1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

「星先生は、生徒に対しての言葉遣いもていねいで、理想を詰め込んだ感じです」 和山やまが語る『女の園の星』の“関係と恋愛”

文春オンライン / 2021年7月16日 17時0分

写真

©️iStock.com

「私にはギャグ漫画を描く才能はないと、だいぶ前に諦めています」 『女の園の星』の和山やまが“半径3メートル以内の笑い”を描くわけ から続く

 女子校を舞台に、担任の男性教師・星先生と生徒たちの日常を描いた和山やまさんの最新刊『 女の園の星 』(祥伝社)が話題だ。毎朝、通学前にコンビニで蒸したての「うどんまん」を買い続ける生徒につけられた「うどんまん有段者」というあだ名や、星先生の同僚の小林先生が「タペストリー」を言い間違えた「ペタリスト」という言葉など、破壊力の高いキラーワードを次々と生み出す陰には、どのような苦労があるのか。登場人物の恋愛事情についても聞いた。(全2回の1回目/ 前編 を読む)

『女の園の星』第1話を読む

星先生のビジュアル面は中村倫也さんと吉沢亮さんを意識

――和山さんが描くキャラクターは、みなそれぞれ個性が際立っています。『女の園の星』では、主人公の国語の星先生、隣のクラスの担任でポロシャツがトレードマークの数学の小林先生や、「いつも酒臭い」と生徒たちから言われている3年生の副担任・中村先生など、登場する先生方もみな魅力的です。誰かモデルがいるのですか。

和山 星先生は、ただ私の好みを描きました。ビジュアル面は中村倫也さんと吉沢亮さんを意識していますが、誰か特定のモデルがいるわけではありません。中村先生は、実際に自分の高校時代の数学の先生をモデルにしています。メガネにオールバックで、常に酒臭いところもそのままです。いつも背中が丸まっていたな、と思い出しながら描いています。

 あと、これは自分ではまったく意識していませんでしたが、1巻の宣伝をした際に読者の方から「小林先生は『寄生獣』に出てきそう」とコメントをいただいて、ああ、確かに!と思いました。もともと『寄生獣』はすごく好きな漫画なので、無意識ににじみ出ていたのかもしれません。

女子高生は感覚で生み出している

――2巻では、先生方のプライベートな部分も少しずつ明らかにされ、読者心がくすぐられます。キャラクターはどのようにつくっているのですか。

和山 星先生は、単純に理想を詰め込んだ感じです。生徒に対しての言葉遣いもていねいで、どの生徒に対しても接し方に差がないように意識しています。小林先生は、すごく動かしやすいので、描いていて楽しいです。「キャラが変わってきたかな」と自分でも思うことはあるんですが、連載を重ねることで「知りあってきた」時間が積み重なってきたので、最初とは違う側面を見せてもらえるようになった、というイメージです。これは、小林先生に限ったことではなく、ほかの生徒や先生方も同じだと思っています。

――小林先生と星先生は、仲がいいんですか。星先生と小林先生の意外な一面も2巻では描かれていますが、和山さんが好きだとおっしゃるBLを意識されている部分もありますか。

和山 星先生にとって小林先生は、気を使わなくていい相手なのかなと思います。前著の『 夢中さ、きみに。 』や『 カラオケ行こ! 』では、少しBLを意識して描いた部分はありますが、『女の園の星』ではありません。でも、見る人によってはそういう楽しみ方もできたりすると思うので、読み方は読者に託そうと思います。

――よく寝る香川さんや、漫画家志望の松岡さん、星先生の観察を日課にしている鳥井さんなど、生徒たちにもモデルがいるのですか。普段から女子高生がいそうな場所に行くなど、取材もされているのでしょうか。

和山 私の感覚で生み出しているだけなので、特に取材などはしていません。たまたま駅のホームなどで女子高生がいたら、「今どんな髪型が流行っているんだろう」くらいはチラッと見たりしますが、それくらいです。あまりじろじろ見ても失礼ですし……。

――2巻では、毎朝通学前にコンビニで肉まんの進化形「うどんまん」を買う生徒が、「うどんまん有段者」というあだ名をつけられたり、「タペストリー」を「ペタリスト」と勘違いしていた小林先生が、「ペタリスト」とつぶやいた瞬間に生徒から「ペタリスト小林」とささやかれたりするなど、「あるある」と思う笑いも描かれています。リアルさを感じさせながらギャグを描くのは難しいと思いますが、読者を置き去りにしないために、どのような工夫をされているのですか。

和山 高いテンションのギャグを描かないということと、キャラクターの所作や背景などは細かく描くことを意識してます。コメディなので悪い人間は描かないようにしてますが、良い人ばかりでもウソっぽくなるので、そのぶん生徒の持ち物や、通学で使う駅、コンビニなどの背景や小物は実際に写真を撮ってリアルに描くことで、現実と虚構の乖離を埋めるようにしてます。また、小林先生がカロリーメイトをよく食べていたりなど、ズルいやり方ですが固有名詞を出すことで「こういう人、実際にいるかも」とイメージしやすいかなと思っています。

 あとは、漫画を描いている時は、BGMとしてドラマを流していることが多いので、ドラマで流れてくる映像を、キャラクターの動きの参考にしています。映像を意識することで、人間の細かい動きなども、より自然に描けていると思います。

以前は深夜のファミレスで

――1巻の1話で「気をつけてお帰りくださいませ」と言う星先生に対して、生徒が「敬いすぎ」と返すシーンや、生徒から「無印良品」と呼ばれていたことがあると話す星先生に、「おしゃれ!ずるい!じゃあ俺、高島屋!!」と返す小林先生のシーンなど、キャラクターのセリフが秀逸です。こうしたセリフは、どうやって考えているのですか。

和山 セリフは、じわじわとしたおもしろさが伝わるように考えています。最初にプロットから考えるのですが、それはセリフだけで書き起こし、そのあとでネームを組み立てています。セリフは、声に出してそのままスッと入ってくるかという音の響きや、会話のテンポ、説明しすぎていないかなどを何度も検証するので、すごく時間がかかります。

――一番苦しい作業は。

和山 一番苦手なのはネームです。セリフからネームを組み立てるのが一番難しい。キャラクターやストーリー、絵柄は読者にも好みがあるので、開き直って自分の好き勝手にしているのですが、ネームは「いかに読者にとってストレスのない画面がつくれるか」を一番に意識しています。ぱっと見た時に読みやすいものになっているか、セリフや絵がごちゃごちゃしていないか、吹き出しの配置で「ここの会話はどういうテンポで読んでもらえるか」など、基本的なことだからこそ画面作りは一番重要視して一番頭を使うところなので、いつもここで苦労しています。

 プロットとネームはほどよい雑音がないと考えられないので、以前はよく深夜のファミレスに行って描いていました。今はコロナで行けないので、昼間に近所のカフェで描いたりしています。

――2巻9話で小林先生が作った3年生への記念品も、強烈なインパクトがありました。どうやってあの記念品にあったワードにたどり着いたのですか。

和山 悶々と考えた末に出てきたアイデアから、何通りかネームを考え、一番おかしいのを選びました。でも何がウケるかはまったくわからないので、毎回反響にドキドキしています。

大きな話題となった星先生の結婚

――6話に登場する「幸運を呼ぶ『クワガタボーイ』のキラステッカー」は、公式ツイッターでも「実物」が投稿され、4.6万いいねがつきました。これはご自分でもウケるだろうと確信がありましたか。

和山 いや、これもこんなにウケるとは思っていませんでした。逆に、自分がすごく自信があるものはそれほどウケなかったりするので、人それぞれ笑いのツボって違うんだなと感じています。ちなみに、星先生がクワガタを載せている、肩においたレースのハンカチには「女性教師から借りた」という裏設定があるんです。誰も気づかないような、でも一人くらい気づいて指摘されるとうれしくなるような細かい部分を描き込むのが好きなので、つい描いてしまいます。

 2巻では、先生方の「結婚」にまつわるエピソードも描いてみました。恋愛を描くのはやっぱりまだ苦手ですが、多感な時期の女子高生を描いている以上、恋愛にまつわる話なども少しずつ挑戦していこうかなと。

――『FEEL YOUNG6月号』では、星先生の結婚についても明かされ、大きな話題となりました。星先生の恋愛や結婚は、読者も一番気になるところなのではないかと思いますが、今後、星先生に限らず、ほかの先生方の恋愛や私生活についても少しずつ明かされていくのでしょうか。

和山 星先生のような私生活が謎な人は、生徒にとっても読者にとっても芸能人のような感覚になっているのかなと思っていて、頂いたお手紙でも驚いていた方が沢山いたのですが、これからも恋愛面に限らずキャラクターたちのいろいろな側面を描いていけたらと思っています。

【マンガ】『女の園の星』 学級日誌の備考欄で始まった絵しりとり… 「ほ」で始まって「い」で終わる答えとは? へ続く

(和山 やま)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング