スペック十分な「1円」の5Gスマホついに登場! そんな市場にソニーが「25万円」スマホを出す理由

文春オンライン / 2021年2月6日 6時0分

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Redmi Note 9T(ソフトバンクHPより)

 昨年3月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクでスタートした5G(第5世代移動通信システム)。コロナ禍で盛り上がりに欠けているが、秋に発売されたiPhone 12が5Gに対応するなど、ようやく普及の兆しが見え始めている。

スペック的に申し分ない「5G対応1円スマホ」

 そんななか、ついに「1円」の5Gスマートフォンが登場する。中国発のメーカーであるシャオミがソフトバンクと組んで「Redmi Note 9T」という機種を実質1円で発売するのだ。

 当然1円と言っても端末に対して割引が適用された金額となる。ここ最近、総務省の意向により、スマートフォンの販売に対して、大幅な割引が規制されている。総務省としては「スマートフォンの販売に何万円もの割引を適用するぐらいなら、その原資を通信料金の割引に使え」というスタンスを貫いてきた。

 とはいえ、全く割引ができなくなると在庫処分に困ってしまう。そこで、総務省は「上限2万円までの割引は許す」としている。

 そのルールをうまいこと利用したのが、シャオミとソフトバンクだった。「上限2万円まで割引OK」ならば、Redmi Note 9Tの価格を税抜き1万9637円にしてしまったのだ。これで晴れて2万円近い割引を適用し、「1円」で売ることが可能となった(ただし、ソフトバンクの無制限プランへの加入が条件となる)。

 本体価格が2万円以下といっても、Redmi Note 9Tは4800万画素のメインカメラなどカメラ機能も充実し、日本特有の機能である「おサイフケータイ」にも対応するなど、スペック的には申し分ない。

 ソフトバンクがシャオミと組んで1円の5Gスマホを投入する背景には、やはり「5Gを普及させたい」という狙いがある。

 ソフトバンクの菅野圭吾氏は「Redmi Note 9Tをソフトバンクブランドとしての戦略的な端末と位置づけている。5Gネットワークを大容量プランで使ってもらいたい」と語る。

ソフトバンクの本音

 世間では、NTTドコモの「ahamo」やKDDIの「povo」などが注目を浴びている。ソフトバンクでも「SoftBank on LINE」というオンライン専用ブランドで20GBを2980円で提供予定だ。

 しかし、キャリアとしては、あまり儲からない2980円のプランにユーザーが集中してもらっても困る。

 ソフトバンクとしては5Gを契機に「無制限プランユーザーを増やしたい」というのが本音だろう。2万円程度のコストパフォーマンスのいいスマホを1円で買ってもらい5Gユーザーを増やしつつ、6580円の無制限プランを契約する人を拡大することで、政府の圧力による値下げで被る収入減から一日でも早く回復したいという狙いがありそうだ。

 シャオミとしても世界では3位のシェアを誇るが、日本での知名度はほとんどない。ソフトバンクとタッグを組むことで、トランプ元大統領の対中政策によって日本でもシェアを落としたファーウェイの後釜に座るつもりだ。

「25万円プロ向けスマホ」を投入したソニー

 シャオミが1円5Gスマホで勝負を挑む一方、25万円という高額な5Gスマホを投入するのがソニーだ。

「Xperia  PRO」は税抜き22万7091円(ソニー・オンラインストア)、税込み24万9800円で2月10日に発売となる。

 なぜ、25万円もするのか。Xperia  PROはHDMI入力端子を備え、外部の映像をスマホの画面に表示させることが可能だ。

 ソニーとしては、このXperia PROをスマートフォンの主力機種として売る気はない。プロの映像作家や写真のカメラマンに対して「携帯性に優れた通信内蔵ディスプレイ」として売り込もうとしているのだ。

 ソニーの高級デジカメ「α」を接続し、撮影した被写体を、6.5インチのディスプレイに表示。被写体にピントが合っているか、タッチパネルで画像を拡大して確認することができる。撮影した画像データは、その場でXperia PROの通信機能でサーバーに送信できる。Xperia PROは5G対応だが、ミリ波という超高速で送れる周波数帯にも対応。スタジアムなど、ミリ波が整備されている取材現場から、直接、送信できるというわけだ。

 プロ野球の試合をベンチ横から撮影するカメラマンが、プレスルームに戻ることなく、直接、パソコンなども使わず、編集部に納品できる。芸能人や政治家のスクープ写真を狙うカメラマンも、締め切りに余裕を持って入稿できるようになる。

Xperia PROは「もはやスマホではない」

 ここ数年、ソニーの業績は「鬼滅の刃」効果による映画事業や、PS4に代表されるゲーム事業などで上向いている。肝心のエレクトロニクス分野においてはデジカメやテレビなど、プレミアムな路線を突き進んだことで他社との差別化に成功している。

特に近年、デジカメ市場は、iPhoneなどのスマホでもそこそこ綺麗な写真が撮れるため、コンパクトデジカメ市場が壊滅的な状態になっている。ソニーは、コンパクトデジカメ市場は早々に避け、「α」シリーズでプロやクリエイター向けにシフト。金に糸目をつけないユーザーにターゲットを絞った商品作りが当たっているのだ。

 Xperia PROはiPhoneとの競合を避けたプロカメラマン向けの「機材」といったほうが正しい。もはや、スマートフォンではないのだ。

「数は追わない」戦略をとる理由

 ソニーモバイル幹部は、2年ぐらい前から「数は追わない」と明言する。販売台数を追っても、世界に向けて大量生産する韓国や中国メーカーにはかなうはずもない。

 それならば、自分たちの強い「プレミアム路線」に舵を切ったというわけだ。

 今後、5Gが普及し、カメラなどの映像機器にも5Gが内蔵されることが予想される。そんな時代が到来すると、ソニー「Xperia」の存在感が世界的に増してくるはずだ。

(石川 温)

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