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Re:Re:Re:Re:…あなたもずっと“返信メール”で送った? 今も残るガラケーの空気とあの頃のメール

文春オンライン / 2021年3月5日 20時0分

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スマホでLINEのやりとりをする毎日は当たり前になったが、あの頃はガラケーでメールを送っていた。今もその余波が残っている……? ©iStock.com

 いまや「ない生活は考えられない」という人も多いLINE。その誕生のきっかけは、東日本大震災だった。相手がメッセージを読んだと分かるあの「既読」機能も、相手に返信する余裕がなくても既読と分かれば安心するから……とつけられたものだ。

 スマホを開いてLINEを確認する生活もこの10年で日常になった。もちろんそこには「件名」なんてものはない。LINEはチャット式の会話が続くからだ。

「Re: Re: Re: Re:」の時代

 一方でガラケー時代には、予定したデートがとっくに終わったにもかかわらず、「Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:今度の週末」のような件名のメールをやり取りすることがよくあった。

 ガラケーでなくとも、仕事で出会った相手から来た「ご挨拶」メールに「Re:」が重なることは今でもしばしば目撃される。実を言うと筆者にもその傾向があって、1か月以上にわたって同じツリーでメールのやり取りをしていることを「文春オンライン」の編集者にからかわれてしまった。こうしたクセも、元を辿ればあの頃から始まっているのかもしれない。

 この「Re:」はラテン語が由来とされ、「~への返信」という意味を持っている。もっとも意識的に「Re:」を入力するケースはごく稀で、メールソフトが自動的に追加する「Re:」の文言を放置し続けると、前述したような「Re:Re:Re:Re:」現象が起こるのである。

「Re:」が使われるのは主にメールとBBS(電子掲示板)だ。コミュニケーションの主役がLINEやSNSに移った現代からすると、随分前の話にも思えてくる。ちなみに、ロックバンドのASIAN KUNG-FU GENERATIONに「Re:Re:」という題の楽曲があるが、リリースは2004年である。

「PCのメール」から「携帯のメール」へ

 パソコンでの「電子メール」はそもそも、ユーザーがリアルタイムに応答するものと考えられてはいなかった。パソコンの入門書などでも、「書きたいときに書き、読みたいときに読む」「会話よりも手紙に近いもの」と説明されることが多かった。

 帰宅後なり出勤後なりにメールソフトを立ち上げて、オフラインだった間に届いた「新着メール」をパソコンに受信する(これを「フェッチ」と呼ぶ)。通信時間に応じて料金が発生したナローバンド時代には、メールの送受信が済んだ時点でネット接続を切断するのが常套手段だった。読んだり書いたりする間は、オフラインでも構わないからだ。

 電子メールで交流する「メル友」文化もあったけれど、すぐさま返事が来るようなことはなくて、交換できるのはせいぜい1日1通といったところ。だからメールの件名にしても、それなりに考えて付けていたものだ。

 それが携帯電話の場合、新着メールがほぼリアルタイムに手元に配信されるようになった。たいへん便利だが、ほんの数分待たせただけで「メールの返事が遅い」と怒られる時代がやってきてしまった。

 そのうち、件名はもちろん文面にも、パソコンで書く「電子メール」のような熟慮はなくなっていく。「Re:Re:Re:Re:」だらけのメールが電波に載るようになったのは、件名をつけるほどでもないような短い内容が中心となったためだろう。

83%は「Re:」を消さない

 一般社団法人日本ビジネスメール協会の調べによれば、返信の際にメールの件名をそのままにしているユーザーは約83%に及ぶという。ビジネスメールのマナーとしてはよろしくないが、しかし短文で済む用件の場合、メールの件名をどうするかというのは悩ましい。

 ガラケーが栄華を極めていた2005年頃の話だが、大学で出会った麻雀仲間にワタナベ君という人がいた。彼は携帯メールを送るとき、件名にかならず「連絡」か「報告」と付ける習慣があった。

 カラの件名で送らないあたり、律儀な人柄が透けて見えもしたのだが、しかし何に関する「連絡」「報告」なのかわからないので不便である。ビジネスメールのマナーとしても普通に失格だ。

 麻雀仲間の間では、背筋を伸ばして「れんらぁく!」「ほーこぉく!」と叫ぶ「ワタナベ君ごっこ」が流行った。それを見てもなお、彼はメールに変な件名を付ける習慣を変えなかった。ワタナベ君はおそらく、画面に空欄があるのが許せない性分だったのだろう。「Re:Re:Re:」が当たり前だった影で、少数ながらそういう人もいたのである。

機種によっては付かなかった「Re:」

 そうした携帯メールの「Re:Re:」にまつわるエピソードを振り返ると、ドコモユーザーから聞く話がほとんどだ。ドコモの端末では、件名に自動的に「Re:」を挿入する仕様が標準だったからである。

 実は筆者は、そういう仕様のガラケーを持ったことがない。我が家は全員J-PHONE(ボーダフォンを経て現在のソフトバンク)ユーザーだった。

 J-PHONEの場合、短文メッセージの「スカイメール」を電子メールのアドレスに宛てて送信すると、一律で件名が「Message from SkyMail」になった。返信でもこれが適用されたため、ドコモユーザーとJ-PHONEユーザーがメールでやりとりしていると、「Re:Message from SkyMail」が受信欄に埋め尽くされることになる。

 したがって、ドコモ同士のように「Re:」が無限増殖することはない。とはいえ、こちら側の送る「Message from SkyMail」という件名も無意味な文字列であり、それはそれで不便だった。電子メール元来の設計思想に照らし合わせれば、ドコモ側のほうが正当な実装だといえるだろう。

 ちなみに、異なるキャリア同士でシームレスにSMS(電話番号に宛てる短文メッセージ)を送受信できるようになったのは、今から10年前(2011年7月)のことだ。だからこの現象は、割と最近まで続いていたことになる。

「同じ携帯」を持っている連帯感

 J-PHONEといえば、2000年以降にカメラ付きケータイと「写メール」でシェアを伸ばした。所詮は業界の3番手なので、郊外や地方の電波強度ではドコモに完敗だったが、それが逆に“都市的”というイメージにもつながり、一種のステータスシンボルであった。

 iPhoneが最強のブランドとして君臨している現代では、「どこの携帯キャリアと契約しているか」なんていうのは、もうどうでもいいことかもしれない。

 しかしガラケー時代には、「同じ携帯会社を使っている」ことをきっかけに、クラスメイトと仲良くなる場合もあったのだ。筆者の中学・高校時代の友人には、業界3位にすぎないはずのJ-PHONEユーザーが、不思議なほど多かった。

 当時は送れるメールにも厳しい文字数制限があったが、全角3000字という多くの文字を送受信できる「ロングメール」のサービスには、容量拡大の恩恵を受けてファイル添付機能があった。それを使って、自作の着メロや待受画像を交換したのも懐かしい。全国的に多数を占める“ドコモ派”とは違う形になるが、やはりガラケーには思い出話が尽きない。

“保護”したあのメールは今

 ガラケー時代には、そうした個別のメールを「保護」に設定することもよくあった。

 メールサーバーというのはあくまでも、ユーザーの手元に届くまでの間の一時的な保管場所であって、恒久的な保管場所ではない。したがって、持ち主の手元に届いたメールは基本的に、ネットワーク上から破棄される。

 ガラケーの頃は本体のストレージ容量が限られていたため、端末内部でも古いメールから順次消去される仕組みになっていた。重要なメールが自動的に消えないようにするには、「保護」の操作が必要だったのである。

 しかし大切なメールを保護したところで、それは機種変更までの短い命だった。キャリアによっては受信メールの「引っ越し」が可能なケースもあったが、仕組みの違うスマホにはさすがに移せなかった。だから「あの頃のメール」は押し入れを探り、古いケーブルで充電しないと表示できない。

 携帯電話の普及以来、我々は仕事や友人関係、そして恋のメッセージまで、全部をポケットに入れて持ち歩くようになった。ただのつまらない文字列でも、当時の画面に当時のフォントで表示されると、よみがえる記憶があるかもしれない。

参考:一般社団法人日本ビジネスメール協会(https://business-mail.jp/mail-writing/10595)

(ジャンヤー宇都)

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