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「公衆浴場で異性の子どもが入浴していると驚く」 子どもの混浴は何歳まで?

文春オンライン / 2021年3月29日 17時0分

 温泉や銭湯などで、子どもは異性の浴場に何歳まで入れるだろうか。新型コロナウイルス感染症の影響で、東京2020オリンピックでは海外からの旅行客を入場させない方針を決定。とはいえ日本の入浴文化に戸惑う海外旅行客も多いだろう。子どもの混浴の年齢制限をどう考えるべきか、温泉学会理事の竹村和花さんに聞いた。

地域の文化的背景で混浴の認識が変わる

「公衆浴場に異性の子どもが現れるとドキッとする。未就学児と一目でわかる年齢であればかわいらしく感じますが、体格が大きな子どもだとひっかかりは感じる」

 そう話すのは都内在住の30代女性。一方、兵庫県で男児2名を育てる30代女性は「公衆浴場では長男を夫が、次男を私が連れて入ります。貸切風呂を借りればいいのかもしれませんが、別料金を支払うのは経済的に選べない」という意見も。

 温泉学会理事の竹村和花さんは、混浴の認識の違いについて、「育ってきた地域の文化的背景で変わってくる」と指摘します。

「昔から湯治場があった温泉地や地方創生で新しく作られた温泉地、さらには温泉の文化があまり根付いていない地域の出身では混浴に対する認識は変わってきます。

 昔の日本には家に風呂がなく、公衆浴場での年齢制限のない混浴文化がありました。現在は家に風呂があるのが一般的で、混浴は減りましたよね。

 数年前には混浴の公衆浴場で女性の入浴待ちをする男性客『ワニ族』が問題になったこともあります。結果、岡山県の湯原温泉では湯浴み着のレンタルを進めることで、治安管理に努めるようになりました。これ以外にも、注意しても改善に至らなかったため公衆浴場を廃業したり、地域と外部の利用客で浴場を分けて運営したりする地域があります」(竹村さん)

子供の混浴の都道府県別年齢制限

 子どもの混浴については、厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」で「共同浴室にあっては、おおむね7歳以上の男女を混浴させないこと」と書かれています。

 また、各都道府県が定める「公衆浴場法施行条例」では、混浴の年齢制限がそれぞれに定められています。

 東京都では、混浴できる年齢を従来の9歳以下から6歳以下に引き下げる方針を2021年3月に固めました。2021年6月の都議会で条例改正予定です。

「混浴の年齢制限は江戸時代からさまざまな取り決めがあったようです。『公衆浴場法施行条例』による年齢制限の地域差は、混浴に対する文化的背景を加味して定められているのではないでしょうか」(上部同)

 地域住民が浴場を昔から利用・管理しているなら混浴の年齢制限は緩く、スーパー銭湯などが多い都市部の浴場は厳しい傾向にあると竹村さんは言います。

「都市部の浴場は、子どもが混浴することで事件に発展する可能性が高くなります。隣の利用客が自分の子どもをどういう目で見ているかはわかりません。思っている以上に、保護者は子どもの混浴について意識すべきだと思います」(上部同)

家族風呂で子どもを守る姿勢を考える

 公衆浴場法施行条例により混浴の年齢制限が定められているとはいえ、年齢の割に体格が大きな子どもや、障がいなどを理由に介助が必要な子どもが異性の浴場に入浴する場面もあるでしょう。

「小学校高学年は第二次性徴で体に変化が生じる頃。体にタオルを巻く方法も一つですが、湯船にタオルをつけるのは衛生面の観点から懸念があり、禁止している公衆浴場が多いです。また、排水溝にタオルが絡まり事故につながる恐れがあるため、注意が必要。利用客からは、『子どもがタオルを巻いているほうが大人っぽく見える』と指摘する声もあります。

 気になる方は貸切風呂を選ぶのもいいでしょう。幼い子どもも人目を気にせずに入浴できると思います」(上部同)

 貸切風呂は2010年頃から脚光をあびるようになりました。風呂付客室など贅沢志向の人気から火が付き、日帰り温泉でも利用できるようになっていったのです。

 また、タトゥーを理由に公衆浴場に入れない人も貸切風呂を利用することがあると言います。

「周囲にタトゥーを見せないと約束したうえで、タトゥーを入れた人が貸切風呂を利用することもあるようです。

 私は温泉好きが高じてスーパー銭湯に勤務した経験があるのですが、タトゥーを入れたお客さんの利用はお断りしていました。見かけたらお引き取りをお願いするよう指導されていましたし、入り口にも注意書きを掲載していました。声をかけると、納得して帰宅してくださる方がほとんどでした」(上部同)

 タトゥーと言えば、海外旅行客が入れていることも多い。アフターコロナでは、海外旅行客が増える可能性も考えられます。

「言葉と文化の違いから、タトゥーを入れた海外旅行客に公衆浴場に入れない理由を伝えるのは困難です。そういう場合は返ってくる言葉で周囲の利用客に外国人客だと伝わることを重視していました。外国人客だと分かれば他の利用客は『外国人は文化が違うから仕方がない』と納得する雰囲気があります。

 グローバルな時代に突入し、タトゥーをオシャレとして認知する若者も増えてきました。日本の入浴文化も今後は変わる可能性があると思います」(上部同)

海外の混浴は「宗教」「モラル」「生物学」的視点で決められた

 一方、海外では混浴をどのように分けているのでしょうか。フィンランドでは、生物学的な視点で混浴を分けています。というのも、同国での混浴といえばサウナが一般的だから。

 また、ドイツのヘッセン州の州都、ヴィースバーデンという有名な温泉地は16歳以下は入場不可の混浴があります。脱衣所から男女混合で利用し、基本的に全裸で入浴します。

「フィンランドは日本のように混浴について年齢で区切らず、子どもそれぞれの発達状況に合わせて判断されます。一方ドイツは、相手が裸でも驚かない、騒がない、凝視しない、飲酒しても社会性が保てる、などの『大人の対応』ができる年齢を判断軸にしています」(上部同)

 宗教を理由に混浴ができない地域もあります。例えばキリスト教徒が多いイタリアでは肌の露出を避けるため、水着を着用しての混浴が一般的です。

「世界の混浴事情は、宗教、モラル、生物学的な理由などから考えられています。いろんな考え方がある中で、私たちは何を基準にすべきか。公衆浴場法施行条例だけで考えるのではなく、議論することが大事ではないでしょうか」(上部同)

混浴は自分を守る意識と文化のバランスが大事

 公衆浴場を利用する際は、どの地域でもトラブルが起きる可能性がゼロではないことを認識する必要があります。「遅い時間帯の利用は控える」など、自分を守る行動が大切です。

「子どもが混浴をする上で最初に懸念されるのが、性の対象として見られて事件に巻き込まれることでしょう。性の在り方は多様化しているとはいえ、できるだけ同性の浴場に入浴するのがいいのかもしれませんね。

 公衆浴場では母親が子どもを連れているイメージが先行しがちですが、父親も子育てに関わっていくべきです。体の洗い方や入浴のマナーを教えるのも保護者の役割。同性だからこそわかる細かな配慮もあるのではないでしょうか」(上部同)

 公衆浴場でのトラブルは、施設運営側に管理が求められることも多い。とはいえ、ワニ族のように注意しても対応が難しい場合や、管理のための資金が足りない経営者がいるのも現状です。

 注意しても聞かない利用客がいた場合には、「最終的には公衆浴場法施行条例が一つの判断基準になる」と竹村さんは言います。

「一方で、浴場の視点で考えると、混浴文化が廃れるのは残念ではあります。自分を守ることと文化のバランスを考えるのが大切ではないでしょうか」(上部同)

 入浴は無防備な状態で人と接する場。都市部や地方からの利用客、海外旅行客が入り交じるなかで、100%安全に利用できるという考え方は難しくなっているのかもしれません。

 竹村和花/イタリア在住(現在一時帰国中)。温泉研究家(温泉学会理事)、イタリア・フィレンツェ大学法学部にて温泉と環境をテーマに比較法を研究中。

(ゆきどっぐ)

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