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「過去の万引きを旦那にバラすぞ」AVの鉄板企画を模倣し強制わいせつ未遂…元警察官が証言した身勝手すぎる“犯行理由”

文春オンライン / 2021年7月3日 7時0分

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埼玉県警本部 ©共同通信社

 万引をした女性が店舗のバックヤードに連れて行かれる。店員や警備員は「家族や警察にばらされたくないなら、分かっているよな」などと言い、密室で嫌がる女性にわいせつな行為に及ぶ――。

 多くのアダルト作品で使用される「鉄板の企画モノシチュエーション」(AVメーカー関係者)だ。

 フィクションでしか許されないその状況を、現実にしようとしたトンデモ警察官がいた。埼玉県警の元警察官、池田高秀被告(34)である。

 池田被告は4月、埼玉県羽生市にあるイオンモール羽生の駐車場に20代の女性A子さんを呼び出し、「過去の万引きを旦那にバラすぞ」「月に1回でいいから性行為をさせろ」などと言って車の中で1時間にわたって脅迫した。その際にA子さんの身体を触ろうとしたとして、強制わいせつ未遂罪に問われていた。

 7月1日にはさいたま地裁で判決公判が行われ、菅原暁裁判官は「犯行は執拗で卑劣だ」として懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)の有罪判決を言い渡した。

万引きの捜査で女性の電話番号を

 黒のスーツ姿で髪を整えた池田被告は、判決が言い渡されると神妙な面持ちで裁判長の説諭に耳を傾けた。一見すると反省をしているように見えるが、裁判の過程ではとんでもない主張を繰り広げ、傍聴人を苦笑いさせていた。

 池田被告は2008年10月に埼玉県警で働き始める前は、自衛隊員だった経歴を持つ。2017年3月から羽生署地域課の須影(すかげ)駐在所に勤務していた。地元社会部記者によれば「勤務態度に問題はなく、近隣住民に人気の駐在さんだったと聞いています」という。

 しかし“人気の駐在さん”は仮の姿だった。ことの発端は今年1月、A子さんがイオンモール羽生で万引きで捕まったことだった。当時、須影駐在所に勤務していた池田被告はイオンモール内の派出所にも出入りしており、A子さんの万引き事件の時も捜査に関わったという。

「捜査に関わったとは言っても直接取り調べをした担当者ではなく、A子さんは池田被告について『面識がない』と証言しています。ただ池田被告がA子さんの個人情報にアクセスできる立場だったことは確実で、そこで携帯電話の番号を知ったことから事件が始まりました」(前出の社会部記者)。

 4月2日と3日、突然A子さんの携帯電話に知らない番号からの着信があった。何度目かの着信にA子さんが出ると、電話の相手は「イオンの警備員」を名乗った。池田被告は「万引きの処理で100万円かかった。身体で払うか」、「旦那にばれてもいいのか」と脅して4日にイオンモールの駐車場にA子さんを呼び出した。

 待ち合わせた駐車場に現れた池田被告は、A子さんの車に乗り込むと、「万引きをしたらそれなりの誠意を見せてほしい」「月に1回で良い」「嫌なら留置場に入りますか」などとA子さんの弱みに付け込んで1時間以上にわたって性交渉を求めたのだ。狭い車の中で池田被告は体を無理やり触ろうとしたが、A子さんは拒否しつづけた。

 体を触ろうとしながら池田被告は脅迫を続けたが、タバコを吸いに一度車を出たところでA子さんがすかさず110番通報。池田被告は逃走したが、防犯カメラの映像などから特定され、4月7日に逮捕された。逮捕時には「わいせつ目的ではなかった」などと意味不明の供述をしていた。

検索履歴には「万引き」「人妻」「レイプ」

 しかしその言葉の真意は、6月の後半に行われた初公判でのトンデモ主張によって明らかになった。池田被告は裁判で、A子さんに性交渉を迫り体を触ろうとしたことについては「間違いありません」と認めながらも、被告人質問では「万引き犯を懲らしめてやりたかった」と主張した。

「弁護側は池田被告の動機について、わいせつ目的以上に、万引き犯を懲らしめたいという正義感が起こした事件だと主張したんです。しかし、池田被告の携帯電話には“万引”“人妻”“レイプ”などの検索履歴がきっちり残っていて、さらに事件当日にはコンドームも購入しています。これを性的な目的ではないというのはさすがに無理があると感じました」(社会部記者)

 被告人質問で池田被告は、検察官とこんなやりとりをしている。

検察官「AVの影響はあったのか」

池田被告「なかったわけではない」

検察官「フィクションと現実の区別がついていなかったのか」

池田被告「ついていた。まわりのことが見えなくなっていた」

 弁護側の被告人質問への答えにも、池田被告の“ズレ”た空気感が如実に表れている。

弁護士「(A子さんを)懲らしめようというなら、やっていることに開きはないか」

池田被告「わいせつ目的がなかったわけではない」

弁護士「わいせつ目的100%だったのではないのか」

池田被告「わいせつだけなら力づくでできた」

弁護士「何が事件を起こした理由だと思うか」

池田被告「集中しすぎると、まわりが見えなくなる。懲らしめようと思っていた」

 あくまでもわいせつ目的だけではなく、歪んだ正義感が原因だったと主張した池田被告。「この地域の万引きの担当を5年ほど1人でしており、店舗の経営者などが泣いているのを見てきた。それで万引き犯を懲らしめようと思った」とも言ってのけたのだ。

「警察やあなたの信頼は簡単には回復されない」

 しかしこの主張は聞き入れられなかった。

 検察側が「被告人はアダルトビデオやアダルトサイトに影響を受け、本件犯行を思い立った」「アダルトビデオを見て、自分も同じようなことをしてみたいと思い実行に移すこと自体が、幼稚かつ浅はかとしか言いようがない」と主張したのを受けて、菅原裁判官は「自身の性的欲求を果たす目的のほかに、万引き犯を懲らしめるために脅そうとの思いもあったと供述するが、そのためには法令に則って捜査等の職務にいそしむべきだ」と切り捨てた。

 裁判には池田被告の妻も出廷し、「ひとりでやらないといけないことが多く仕事のストレスがあり大変だったと思う」と証言。弁護側は「妻も離婚もせずに池田被告を支えると言っている」と執行猶予判決を求めていた。

 最終的に下ったのは懲役2年、執行猶予4年の有罪判決。裁判官は「被害女性の傷は癒えない」「警察やあなたに対する信頼は簡単には回復されない」などととどめを刺した。それを、池田被告はやや前傾姿勢で頷きながら神妙な面持ちで耳を傾けていた。

 警察からは懲戒免職され、被害者とは80万円で示談。そして有罪判決を受けた池田被告。稚拙な行動によって失墜させた信頼の回復には長い年月がかかりそうだ。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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