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ついに連ドラ初主演へ…『はな恋』麦の今カノ役に“ウマすぎる”ゆえの苦難の過去

文春オンライン / 2021年3月25日 17時0分

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©AFLO

『花束みたいな恋をした』『アンダードッグ』『37セカンズ』『佐々木、イン、マイマイン』昨年から今年にかけて映画賞を受けたり、あるいは大きな話題と高い評価を得たこれらの日本映画には、あるひとつの共通点がある。

 邦画好きには簡単な謎かけかもしれない。助演女優としての萩原みのりの出演である。

 映画ファンから信頼の厚いライムスター宇多丸の年末のラジオ番組では、2020年を振り返る特集の中で今年のベスト助演女優として萩原みのりの名前が上がり、映画好きのリスナーからも納得の声がSNSに寄せられた。

 この3月に24歳になったばかりの年齢は、日本映画の新星、期待の新人と呼ばれていい若さだ。だが萩原みのりは、すでに10代のころから何年も日本映画やドラマを助演として支えてきた役者である。

「すごく芝居の上手い子がいる」事務所の壁をこえて紹介

 今からもう5年以上も前に撮影された、『正しいバスの見分けかた』という短編映画がある。ブレイク前の中条あやみを主演に迎え、脚本と監督は同世代の高橋名月が弱冠18歳でつとめた、わずか25分の短編だ。撮影から4年を経て2019年に劇場公開された時に高橋名月監督が語ったところによれば、監督は主演の中条あやみのマネージャーから「別の事務所だけど、すごく芝居の上手い子がいる」と萩原みのりを紹介されたのだという。

 事務所の壁をこえて紹介されたのは、単に能力の高さが知られていただけではなく、主演女優や作品を光らせてくれるという周囲からの信頼を、当時まだ10代の萩原みのりが獲得していたからなのだろう。

 そして現在、Amazon PrimeやHuluほかで配信されている『正しいバスの見分けかた』を見返すと、実際に萩原みのりがその期待に応えているのがわかる。大阪府出身の中条あやみに合わせて急造の大阪弁をみごとに操り、静かに流れる映画のリズムを作り出す演技を見せる萩原みのりは、この短編の屋台骨を支えている。

 同時期に放送されたテレビドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS)をはじめ多くの作品でも、彼女はバイプレイヤーとして主演女優を支えるみごとな演技を見せてきた。2020年公開の映画『転がるビー玉』は、元欅坂46の今泉佑唯、そして吉川愛という既に知名度のあるスターと3人でトリプル主演をつとめた作品だが、その中で萩原みのりは唯一人オーディションで選ばれ、映画の中でも重い深刻なパートを演じたり、2人の自由なアドリブを受け止めたりという難しい演技をこなしている。

 いわば萩原みのりは、その演技力を買われて主演女優の援護射撃に映画から映画を渡り歩く、「傭兵女優」として女優人生を送ってきたのだ。

 だが率直に言って、その演技力や素質に見合った評価や知名度を萩原みのりが得てきたかと言えば疑問だ。かつての松岡茉優がそうであったように、萩原みのりも作品への貢献に対して映画賞受賞の経験は少ない。

 ある有名な映画監督が「日本の映画賞は、俳優の演技力ではなく演じた役に賞を与えているにすぎない」と苦言を呈したことがある。その役を俳優がどう演じたかではなく、ストーリーの中で強烈な印象の役かどうかに判断を支配されてしまっているという意味だ。

演技が上手いほど目立ちにくくなる『カメレオンのジレンマ』

「カメレオン俳優」が演技の幅を賞賛されるのは、その俳優がすでにある程度知名度のあるスターであり、多くの出演作を見比べてもらえる環境にあるからだ。無名の新人俳優が脇役に徹し、カメレオンのように脇役に溶け込んでしまえば、観客は主演に目が奪われ、無名の俳優が存在したことさえ意識の中に残らない。スター俳優に対するあてこすりとして「あんなやつ、何を演じても同じ芝居じゃないか」という決まり文句があるが、スターはそのように自分固有のイメージを持つからこそスターたりえるのである。

 10代のころから演技力を高く評価され、目元の涼しい端正な容貌を持つ萩原みのりは、本来なら次世代スター女優として同世代のトップに引けを取らない逸材だと思う。だが、不思議なほどに世に知られるのが遅れた理由には、演技が上手ければ上手いほど脇役に溶け込んでしまい、強烈なスターとして目立ちにくくなるという『カメレオンのジレンマ』がそこにあったように思える。

 実際、同じ時期に演じたドラマ『表参道高校合唱部!』のメガネの優等生と映画『正しいバスの見分けかた』の少し不良っぽい美少女を見比べても、下手をすれば同一人物であることにすら気が付かない観客も多いだろう。演技傭兵としての迷彩服は時に、スターとしての輝きと矛盾してしまうのだ。

 たとえば、(ネタバレになるが)興行収入30億円を超える大ヒットとして今もロングラン中の『花束みたいな恋をした』の中で、映画のラスト近く、別れた麦(菅田将暉)と絹(有村架純)が再開するシーンで、萩原みのりは麦の「今カノ」、現在の恋人役を演じている。

 そこで萩原みのりに求められているのは、『有村架純よりも魅力的に輝くこと』ではない。映画の観客が2時間感情移入してきた麦と絹の物語、その結ばれない思いの終わりに「今はこの子とつきあってるんだ、確かに可愛いしお似合いだけど、でもね」という苦く切ない思いを喚起する役だ。それは誰にでも出来るような役ではない。

 萩原みのりは『はな恋』ラスト間際の短いワンシーンで、麦の今の彼女が元気で可愛らしい、でも有村架純が演じた絹のようにマニアックな本は読みそうにない、いかにも絹と別れた麦が選びそうな「現実的」な女の子であることを見事に演じている。その演技力がこの重要な作品の、セリフもほとんどないが決定的に重要な脇役に萩原みのりが選ばれた理由だ。

 だが、「絹よりも輝かない、影の役」を完璧に演じてしまうことによって、観客に「あの魅力的な女の子は誰」と思わせるチャンスは逃すことになる。

萩原みのりの大きな転機となった『お嬢ちゃん』

 このカメレオンのジレンマを打ち破るには、たとえば「強烈な演技で主役を食ってしまう」という方法もあるのだが、萩原みのりはそうした映画のバランスを崩す演技を好まないのだろう。まるで優秀な中継ぎ投手のように、重要な場面で登板し、作品というチームを勝利に導くものの、個人成績は0勝0敗のままという不遇の時代を萩原みのりは重ねてきた。

 俳優として萩原みのりの大きな転機となった作品は、2018年に二ノ宮隆太郎監督による単独主演作『お嬢ちゃん』だろう。そこで萩原みのりが演じたのは怒りを抱えた女の子、社会に対する説明不能な不満を飲み込んだ21歳の女性だった。映画は単館公開ながら大きな反響を呼び、萩原みのりの名を多くの映画ファンに知らしめることになった。

 この映画は実は、DVD、配信、いかなる方法でも現在見ることができない。二ノ宮隆太郎監督の作品は基本、メディア化がされていないものが多いからだ。だが、多くの映画ファンと映画関係者に強い印象を与えたこの作品以降、萩原みのりの名前と実力への注目は目に見えて変わっていく。

 現在、萩原みのりは10代のころよりはるかに多くの出演作に追われる日々を送っている。

 BS日テレでは看護師たちを描く日本看護協会と協力したドラマ『Memories』が放送中だし、現在Amazon primeで全話配信されている連続ドラマ『お茶にごす。』の中ではヒロイン的ポジションを演じ、今後はテレビ東京での地上波放送も予定されている。『お茶にごす。』の古澤健監督はかつて、新人時代の萩原みのりの初出演映画『ルームメイト』の撮影で「君は俳優に向いているから辞めちゃだめだよ」と声をかけた『恩師』でもある。

 そして25日からはいよいよ、主演ドラマ『RISKY』(MBS)が放送される。いわばバイプレイヤーから看板女優に移行しつつあり、今後も連続ドラマ『賭ケグルイ双』(Amazon Prime)や今泉力哉監督作の映画『街の上で』など話題の出演作が控えている。

 配信サービスが発達した現在の環境では、こうしたスター女優としてのブレイクが、過去の出演作にも光を当てる。萩原みのりがブレイクすることで、過去の演技も再評価され、それはバイプレイヤーという存在自体への評価のあり方も変えていくはずだ。多くの作品を支えてきた萩原みのりは今、主人公として自分の物語を探し始めている。

大きな病気を経験したことが女優としての強みに

 萩原みのりには、『表参道高校合唱部!』で共演した芳根京子との交流が今も続いている。主演と助演という形で、今もファンに愛されるこの作品を支えた2人には、ある一つの共通点がある。それは大きな病気の経験だ。

 芳根京子はよく知られるように、中学時代にギランバレー症候群という難病を経験し、克服した過去がある。萩原みのりもまた、病名は明かしていないものの、10代のころに命に関わるような背中の手術を経験している。小学校から新体操のチームに入り、強豪校で全国大会を目指すために中学受験までした彼女は、入学後わずか半年でドクターストップがかかるほどの危機に見舞われる。

 本人のブログによれば手術は2度、現在は完治しているものの、2015年のブログでは『その当時はなんでー!なんでなのー!なんで私がー!わー!って心の中は台風に荒らされたようにごちゃごちゃしてました』と書き記している。

 2017年に久保田紗友とダブル主演した映画『ハローグッバイ』のインタビューでは、自分の女優としての強みについて、『大きな手術して、もうこれでダメかもしれない、死ぬかもしれないと思った時に、これで終わりでいいのかと若い時に考えられた経験が自分の中で大きい、だから今は(生き方について)後悔したくないと思う』と語っている。その入院中に出会った医療者たちの姿は、今『Memories』で看護師を演じる中に生かされているのだろう。

 必ずしも順風満帆ではない、大きな波に翻弄される青春を送った2人の女優は、今もインスタライブなどでメッセージを送りあう姿がファンに知られている。彼女たちにいつか共演者として再会する日が来るだろうか。

まだ世の中に見せていないアクションへの自信

 実は萩原みのりには、演技力やスター性の他にまだ世の中に見せていない能力がある。それはアクション、身体能力である。前述のように病に夢を断たれるまで、彼女は全国大会を目指すアスリートだったのだ。

 大病と手術はその夢を断つ一方で、俳優というもうひとつの演技の道に彼女を導くことになった。最近のインタビューではアクションへの自信も語っており、病気の後遺症などは心配する状態にないのだろう。

 いよいよ始まる萩原みのりの主演ドラマ『RISKY』(MBS)は、ただの連ドラではない。周囲を固める共演女優は、『あのこは貴族』の山下リオ、『愛がなんだ』の深川麻衣という、演技で高い評価を得た「腕に覚えのある」女優たちであり、製作側の演技力重視のスタンスが伝わってくる。若くして死線をくぐり、いくつも武器を磨いてきた腕の立つ女優、カメレオンの迷彩服を脱ぎ捨てた新しいスターの輝きに注目したい。

(CDB)

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