「俺は恋愛したい」というゲス夫を妻はなぜ許したのか? 実際にあった夫婦“6つの分かれ道”を専門家が解説

文春オンライン / 2021年2月25日 17時0分

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写真はイメージです ©iStock.com

 離婚の直接的な原因として最大のものといえば、やはり「不倫」です。中でも、「妻が妊娠中の不倫」が夫婦関係に与えるダメージは深刻です。

 子供が生まれる直前、生まれた直後の大変なタイミングで離婚トラブルまで抱えて、精神的に参ってしまう女性も多いのです。最近も、フリーアナウンサーの小川彩佳さん(36)の夫・豊田剛一郎さん(36)の不倫が発覚して騒ぎになりました。

 小川さん夫婦がどんな決断に至るかはわかりませんが、筆者はこれまでに8000件以上の離婚相談案件を行政書士として扱ってきた経験から、不倫後に夫婦が「離婚するか、関係再構築を目指すか」を左右する“6つの分かれ道”があると考えるようになりました。

 今回は過去に相談を受けたA子さん(29歳)と、会社経営者の夫(36歳)のケースをサンプルに、離婚と再構築を分ける意外なポイントを紹介したいと思います。

〈家族構成と登場人物〉
A子さん:29歳・専業主婦
夫:36歳・会社経営者
長男:3歳
不倫相手の女性:34歳・夫の会社の下請け企業の社員

プロローグ:不倫発覚までの経緯

 A子さんと夫の出会いは、夫が経営するアプリ制作会社の社長と派遣社員という関係でした。夫はA子さんの前には別の派遣社員女性と交際していましたが、二股の末にAさんを選んで結婚。長男が3歳になると同時に2人目を妊娠し、3カ月ほどが経ったころのことでした。

 ある日A子さんは、夫が普段使っているものとは違うスマートフォンを見つけました。手に取って何気なく画面をタッチすると、ホーム画面に「会いたいね」というLINEの通知が表示されていたのです。

「愛している」という甘いLINE

「夫は小さいながらも会社を経営しているので仕事時間はもともと不規則で、出張や徹夜で外泊をすることも多い人でした。家事や子育てはほぼ私がひとりでやっていましたが、それでも大事にされている感覚はありました。2人目を妊娠していた頃からは毎週のように出張が入っていましたが、あのLINEをみるまではほとんど疑いすら持っていませんでした……」

 迂闊にもロックがかかっていなかったスマホを開けると、LINEの履歴は「愛している」「今度は〇〇へ行こう」など甘い言葉のオンパレード。履歴をさかのぼると最初のやりとりはちょうどA子さんが妊娠した頃で、文面から不倫相手が下請け会社の女性プログラマーであることも判明しました。

 A子さんは夫にも周囲にも伝えず数日悩んだのちに、興信所に調査を依頼しました。興信所の担当者が出張を尾行したところ、案の定夫と不倫相手の女性はホテルの部屋で3時間ほど2人だけになる時間があり、部屋に出入りする写真も残っていました。

「私も派遣社員だったので、男の人って同じことを繰り返すんだなと痛感しました。結婚したら変わってくれると思っていたんですが……」(A子さん)

 A子さんはその決定的な証拠を夫に突きつけ、「これってどういうこと?」と問い詰めたのです。発覚までの顛末はまさに“最悪”。しかし、結果的にA子さんは離婚ではなく関係修復への道を選ぶことになります。A子さんの決断は意外なものでしたが、そこには“6つの分かれ道”の法則が存在していました。

ポイント1.不倫は妻との不仲が理由だったか

 A子さん夫婦の関係は、不倫が発覚するまではいたって良好でした。それは夫が経営者の激務と家庭を両立し、しかも不倫相手との関係まで同時進行できてしまう“マメで器用”な男性だったことを意味します。

 もし以前からA子さん夫婦が不仲であれば、離婚は決定的なダメージになります。しかしA子さんの夫は不倫の写真を突きつけられても動揺するどころか、「お前のことも彼女のことも好きなんだ。俺は結婚しても恋愛したいタイプで、彼女が特別なわけではないんだ」と言い放ちました。

 普通に考えれば悪質な開き直りにしか聞こえませんが、A子さんはむしろ納得してしまったと言います。

「夫が遊び人というか、家庭一筋というタイプでないことは最初から分かっていました。それでも家へ帰ってくれば優しいし、子供も懐いています。不倫は許せなくても家族の関係は破綻していなかったので、離婚を思いとどまりました」

 不倫という完全な裏切りが発覚した後でも別れない夫婦の特徴の1つめは、夫が不倫の最中も妻との関係性を維持できる“悪い男”であることなのです。

ポイント2.不倫相手に対して妻子の存在を隠していたか

 A子さんの夫が不倫をした相手は取引先の女性だったので、夫が既婚者であることは当然知っていました。さらに夫はスマホの待ち受け画面に長男の写真を設定し、興信所の写真には、不倫相手と2人で歩くときでも結婚指輪をつけたままの姿が写っていました。つまり、夫は「自分は結婚していて、君は不倫相手」というスタンスを取っていたということです。

 それが「妻のプライド」をくすぐり、A子さんは夫を恨むよりも「手に入らないと知りながら関係を持った不倫相手の女性」に対して哀れみのような気持ちさえ持ったと言います。

ポイント3.家庭と不倫相手のどちらを優先していたか

 とはいえ夫が結婚している事実を隠していなくても、「妻より君の方が大切だ」とラブラブムードを演出していれば話はまったく別です。そうなれば「妻のプライド」は崩れ去り、軽んじられたことへの怒りが溢れだしたことでしょう。

 しかし、A子さんの夫は不倫相手に対してLINEで「家庭が優先なので週末はダメ」と送信したり、クリスマスや不倫相手の誕生日に会うことも断っていました。その事実がA子さんに、「家庭が一番で、今回のことは火遊び」と自分を納得させる材料になったのです。

ポイント4.不倫相手に対して離婚をチラつかせていたか

 A子さん夫婦の関係は良好だったので、離婚の話が出たことはもちろんありませんでした。A子さんの夫は「ずっと一緒にいたい」という不倫相手に対して「自分は離婚はしない」と返信していました。「早く一緒になりたい」、「出会う順番が違っていれば」と甘い言葉をささやく既婚者は多いですが、それすらしない塩対応にA子さんは「最終的には自分のところへ帰ってくるのだ」と感じたと言います。

「相手の女性は、夫が既婚者だと知っていて、略奪の見込みもなく、バレれば慰謝料を請求される可能性さえあるのに関係を続けていたんです。そう思ったら“優越感”のような感情が湧いてきて、怒りが少し収まりました。それでよかったのかはわかりませんが……」

ポイント5.不倫相手に貢いでいたか

 夫に不倫された時の妻の怒りで見落とされがちなのが、「私や家族に使われるはずだったお金を別の女性に使った」というポイントです。夫が不倫相手にのめりこみ、高価なプレゼントやホテルのスイートルームを予約するなどして“貢いで”いた場合、妻の心証は劇的に悪くなります。

 しかしA子さんの夫の場合、クレジットカードの明細や口座の情報を揃えて検証しても、夫が不倫相手のためにプレゼントを買ったり食事を奢ったりという痕跡は出てきませんでした。宿泊費などは会社の経費にしているものもありそれはそれで問題でしたが、A子さんとしては「家庭のお金を使われた」という気持ちにはならなかったと言います。こんな場面でも、お金の恨みは恐ろしいのです。

ポイント6.不倫トラブルの経験者が周囲にいるか

 不倫が離婚につながるかどうかの最後の“分かれ道”は、経験値です。もしA子さんの周りに不倫トラブルの経験者がいなければ、訪れた修羅場を乗り切るイメージが描けずに離婚を選ぶ確率が高まります。しかし、A子さん夫婦は、夫の知り合いの会社経営者との交友関係もあり、他の経営者の妻が、不倫トラブルを笑い話として会話のネタにするのを何度も耳にしていました。

 だからこそA子さんは夫の不倫を知っても取り乱さず「夫が不倫相手と駆け落ちするような事態はそうそう起こらない、立場のある男性は火遊びはしても離婚にまで踏み切ることはない」と判断したようです。

 さらに実際問題として、月30万円の住宅ローンを払いながら都内の高級住宅街に住めるのも、長男が月に20万円するインターナショナルスクールの幼稚園に通えるのも、経営者である夫の存在があってこそという経済的な事情も判断に影響を与えました。

 A子さんは出産を機に仕事を離れており、離婚で賠償金を支払わせたとしてもその後の収入の見通しは立ちません。それが、A子さんの喉まで出かかった離婚の「り」の文字を飲み込ませたのです。

 筆者はA子さん夫婦以外にも、不倫トラブルが離婚につながらなかったケースを数多くを見てきました。その中で痛感したのは、関係を修復できるかどうかは「いい夫かどうか」とはほとんど関係なく、むしろ不倫に対して罪悪感が薄く、経済的な優位を誇示する“オスらしいオス”の方がむしろ離婚を避けられるという意外な因果関係です。お笑い芸人や役者の妻が、夫の不倫を事実上見て見ぬふりをする姿も記憶にあるのではないでしょうか。

不倫よりも致命的なのは「嘘」

 ここまで「離婚に至らない夫婦の特徴」を書き連ねてきましたが、それとは逆に「離婚の危険性が高い夫婦の特徴」も存在します。それは積み重なった「不信感」です。

 A子さんが離婚に踏み切らなかった理由の1つが、夫が開き直って全てを認め、不倫相手にも妻の存在を隠していなかったことでした。

 相手が言っていることに腹が立つ状況よりも、相手の発言が全く信じられない状況の方が精神的な負担は大きいものです。問題が起きて解決のために話し合いをしても、「嘘をついているのでは」「隠し事があるのでは」「約束を守ってくれるだろうか」と疑うばかりでは話が進みません。

「嘘」は、不倫そのものよりも、離婚の直接的な原因になりやすいのです。その結果、開き直った態度を取る方がむしろ離婚から遠ざかる、という不思議な現象が起こります。男性にとっても女性にとっても、なんとも納得しがたい結論かもしれませんが、多くの離婚案件を見てきた筆者には、この結論はリアルなものに感じられてしまうのです。

(露木 幸彦/Webオリジナル(特集班))

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