《2021年は何が売れるのか?》現役転売ヤーが語った「アフター“コロナ特需”の狙い目」
文春オンライン / 2021年1月6日 17時0分

大ブレイクした「鬼滅の刃」とコラボした商品は軒並み高額で転売された
20億円を売り上げた“伝説の転売ヤー”が告白する「僕がマスクよりも大儲けした商材」 から続く
2000年以降、転売市場は拡大の一途をたどっている。新しい時代の潮流に適応した"転売ヤー"たちはどうやって稼ぎ方を変化させていったのだろうか。現役の転売ヤーであるC氏はこう語る。(全2回の2回目/ 前編 を読む)
利益率最強の商材といえば
「いまは趣味が細分化して、1990年代のような国を挙げてのブームが本当に減りました。2000年以降で大きな商材といえば、アーティストやアイドルのライブチケットでしょう。ライブ会場で定価以上で売る"ダフ屋"もいますが、僕らはネットで売っていました。
チケットの入手方法はシンプルで、友人の住所を借りて複数のファンクラブなどに入り、チケットを大量に購入する。ジャニーズやLDHのグループはまず定価割れすることはないので、買えば買っただけ儲かる。運がいいと8000円のチケットが1万円を超えたりするので、利益率で言えば転売商材で最強でしょうね」
AKB48がアイドルブームを巻き起こした2000年代半ばからは、チケットに加えて握手券や生写真も転売の対象になった。
AKB48の生写真を偽造して……
「AKBの総選挙が始まった2009年頃から、握手券が取りづらくなって定価以上で取引されていることに目をつけました。定価は1枚1000円ほどですが、前田敦子さんのような当時の人気メンバーは5000円以上の値がつく。握手券の発売が先着順だった頃は、発売日の開店に並んで大量にCDを買っていました。しばらくして握手券が抽選になったのですが、それでも『買えば買うだけ儲かる』状態は変わらず。友人の名義を借りたりして、大量に購入してました」
C氏は、完全にブラックな手法も取っていた。
「AKB48の握手会場には、CDについている生写真をトレードするスペースがあります。そこに、偽造した生写真を作って持っていき、本物とトレードするんです。本物なら1万円するレアな生写真を自宅のプリンタで複製して、会場で5000円から1万円の価値のある本物の写真と交換。あとはそれをオークションなどで売るだけ。プリンタでの複製は原価100円ぐらいですけど、一度もバレませんでした。それだけで400万から500万円は儲けたんじゃないかな」
マスクの転売はたった1日で80万円
しかしアイドル側も徐々に対策が強化し、2019年6月にチケット不正転売禁止法が施行されると、利益率は大幅に低下した。さらに2020年には、新型コロナウイルスの影響で多くのライブが中止になった(「 コンサート中止で3月の収入もゼロ」 新型コロナで“貧困”に苦しむイベントスタッフ、演奏家 」)。
それでも転売ヤーは、時代の流れを見極め、手を替え品を替え利益を生み出していく。それを代表するのが、2020年のマスク転売だろう。マスクの転売をしていた人物は当時こう話していた。(「 なぜ『高額マスク』が街中で売られているのか? 転売ヤーが明かす『次は消毒液、コロナ検査キット』 」)
「マスクの転売は実働1日で100万円以上を売り上げましたね。1日で7000枚のマスクを仕入れ、全て売り切りました。単価はバラバラですが、仕入れ値は合計で大体35万円。売り上げは110万円でした。なので、利益としては80万円弱。僕を含めて3人で動きましたが、丸1日もかかってないことを考えればなかなかの売り上げだと思いますよ」
転売ヤー同士のネットワーク
しかしマスクが入荷した店には行列ができ、自分で使う分を入手することすら難しかった時期に、どうやって7000枚ものマスクを購入できたのだろうか。聞いてみると、入手方法は驚くほどシンプルだった。
「車でスーパーやドラッグストアを回って在庫を全部買うという単純な方法でした。どれほど品薄でも、あるところにはあるんですよ。マスクは東北や長野に工場が多いと聞いて、現地の知り合いに買って送ってもらったり、人を派遣したりという感じですね。僕自身は主に仙台付近を回りました。関東近郊でも、千葉県の内陸側は割と在庫が残りがちなスポットでした。転売ヤーのネットワークで『今日あの店に入荷するよ』と情報が回るんですよ」(同前)
「中国のマニアは金に糸目をつけない」
"コロナ特需"は終わったが、今彼らは何を狙っているのだろうか。そして、高額で転売するためにはそれを「買う人」がいるわけだが、意外な買い手たちについてこう話す。
「最近の転売は、生産数が少ない限定モノをどうにか入手して高値で売却する手法が主流です。マスクのような『誰もが欲しがるけれど品薄』というケースは例外で、むしろマニアの心をくすぐる商品が狙い目です。例えば『ベアブリック』というおもちゃの人形には熱心なマニアがいて、高値で売れる。人気のものは抽選で当選した人だけが買えるんですが、定価で3万円くらいするものが、10倍になったりする。ベアブリックは中国での人気も高くて、中国のマニアは金に糸目をつけないので高値がつくんですよ」(C氏)
そう言いながらも、C氏は1990年代を「羨ましい時代」だという。今ほど転売のためのツールが揃った時代はないが、逆にそれが本職の転売ヤーたちを苦しめているのだという。
ライバルは、小遣い稼ぎのヒマな主婦や学生
「今はスマホ1つで転売市場に参入できるので、ライバルが多いです。例えば、人気アパレルのSupremeは数年前は狙い目でしたが、今では買っている人のほとんどが転売目的かと思うくらい、発売直後にメルカリに並びます。転売ヤーから買うのは止めようという雰囲気も強まってきたので、なんとか買えてもたいして利益が出なかったり、下手をすると在庫を抱えて丸損になったりします。僕らはアパレルそのものには全く興味がないですからね(笑)。
昔は玄人同士の勝負でしたが、今のライバルは、小遣い稼ぎで転売をしているヒマな主婦や学生。まさに"1億総転売ヤー時代"ですよ」(同前)
転売が一般化し、インターネットの発達で情報格差も小さくなったことで、転売による一攫千金の難易度は上がった。転売ヤー同士の競り合いで値段が上がり、消費者の気持ちが冷めていく事態もあらゆる商材で起きている。
それでも、一度転売で大きなお金を得た人は、誰もが「その味が忘れられない」という。彼らは今日も新たな方法、新たな商材を探している。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
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