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藤井聡太が19歳に 羽生善治九段ら中学生棋士のなかでも「10代の成績」は突出していた

文春オンライン / 2021年7月19日 11時0分

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筆者の目前で「初防衛」を達成した藤井聡太棋聖 写真提供:日本将棋連盟

 7月19日に藤井聡太王位・棋聖が19歳を迎えた。14歳2ヵ月でプロデビューして以降、棋力を向上させながら数々の記録を塗り替える歩みは止まらない。

 つい先日は、第92期ヒューリック杯棋聖戦で渡辺明名人を3連勝でくだし、18歳11ヵ月の若さでタイトル最年少防衛。タイトル獲得3期により、最年少で九段昇段を果たしたばかり。今後、藤井がどのような活躍をするか、記録を打ち立てるか、興味は尽きない。

四段昇段の平均年齢から8年も早い藤井

 19歳というが、そもそも10代で棋士になるのは容易ではない。それは、現在でも藤井が現役棋士で2番目に若い(現役最年少は伊藤匠四段)ことでもうかがえる。

 本稿では、藤井や棋士にまつわるデータを紹介していこう。古い時代のデータは、はっきりしないものが多いため、ここでは加藤一二三九段以降の棋士番号のある棋士を対象とする。

 加藤の棋士番号は64。今年4月に四段昇段(プロデビュー)した高田明浩四段は、棋士番号が328である。加藤から高田までの265人のうち、19歳未満で四段昇段した棋士は50人。20歳未満と範囲を広げても79人だ。

 また、棋士の四段昇段時の平均年齢は、調べたところ、およそ22歳2ヵ月だった。将棋界全体で見ると、10代で四段昇段すれば平均よりも早いのだ。藤井が四段に昇段した14歳2ヵ月という年齢は、平均から8年早いことになる。通常なら14歳は奨励会の2、3年目でプロを目指していたり、試験を受けたりする年齢だ。その時点で棋士になっていること自体が規格外であり、さらに19歳になる前の九段昇段も驚異的というほかない。

 こんなデータもある。1962年11月生まれの中村修九段は、中学2年の1976年に中学生名人戦で優勝し、同年に奨励会に入会する。そのころ、同年4月生まれの谷川浩司九段が1976年12月に14歳8ヵ月の若さで四段昇段した。その後、中村は1980年7月に17歳7ヵ月で四段昇段し、当時の最年少棋士となっている。中村の昇進はかなり早いのだが、それに輪をかけて谷川の昇段ペースが早すぎるわけだ。

 中学生棋士がいかに傑出した存在かわかる。

藤井の成績は、中学生棋士の中でも突出している

 次に藤井と同じ中学生棋士である加藤(14歳7ヵ月で四段)、谷川(14歳8ヵ月で四段)、羽生善治九段(15歳2ヵ月で四段)、渡辺明名人(15歳11ヵ月で四段)の年齢別の成績を調べてみた。それが表の一覧である(藤井の成績は、未放映のテレビ対局を除く)。

 4人の19歳になるまでの主な戦績を紹介すると、加藤は18歳3ヵ月でA級棋士、谷川はB級1組昇級、羽生は竜王挑戦、渡辺はC級1組昇級をしている。それぞれ好成績を挙げており、将来の飛躍もうなずける。

 だが、それらを大きく上回るのが藤井の成績である。表を見てわかるように、5人の中でもっとも多く勝ち、なおかつ負け数がもっとも少ない。しかも、唯一タイトル戦を経験し、獲得した上で5人中最高の成績なのだ(羽生は竜王挑戦を決めているが、七番勝負前に19歳になった)。そして、タイトル3期で最高段位である九段まで上り詰めた。19歳になるまでに挙げた実績があまりにも多い。

 ちなみに、藤井は四段昇段から5年近く指していて、これまで3連敗したことがない。

 表で藤井の成績を見ていると、15歳のころは勝率8割を切っている。7割8分という勝率も非常にすぐれているのだが、ほかの年齢時の成績が高すぎるため、不調のように見えるのが恐ろしい。実際は、15歳時に藤井はC級1組昇級、第11回朝日杯で史上最年少の全棋士参加棋戦優勝、竜王戦のランキング戦連続昇級といった戦績を挙げて、四段から七段に昇段している。

 そうした棋士が、19歳になる前に将棋界の最高段位である九段に昇段してしまうのは言葉もない。空前絶後の記録になるかもしれない。

2020年度の成績は…

 ムック『読む将棋2021』の「数字で読む将棋」で、筆者は藤井の年度別の成績に触れた。その後、2020年度の成績が44勝8敗(勝率は0.8461)と決まったので、それについて分析しよう。

 現在、藤井、渡辺、豊島将之竜王、永瀬拓矢王座がタイトルホルダーであり、「4強」と呼ばれることが多い。下の表は、2020年度における4強の対戦成績である。同年度は、八大タイトル戦のうち名人戦で豊島-渡辺戦、棋聖戦で渡辺-藤井戦、叡王戦で永瀬-豊島戦、王将戦で渡辺-永瀬戦が行われ、4強同士で激しくぶつかり合った。

「4強」以外の棋士には9割勝っている

 通算成績からするとさすがに勝率は落ちるが、藤井は3人に8勝4敗と勝ち越している。そして、この数字を裏返しに見ると、2020年度は4強以外の棋士との対戦は36勝4敗、つまり9割勝っていたことがわかる。

 その40戦を順位戦のクラス別に分けたのが下の表だ。対B級2組や対C級でほとんど負けていないのは、順位戦で全勝だったことを踏まえるとうなずけるだろう。強豪ぞろいの対A級と対B級1組でも高い勝率なのが圧巻である。

 渡辺、豊島、永瀬の3人も、4強以外の対戦では7割以上勝っており、高いレベルで安定している。

 実際、2019年以降のタイトル戦は必ず4強の棋士の誰かが登場し、2019年の王位戦以外はすべてのタイトルを得ている。4人がここ2、3年の将棋界を牽引しているのは間違いない。八大タイトルを8人で持ち合う状況が生じた2018年からは状況が変わっている。

 第2グループが4強にどう切り込むか、4強同士の争いを誰が制するかが現在の棋界の大きなテーマといえる。

今後の棋界勢力図を占う重要な争い

 2021年度の藤井は本稿執筆時点で、対渡辺戦3勝0敗、対豊島戦1勝1敗、対永瀬戦1勝0敗である。ここまで2勝7敗と対戦成績で分が悪い豊島とは、王位戦で防衛戦をこなしつつ、叡王戦で挑戦して「十二番勝負」となっている。

 また、現在進行中の竜王戦で藤井が挑戦者になれば、こちらも豊島とのタイトル戦になる。豊島と藤井のタイトル戦は今後の棋界勢力図を占う意味で重要な争いになるだろう。

(君島 俊介)

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