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前半戦の併殺打わずか「1」 元オリックス・葛城育郎が注目するT-岡田の“覚悟”

文春オンライン / 2021年7月20日 11時0分

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T-岡田選手

 前半戦のオリックスの快進撃を考えた時、マスコミやプロ野球ファンの人たちはまず投手陣の活躍を挙げるのではないでしょうか。

 確かにオリックス先発陣の充実ぶりは他の11球団と比べてもトップクラス。もはや日本のエースと言っても過言ではない山本由伸選手。2年目で急成長した宮城大弥選手。ポテンシャルの高い田嶋大樹選手。昨年から安定感が増してきた山崎福也選手。ベテランの増井浩俊選手。故障中でも実績のある山岡泰輔選手。

 そして中継ぎ陣も個人個人では防御率は群を抜いて良いとは言えませんが、経験や場数を踏んでいる選手が多く選手層は厚いです。今年から新しく加入した選手兼任コーチの能見篤史選手の存在も、選手サイド、コーチサイドの両サイドの現状を把握し首脳陣とのコミュニケーションを図れる大きな橋渡し役としてプラスになっているはず。彼とは阪神時代に同僚として一緒に戦ってきましたが、その時から状況判断はしっかりできる選手でした。

 このように素晴らしい投手陣に多くの注目と賞賛が注がれていますが、私個人としてはやはり攻撃陣に注目しています。今年のオリックス攻撃陣は本当に素晴らしいです。

スタイルを貫き通した強い気持ち

 昨年までのオリックスの攻撃のイメージは、機動力を中心としたスモールベースボール。しかし首位打者を獲得した吉田正尚選手の力をどうもうまく活かせていないと感じる事が多かった印象です。簡単に言えば彼の前にランナーを出さなければ大丈夫といった感じで打線の中で孤立させられていた状態です。

 しかし昨シーズンの途中に中嶋聡監督に代わってからは、積極的な若手の起用、チーム全体の底上げを目的として指揮を取っていたように思います。このことで中堅、ベテラン選手の奮起を促し、チームの雰囲気やスタイルが徐々に変わってきたと感じています。

 その中でも今年の攻撃陣に勢いをもたらしているのがT-岡田選手ではないでしょうか。

 昨年は3年ぶりに規定打席へ到達したことで、ここ何年かくすぶっていたものを払拭したのでしょう。今の彼からは今年に懸けている姿勢がガンガンと伝わってきます。

 オリックスの日本人最年長外野手、生え抜き16年、入団以来一度も優勝経験無くAクラスも2度。そして16年間で8人の監督を経験しています。この「監督が代わる」ということは選手にとって一大事。必然的にコーチ陣も代わることが多くなり、圧倒的なレギュラークラスならまだしも、それ以外の選手は、自分のプレースタイルを貫き通すことが予想以上に難しいことになるんです。

 そんな中でも、T-岡田選手は強い気持ちで自身のプレーを貫き続けてきたように感じています。これはあくまでも私の見解ですが、そのバックボーンには長く応援してくれているファンの方の“期待を裏切りたくない”という想いや、チームの中での自分の役割の大きさなどを彼なりに考え、プレースタイルを変えることへの葛藤があったのではないかと思います。

 選手の心理というのは本当に繊細です。たとえ小さな心の変化だとしても、フォームの狂いが生じてしまいます。それは他人から見てもわからない、自分にしかわからないほどの小さな狂いなんです。しかしそれがやがて大きな変化になってしまう。誰にも相談できない自分自身で解決するしかない“心の覚悟”です。T-岡田本人に聞いたわけではないのですが、私自身のプロ野球人生での経験から感じたこととして、これを貫き通せたのが今のT-岡田に繋がっているのではないかと感じています(間違っていたらすみません)。

 コロナ禍になってからは会えていませんが、T-岡田選手とは今でも少し交流があります。19年のオフにプエルトリコのウィンターリーグに参加すると聞き、彼は自分自身の置かれている立場がどんな状況であるかを理解し、20年に挑む覚悟の気持ちが伝わってきました。帰国後、偶然に街中で会ったのですが、あの時、ほんの一言、二言交わしただけの時間でしたが、彼の顔つきや会話の内容から気迫を感じ20年は必ずやってくれると確信したものです。

 そして、結果的に20年は規定打席に到達し、今年はさらに勢いを増して今のオリックスの攻撃陣を牽引しています。

併殺数「1」があらわしているもの

 数字的に見ても1つ彼の変化が分かる数字があります。それは併殺打の数です。(前半戦終了時)打席数245で僅か「1」なのです。本来はホームランバッターなので三振やフライアウトは多くゴロアウトは少ないとはいえ試合数を半分消化している段階で「1」というのは素晴らしい数字です。パ・リーグで規定打席以上の選手でも「1」は日本ハムの西川遥輝と楽天の小深田大翔のわずか2人だけ。もちろん、併殺打には複数の要素が加味されますが、決して足が速いとは言えないT-岡田がこれだけ併殺が少ないということは、全力で一塁まで駆け抜けていることのあらわれなのだろうと思います。

 この全力疾走こそが大事な姿なのです。チームの勝利の為、1点を取る為にできる精一杯のプレーをする。その姿そのものがチーム全体の士気を高めるのです。野手最年長の選手のその姿こそが今年のオリックスの強さの象徴ではないでしょうか。

 機動力といえば盗塁やヒットエンドラン、打球判断での好走塁。確かに走力がなければ出来ないことではありますが、“走力がなくても出来る機動力”こそがチームを勝利に導く大きなカギなのだと思います。

 さて、ここまではT-岡田選手についてピックアップしてきましたが、オリックスの攻撃陣全体を見てみても、故障者も少なく選手層の厚さを感じます。内野ではサードに宗佑磨選手を固定出来ていることが大きいですね。彼もこれまでくすぶっていた選手の一人でしたが、今季はここまでほぼ全試合に出場し2番という打順で機能しています。

 そして、攻撃陣の核である吉田正尚選手はさすが安定の成績を残していますね。ただ、今年の打撃陣が昨年までと違うのは、吉田選手一人で背負うしかなかった負担や重圧を、今年はカバーする選手がいるということ。打点、本塁打とも吉田選手と比較しても遜色ない成績を残している杉本裕太郎選手。そして、T-岡田選手の存在が全ての相乗効果となりうまく嚙み合っていると思います。

 テレビ中継を観ていても雰囲気がすごくいいですね。ベンチの首脳陣からも明るさが見て取れるように、以前のように暗く沈み込むことがあまりないように思います。後半戦も11連勝した時のように良い波に乗れば、ますます勝ちを重ねることが出来るのではないでしょうか。そして25年ぶりとなるリーグ優勝を、オリックスのOBの1人として期待しています。

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(葛城 育郎)

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