小池百合子都知事が目指す? 「史上初女性総理」の野望
文春オンライン / 2020年12月26日 6時0分

小池百合子東京都知事 ©文藝春秋
小池百合子(68)には「悪運」がある。
その象徴的なシーンが、1期目の小池都政では3度あった。
2016年8月、小池は都知事就任1カ月で、築地から豊洲への市場移転延期を決定。“暴走”と思われたが、直後に土壌の有害物質を遮断する「盛り土」が豊洲市場でなされていないことが発覚し、“英断”とされた。
19年10月、IOC(国際オリンピック委員会)が東京五輪マラソン・競歩会場の札幌市への移転を突然発表した際は、小池は無駄だと知りながらIOCに徹底的に抵抗。存在感を示した。
そして20年初めのコロナ禍勃発。7月の都知事選を前に、政府・自民党は“政治休戦”を余儀なくされた――。
「女性初の総理」を視野に…
私は著書『小池百合子 権力に憑かれた女 ドキュメント東京都知事の1400日』(光文社新書)の中で、小池がそうした「悪運」を手繰り寄せ、巧みな“政治勘”で権力を維持する様子を描いた。
40歳で国会議員となった小池は、防衛相、総裁選出馬、自民党三役と「女性初」のポジションを切り開いた。「女性初の総理」が視野に入らないわけがない。
だが06年、年齢も当選回数も下の安倍晋三が総理となり、目算が狂う。稲田朋美、丸川珠代ら小池より若い女性議員が台頭し、「ポスト安倍」には小池より5歳下の石破茂と岸田文雄が確実視された。
しかし、小池は終わらなかった。16年、自民党に刃を向けることで「女性初の都知事」の座を手に入れるのだ。
20年7月の都知事選で、小池は歴代2位の366万票を獲得し、軽々と再選された。
メディアの関心は小池の国政復帰、すなわち「女性初の総理」の可能性に移った。小池は「当選したばかり」などと煙に巻いたが、その2カ月後、またも「悪運」が舞い込んだ。
安倍の突然の辞任、そして菅義偉総理の誕生である。
菅は小池より4歳年上。自民党四役に81歳の幹事長・二階俊博以下、平均年齢72歳の「おっさん」が並ぶ姿は、世代交代の針が逆戻りしたことを印象づけた。
新内閣の顔ぶれは派閥均衡、女性登用は2人。かつて小池が揶揄した「おっさん政治」そのものだ。「権力に憑かれた女」は“政治勘”を研ぎ澄まし始めたに違いない。
事実、小池の動きは素早かった。
菅内閣発足の日、小池は知事就任後初めて、来年度の東京都予算をめぐって自民党東京都連と面会して意見交換を行った。自民との雪解けをアピールして見せたのだ。
これは今後の都政を見据えるというよりも、「女性初の総理」に向けた国政復帰への地ならしに思える。
2021年は政局の年だ。
1月、千代田区長選。
7月、東京都議選、東京五輪開催?
9月、自民党総裁選……。
本稿執筆時点で衆議院は解散されておらず、「10月、衆議院任期満了」も書き加えられる。
ターニングポイントとなる都議選
中でも都議選は、小池の残りの政治家人生を占うターニングポイントだ。前回、17年夏の都議選で、小池率いる「都民ファーストの会」が圧勝し、これまで安定した都政運営が行われてきた。だが20年7月の都議補選は4選挙区すべてで自民が勝利。勢いづく自民が、多数を握る可能性は高い。自民を取り込まないことには小池都政は袋小路に入る。
となると、自民政治を否定して議席を獲得した都民ファとの関係をどうするのか。小池は今も都民ファの特別顧問だが、いずれ「二元代表制」など適当な理由をつけ、距離を置かざるをえないだろう。何しろ商標登録までした「希望の塾」「希望の党」をあっさり捨てた政治家だ。躊躇すまい。
小池は、都議選の情勢、五輪開催の有無、菅政権の支持率などの“変数”を考慮し、その時機をうかがうこととなる。
小池は“やってる感”だけの政治家?
だが果たして小池は総理にふさわしい政治家なのだろうか。
私は拙著で、小池が高支持率を維持している理由として、“やってる感”を指摘した。例えば情報公開を「1丁目1番地」にうたいながら、記者会見では面倒なフリーや雑誌記者に見向きもせず、お気に入りの記者ばかり指名する。これは知事再選後も変わらない。
コロナ禍での危機対応は、その傾向が顕著だ。小池が記者会見で出したフリップの文言を並べてみた。
〈感染爆発 重大局面〉(3月25日)
〈感染拡大要警戒〉(7月2日)
〈感染拡大警報〉(7月15日)
〈感染拡大特別警報〉(7月30日)
盛んな発信も結構だが、肝心の警戒の度合いはさっぱりわからない。
20年の知事選公約では「東京版CDC(疾病対策予防センター)」構想をぶち上げ、10月、「東京iCDC」として実現した。ただ、司令塔として新設された健康危機管理担当局長は、体調不良のためわずか1カ月半で交代。医師免許を持つ担当部長は退職。暗雲垂れこめる船出となった。
人気ユーチューバーのHIKAKIN、フワちゃんとコラボ動画を作成し、都の動画としては記録的な再生回数となった。「感染防止徹底宣言ステッカー」をアピールするため、小池はステッカーがプリントされたTシャツを着、メディアの前で“ファッションショー”に応じた。
しかしこうした発信力で感染者数が減ったとの評価は聞いたことがない。
小池の国政での実績として「クールビズ」があげられる。小池都政には未だ、そうしたレガシー(遺産)はない。小池が都知事となり、意識したのが第7代東京市長・後藤新平だ。後藤は関東大震災後、内務大臣として帝都復興を成し遂げた名政治家。先達を見習うなら、小池はコロナ禍をテコにした首都復興に、残りの政治家人生を捧げるべきである。
もっとも、後藤新平は何度も総理候補に名が挙がりながら、結局なれなかったが。(敬称略)
(和田 泰明(週刊文春記者)/文春ムック 文藝春秋オピニオン 2021年の論点100)
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