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《伝説のAV男優》「今まで父親のロクな思い出がなかっただろうから…」余命1年の沢木和也が何も知らない息子に残した別れの“言葉”

文春オンライン / 2021年7月15日 17時0分

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闘病中のAV男優・沢木和也氏

《AV男優・沢木和也》「籍を入れるなら縁を切る」「女房の父親とはそれ以来一度も会えず終い…」妻と2人で歩んだ“波乱の27年間” から続く

 2020年4月11日。緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルスによるパニックが本格化していた時期に、とある男性がTwitterでステージ4の癌により、余命1年を宣告されたことをカミングアウトした。ツイートの主は沢木和也。1980年代から活躍しているベテランAV男優だ。

 それから今年5月にこの世を去るまで、彼は自分の人生の「終活」を続けた。病気のこと、性への目覚め、AV活動、逮捕…何も知らない息子のために、破天荒な人生をすべて綴ったのが、沢木氏の『 伝説のAV男優 沢木和也の「終活」 癌で良かった 』(彩図社)である。同書から一部抜粋して、沢木氏の家族の話を紹介する。(全2回の2回目/ #1 を読む)

◆◆◆

直近の金銭事情

 ここ何年かの話をすると、男優30周年を機に男優ギャラを下げたんだ。もう5~6万円なんてギャラで仕事がもらえる時代じゃないし、そこまでハードなカラミは出来ないから、そんな男優を使ってもメーカーからしたらコスパが悪すぎると思ったんだよ。

 それでギャラの設定を3万円程度まで減らしたんだけど、思ったよりも仕事は増えなかった。直近の話に限ると、病気を抜きにしてもここ3年は仕事の数が減って、金額も落としちゃって、どうにもならない状況だったな。

 今は50代になって身体も動かなくなってきて、AV男優としての先はないんだ。30代の頃の暗黒時代は身体だけは頑丈だったから、何とか盛り返すことも可能だったけど、この年齢になると体力勝負の世界でもう一発っていうのは無理だよね。

 そうしているうちに息子の進学があり、野球道具を買い揃えてやりたいとか、何かにつけて金が必要になってしまって、このままではどうにもならない状態だったんだ。夫婦の生命保険を切り崩して金を工面するとか、本当にギリギリの金銭事情だった。

「もう誰かに金を借りてスナックでも始めるしかない」と思っていたところで癌が発覚して、変な言い方だけど命が助かったね。何をするにも保険が使えるし、100万円程度だけど生命保険もおりたし、コロナ禍が始まってからは持続化給付金で100万円もらえて、それでどうにか生き延びている。

 AV業界は今はベテランも若手も仕事が減る一方で、クラスターが発生しかけたとも聞いている。そのせいで現場の数が減って、みんな平等に金に困ってしまっているようだね。

 そういう意味では、自分は本当に変なところで運がいいなと思うよ。あそこで癌になっていなくて、普通に働いていたら、今頃マンションを売って流浪の身になってしまっていたかもしれない。

 ただ光明も見えていてさ、AV出演強要問題を経て本番行為に対して業界内でも色々な意見が出たでしょ。その流れで、一時期よりもドラマ物のAVが増えているよね。そういう状況だったら、俺ら世代のように役者も出来るベテランAV男優の方が、むしろ出番はあるのかもしれないなと思うんだ。自分も身体が動く限り仕事を回してもらえるように、可能な限りコンディションを整えて、頑張って現場に通おうと思ってるよ。田渕君や大島君みたいに、まだまだ頑張っている同世代のAV男優が何人かいるんだから、俺が消えるわけにはいかないだろ。

金を騙し取っただけの詐欺師

 色々なビジネスに手を出してイマイチだった、失敗した、惨めだったこともあったんだけど、それはまだマシな方で、中には単に俺から金を騙し取っただけの詐欺師もいたんだ。

 そういう輩の共通項は、会っていきなり握手をして来るところ。アメリカ人気取りみたいな感じで、挨拶もそこそこに笑顔でガッチリ握手してくるヤツがいるでしょ。俺の経験則から言って、それをやってくるヤツはまず詐欺師だと疑った方がいいね。そういうタイプにはマトモなヤツが1人もいなかった。

 最初に仕掛けられた詐欺は、新宿三丁目でうどん屋兼居酒屋を始めようって話だった。二丁目のゲイバーやホモビデオといい、AV男優スナックといい、どうも俺はあの辺りに縁があるんだけど、この話は中学生の頃の同級生が誘ってきた話だったから、つい信じて乗っかってしまったんだ。

 店のオープンに700万円かかると言われて350万円ずつ出して、何とか開店はしたんだけど、結局潰れちゃったんだ。その時は「飲食店は水物だからな」と納得したんだけど、後から別の人間に色々と背景を聞かされる機会があって、それによると実は700万円も掛かっていなくて、半分の350万円で店は作れたらしいんだよ。だから、俺が出した350万円っていうのは、単にその同級生の懐に入っておしまいだったの。

 自分で言うけど、俺はそもそも人のために動くタイプだったんだよ。パクられてしまった麻薬の件だって「みんなが買いにくいと困ってるから」って理由が少なからずあったからね。「じゃあ俺が買ってやるよ」って。今にして思えば「なんてバカなんだろう」とは思うけど、純朴な田舎の人間特有のお節介って感じでしょ(笑)。

 それがまさか同級生に騙されるとは思わず、この件で完全に人間不信になってしまったんだ。人間好きで誰にでもいい顔しちゃうような俺っていうのは、こういう出来事を経て、他人には見せなくなっていったね。

 少し時系列が飛ぶけど、次に詐欺師に出会ったのはAV男優としてバリバリ働いていた20代の頃だった。AV業界の人間から「一緒に制作会社を作ろう」っていう話を持ち掛けられて、ついつい話を聞いてしまったんだ。

「FC2のマーケットに超有名AV女優達の無修正動画が売られてる」騒動

 というのも、そいつは元々飯島愛ちゃんの事務所の人間で、それが円満退社して独立するってことだったから、身元がしっかりしてると思って信じちゃったんだよ。そいつこそ会っていきなり握手してくるタイプの人間で、口が上手くて、「将来のことを考えたらAV男優だけじゃ食えないぞ」とか、色々と言ってくるの。

 最終的に「資本金1000万円必要だから、あと1人出資者を探して、300万円ずつ出そう」なんて計画になって300万円渡したんだけど、少ししてから「事業に失敗して会社が潰れて金が返せなくなった」と伝えられてさ。その時も最初は「まあ仕方ないよな、制作会社なんてそんなに甘くない商売だもんな」と納得したんだけど、少し時間を置いて何となく社名を調べてみたら、本当は潰れていなくて、元気に商品を制作して売り続けていたんだ(笑)。結局、そいつは俺に配当を渡すのが嫌でウソをついてたの。

 いきなり握手系でいうと、ほんの何年か前にモザイク編集前の素材をFC2で売り捌こうとしてAV業界を騒がせたAV監督の南波王ってヤツがいたんだけど、そいつも挨拶より先に握手って男だったな。

 彼は有名メーカーの出身者だったはずだけど、そういう業界歴の長い会社から出たとは思えないくらいやることが無茶苦茶で、スタッフはおろかAV男優に対しても未払いばかりだったんだ。AV女優はプロダクションがあるから優先して金を払っていたはずだけど、それがないフリーの技術スタッフとか、AV男優とかは、あの手この手でツケにしてて、さらにあっちこっちの業界人から金を摘んで、最終的に飛んじゃった。

 それから少しして起きたのが、あの「FC2のマーケットに超有名AV女優達の無修正動画が売られてる」って騒動だったんだ。その時に流れた素材って、ほぼ全てその南波王が撮影した作品ばかりだったの。いくらなんでも話が分かりやす過ぎるよな。

 俺の中でAV業界人ってそういうことを仕掛けてくるクズばかりって印象があって、業界歴が長くなるにつれて業界人不信も強くなっていったんだ。金が絡む話ではAV業界の人間なんか頭から疑って掛かってた。

 だからこそ、今こうして癌になって金が必要になった時に、まりかちゃんや、友田真希ちゃん、川上ゆうちゃんらがチャリティー企画を立ち上げて、集まった多額のお金を丸ごと送ってくれて、心の底から感激したんだよ。

 それにAV監督の魁さんに対しては、金を送ってくれるのはいいけど「何が目的なんだろう」って、有り難すぎて逆に身構えてたくらいなんだから。

 こうやって損得を抜きにして親身になってくれるAV業界人だっているんだと気付けたのは、全て癌のお陰だよね。よく「自分が困った時に助けてくれる人は誰か」なんて話を聞くけど、あれは本当だよ。羽振りが良い時は人間なんかいくらでもすり寄って来るもの。でも、その中に信頼の置ける人間なんかいやしないんだ。

癌で取り戻した家族の形

 俺はこういう性格だから、何かと言うと女房に当たり散らしたし、夫婦の会話の中に離婚って単語が出たこともあった。だけど彼女は俺のせいで親と縁切りまでしているし、実際に別れるという選択肢はなかったね。

 過去に2~3回、俺がキレて怒鳴って泣かせたなんてことはあったけど、女房も俺も一晩寝たら忘れちゃう、感情が長続きしないタイプなんだ。それで今まで上手くやってこれたんだと思うな。

 以前は俺が亭主関白過ぎて、俺が決めたことしかやらせないっていう独裁者がいるような家だったんだけど、癌になって体力がなくなって、身体の痛みもあって、昔のように俺がリーダーシップを執ってガンガン引っ張ることが出来なくなってしまった。

 そうしたら、女房は自由に思ったように動けるようになって、自分の判断で生きられることの楽しさを味わっているみたい。

 息子は反抗期のど真ん中って感じがあるけど、病気になってからお互いに優しく接することが出来るようになった気がするよ。

 俺は今までが毒親すぎたから、変えなきゃならない部分が多かったね。だけど俺の体力的な問題だけじゃなくて、今まで父親のロクな思い出がなかっただろうから、残りの時間で少しでも親父の良い思い出を残してほしいなと思ったんだ。そういう目的があったから、これだけ頑固でワガママな俺でも、自分を変える努力は苦ではなかったな。

 ここしばらくの間、息子は俺に対して知らんぷりをすることが多くて、典型的な思春期の男の子って感じだったんだけど、その距離感がだいぶ変わったなと実感してるよ。

 ウチは色々と問題のある家庭だったと思う。主に俺自身の責任なんだけど。それが癌になって余命も分からない状態になって、初めて家族とまともな人間関係が築けたんじゃないかと思うんだ。

 こういう家族との関係の再生みたいなことも、きっと終活の内に含まれているんだろうね。俺はつくづく人生を終える理由が癌で良かったなと思うよ。

癌で良かった

 癌という病気になってから、自分の人生の総まとめが出来て良かったと感じるようになった。家系的にくも膜下出血など脳をやってしまう人が多く、自分自身も喫煙するし酒も大好きなので、そのリスクは高い。自分の死因はそれだろうなと思っていた。

 だけど一瞬で死んでしまう脳や心臓の疾病と違って、癌は死までに時間の猶予がある。その間に色々なものを残せるし、自分自身の手で死ぬ準備ができる。こうして終活の一環として本を出せたのも、癌だったからこそだ。

 AV業界の仲間たちや、俺の治療費を集めようとチャリティーイベントを開いてくれたひとたち、それにクラウドファンディングの支援者たち。俺が癌になったからこそ、誰が信用できる人間だったのかが分かった。殆ど付き合いのなかった人が親身になってくれたり、面倒をみてやったはずの後輩が一切連絡をよこさなかったり。人生の最後で「この人達が正解です」という答えが出た。

 自分は連絡先を持っていると酔っぱらった時などに夜中でも平気で電話をかけてしまうので、ある時「みんなに迷惑だ」とほとんどの連絡先を消してしまった。それでも俺を心配してくれる人は、わざわざTwitterのDMなど連絡手段を探して話しかけて来てくれた。

 変な言い方になるけれど、俺は自分の命がどれくらい残っているか分からない状態になったいま、AV男優になりたくて仕方がなかった純朴な埼玉の田舎者の少年に戻れた気がしている。

 こんな生き方をして来て、知らない内にヘドロみたいにこびり付いていた悪い憑き物を、無償の支援をしてくれたみんなのお陰で洗い落とせたように思う。

(沢木 和也,荒井 禎雄)

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