「実はこの部屋、事故物件なんです」は本当? 大島てるが明かす“不動産業者のおとり広告テクニック”
文春オンライン / 2021年1月11日 17時0分

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小6息子を父親が刃物で殺害…大島てるが語る「歪んだ家庭教育が生んだ“壮絶な事故物件”」 から続く
昨年は事故物件の世界でも、様々な変化が起きた1年でした。ここまで、日本最初の「コロナ殺人」や、昨年幕を閉じた「受験殺人事件」などについてお話ししてきましたが、次は今年、引っ越しの場面などで役に立つかもしれない「おとり広告と事故物件のカラクリ」について、その裏側をご紹介しましょう。(全2回の2回目/ 前編から続く )
「良い物件だな」と思って問い合わせたら……
コロナの影響で先行きは不透明ですが、4月になれば大学進学や就職を機に、これまでとは違う街へ引っ越す人も多いはず。インターネットでその街の物件情報を調べ、良さそうな部屋があれば仲介業者に連絡し、内見してみる――これが物件探しの主なパターンではないでしょうか。
しかし、そうした場面で「おとり広告」に引っ掛かってしまう人も、あとを絶ちません。オンライン全盛の今の時代でも、やはり業者としては一人でも多くの人に店舗まで来てもらいたい、というのが本音です。
カウンターを挟んで一対一で向かい合い、「今決めないと誰かに契約されてしまいます」「まさに検討中の人がいるようです」といった営業トークを行うほうが、最終的に契約まで持っていける確率が格段に高いからです。また、オンラインでは「退室」もクリックひとつで簡単に、客のタイミングでできてしまいます。そうした面からも「とにかく店に来てほしい」という事情が業者にはあるのでしょう。
「ついさっき契約が入ってしまったそうです」
ただ、そのために、実際は契約済みの物件を「おとり広告」としてページに掲載し、その情報を見て来店した人に「残念ながらついさっき契約が入ってしまったそうです。ただ、それ以外にも良い部屋がたくさんあるので、紹介させてもらえますか」などと言って客を囲い込む、いわゆる「釣り物件」の問題もよく指摘されます。酷い場合には、そもそもそんな物件など存在していなかった、というケースもあるようです。
これは不動産業界における“あるある話”の一つなのですが、とはいえ最近はネット上でその問題を指摘する人も多く、客側でも「5分前に契約が入ったというのは、さすがに嘘じゃないか」と、露骨な釣り物件に気づく人も増えてきました。端的に言えば、ネット社会になったことで、おとり広告がバレ始めているのです。
「ここは事故物件です」と嘘をつく業者
そこで近頃増えているのが、「事故物件である」と嘘をつくパターンです。駅から近く、部屋も広い。しかも家賃はお手頃……そんな物件を見つけて不動産屋を訪れると、営業マンが声を潜めて「実はこの部屋では、前の住人が自殺しているんです」などと告げるのです。
私から見ると、これは非常によくできた嘘と言えます。宅建業法により事故物件には「告知義務」が存在します。業者は契約が成立する前に、そこが事故物件であることを借り主(買い主)に伝えなければなりません。しかし、これはあくまで契約時、判子を押す段階での定めであり、広告には、わざわざ「ここで自殺がありました」などとはっきり書く必要はないのです。
また、事故物件であると言われたらほとんどの人が「じゃあ、やめておきます」と答えますし、さらには検討段階でそうした“不利な情報”まで隠さず伝えてくれる業者に対して、「この不動産屋はとても親切で、信頼できる」と思う人も多いでしょう。“秘密”を共有することで、客と営業マンの距離がグッと縮まるという効果もあるかもしれません。
業者にとっては“良いこと尽くし”だけど……
まさに不動産業者にとっては良いこと尽くしの“嘘”なのです。ただ、このやり方も少しずつバレるようになってきています。それは、業者から「事故物件である」との話を聞いた客の中から、「大島てる」にその情報を書き込んでしまう人が出てきたからです。
書き込む人からすれば、不動産屋から聞いた確かな話として情報を載せてくれるわけですが、それを見つけた物件のオーナーから「これは間違いだ」と私のもとに苦情が来るようになったのです。そこで元を辿りながら調べてみると、そもそも業者がおとり広告として使うために嘘をついていた……というケースが非常に多いのです。
業者が一番困る返答とは?
これから引っ越しをする人も、もし不動産屋で「ここは事故物件なんです」などと言われたら、少し注意してみてください。本当に事故物件である可能性ももちろんありますが、おとり広告で来店させるテクニックとして嘘をついているのかもしれません。
いずれにせよ、そうした情報を教えてくれたからといって「親切だ」「信用できる」と素直に思ってしまうのは、不動産屋の営業トークにはまっている証拠かもしれません。
ただ、一つ疑問なのは、「ここは事故物件です」と言われた客が、「事故物件でも全然構わないので、ここに決めます」と言ってきたら、その業者はどうするのかということです。少数ではあるものの、事故物件であっても気にしない人は世の中に確実にいるので、そうした答えが返ってくる可能性もゼロではないと思うのです。
おとり広告を掲載している業者からすれば、そうした客に当たってしまうことが、いちばん怖い話なのかもしれません。
(大島 てる)
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