンライン / 2020年11月17日 6時0分

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首相の国会答弁の評価は… ©JMPA

 日本学術会議問題は新聞ウオッチャーとしてもたまらない案件なのです。

 たとえば菅首相の国会答弁、これが見事に「評価」が真っ二つだった。

 まず低評価の見出し。

「支離滅裂の答弁」批判も』(朝日新聞10月29日)

揺れる首相答弁』(朝日新聞11月3日)

 次は高評価の見出し。

首相「安全運転」貫く』(読売新聞11月7日)

学術会議論戦 首相崩れず』(産経新聞11月3日)

 どうですかこの「見え方」。首相答弁は支離滅裂なのか安全運転なのか。同じものを見ているはずなのにここまで分かれると壮観!

 ちなみに日刊ゲンダイは菅政権のことを『スッカラカン政権』と書いていますがこれは平常運転です。

スッカラカンにひれ伏す異様な党と腐敗マスコミ』(10月24日付)

所信表明演説 歴史に残るスッカラカン』(10月28日付)

答弁矛盾、無知も露呈 スッカラカンは自壊寸前』(11月6日付)

バイデン大統領でどうなる? スッカラカン政権と日本の行方』(11月10日付)

日本は安倍継承のスッカラカンでいいのか』(11月9日付)

 ゲンダイ師匠は菅首相の国会答弁前から「スッカラカン」がお気に入りの様子がわかる。

 では次。

「WEB配信と紙」というテーマでこの記事について考えてみたい。

「反政府運動」がツイッターのトレンドに

 共同通信の以下のWEB記事。

官邸、反政府運動を懸念し6人の任命拒否』(11月8日)

《首相官邸が日本学術会議の会員任命拒否問題で、会員候補6人が安全保障政策などを巡る政府方針への反対運動を先導する事態を懸念し、任命を見送る判断をしていたことが7日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。》

「反政府運動」という見出しがツイッターではトレンド入り。この記事は削除されたがそのあとタイトルを変えて『官邸、「反政府先導」懸念し拒否 学術会議、過去の言動を問題視か』と同様の内容の記事を配信。

 違いは「反政府運動」から「反政府先導」に見出しが変わったこと。つまり共同通信は記事そのものには自信を持っていることがわかる。

 実はこれ、紙面で読むとかなりわかりやすい。

 共同通信は全国の新聞に記事を配信しているが、たとえば今回の記事を一面で報じた『信濃毎日新聞』を見てみよう。

「反政府」懸念し拒否』『首相官邸、学術会議会員候補の6人 安保や秘密法 言動問題視か』(11月8日)

 リード文はWEBと同じで「複数の政府関係者が明らかにした」とあり、紙面ではさらに詳しく書かれている。

《官邸はこの6人が政府の重点政策に強い反対を打ち出し、国会を含む公の場で積極的に発言していたと判断。》

 さらに、

《今後も同様の主張を続け、学術会議内でも反対運動を主導しかねないとして「公務員としては適任ではない」と考えたという。》

紙面で書かれた更なる「デカい表現」

 続いての2面もすごい。

「思想で排除」隠した本音』と、これまた衝撃の見出し。

《政府関係者は、任命拒否の判断に至った背景に、学術会議を政府批判の先鋭的な集団にさせてはならないとの危機意識があったと明らかにした。》

《特別職の国家公務員である学術会議の会員には、その言動に一定の「節度」が求められる――。任命拒否を発動した官邸側の判断には、こうした強い意識がにじむ。》

 いかがだろうか。2面を読むとハッキリと今回の拒否の理由が6人の「言動」であったことを政府関係者が証言していることがわかる。

「反政府運動」という言葉が強すぎてSNSでは論議になったのだろうが、紙で読むと「思想で排除」とさらにデカい表現が出ていたのだ。そしてこれが正解らしいと。

 ちなみに首相は国会で「安保法などに反対したのが任命拒否の理由ではない」と主張しているのでこの点だけでも問題になる。

 共同通信のスクープはギョッとする内容だが、では菅首相の国会答弁を「世論」はどう見ているのか。

 読売の世論調査(11月10日)は『首相説明「納得せず」56%』だが、首相の説明に「納得できない」とした人でも、菅内閣を「支持する」が59%と半数を超えている。

 このことから『政権運営に与える影響は、今のところ限定的と言えそうだ。』と読売は書く。

 毎日新聞の世論調査で私が注目したのはここ。

《菅政権が学術会議のあり方について見直しを検討していることについては、「適切だ」が58%で、「適切ではない」の24%を上回った。「わからない」は18%だった。野党は「論点のすり替え」だと批判するが、学術会議の改革を求める声も強いことがうかがえる。》(毎日11月8日)

 今回のポイントだ。任命拒否の説明に納得できない人が世論調査でも多いが、政府は学術会議の「あり方」問題を提起してきた。別の話を持ってきて防戦してるように見えた。

 ところがそれが結構な効果を生み『政権運営に与える影響は、今のところ限定的と言えそうだ。』(読売)という「評価」にまでなったのだろう。

勝負あった学術会議問題』(産経11月12日)という記者コラムを読んでも、支持率に響いていないから学術会議ハイハイもう終わり~という雰囲気だが、しかし素朴な疑問がある。

国会では世論調査の結果で説明がいらないのか?

 国会というのは世論調査の反応次第で「説明しなくてもいい」という場所になるのだろうか。視聴率がイマイチだから違う話題にしようというのは民放のワイドショーとかならわかるが、事は「思想で排除」(by信濃毎日)という案件である。

 この振る舞いが説明なしでオーケーとなればそのうち学者だけでなく一般にまで広がってくる怖さがある。実際、6人の学者に教わっている生徒は今「世間」の反応を見てどう感じているだろうか。そこまでケアする必要がある案件ではないのか。

 学術会議ばかりでなく早くコロナをという声もあるが思い出してほしい。モリカケ桜ではよかった振る舞いが緊急事態のコロナではさすがに「過程」を問われたではないか。アベノマスクや一斉休校の過程が丸見えになり、不思議に思われたではないか。コロナ論議を国会でじっくりやるためにも学術会議の説明が必要なのだ。これすらクリアできないとまた不安になる。説明はどんな問題にもついてまわる。

 あと、国内なら力技で押さえこめても外交交渉で同じような答弁力や振る舞いをしていたらつけこまれる。バイデン、プーチン、習近平、文在寅、金正恩らは失態を見逃さないだろうし、ネチネチやってくるだろう。

「説明しない」という問題は日本の国益を考えても心配になる。保守を自負する新聞こそ言ってあげるべきなのである。

 

(プチ鹿島)

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