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「気になるので結構見てますよ」背番号11の先輩・由規が語った奥川恭伸の2年目

文春オンライン / 2021年8月22日 11時0分

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ルートインBCリーグ・埼玉武蔵ヒートべアーズの由規 ©HISATO

 背番号「11」が躍動する。

 奥川恭伸が、力と技で観客を魅了する。もちろん成功ばかりではないけれど、可能性と希望に溢れるピッチングを見せている。

 そんな奥川を「気になるので、結構見てますよ」と、かつて「11」を背負った由規が、自身の高卒2年目も振り返りながら語ってくれた。

 1試合ごとに確かな成長を感じさせる、今季の奥川。

 甲子園を沸かせたエースは、ドラフト競合の末に東京ヤクルトスワローズに入団。1年目の2020年はファームで過ごし、11月10日の神宮最終戦でプロ初登板を果たした。その時には5失点と打ち込まれたが、2年目の今季は一軍キャンプに参加。開幕カードから、投球内容と回数は日を追うごとに進歩し、6月20日には7回無失点と申し分ないものとなった。

 150キロを超えるストレートとキレのいい変化球。抜群の制球力。大舞台に強いメンタル。大器が実力を発揮しつつある。順調な高卒2年目シーズンだ。

 一方、現在ルートインBCリーグ・埼玉武蔵ヒートベアーズで現役を続ける由規の、今の背番号は「18」だ。今季は先発投手を任されている31歳。

 由規がヤクルトを離れたその年にドラフトで指名され、間を置かずに11番を与えられたのが奥川だった。その時の気持ちはどうだったのか。奥川は由規にとってどんな存在なのだろう。

「自分が着けた背番号をそのまま受け継ぐっていうことが、僕にとってはすごく嬉しかった」

「継承ってそんな大それたことではないですけど。僕も言うほどすごい活躍をしたわけではないので。ただ、自分が着けた背番号を奥川がそのまま受け継いだっていうことが、僕にとってはすごく嬉しかったですね」

 陽焼けした笑顔で語る由規は、甲子園で投げる奥川の姿も見ていたという。甲子園で活躍し、競合の末にヤクルトに入団したその境遇は、自身と重なる部分がある。

「ピッチングスタイルは重なる部分はあまりないですけどね。結構見てますけど、やっぱりほぼ完成されてるんで。綺麗なピッチングするなって見てました。僕はどっちかっていうと荒々しくて、投げてみないと分からない感じだったなぁって気がします」

 由規の前任で「11」のイメージが強いのは、何と言っても荒木大輔(現日本ハム二軍監督)だろう。高校時代も着けた背番号を1983年から1995年まで、ヤクルトでの現役時代はずっと背負い続けた。

 とはいえ、荒木の甲子園での姿や現役時代の頃のイメージは、由規の入団時にはもう遠かった。由規も話を聞いてはいたが、正直ピンとは来なかったと言う。

「11」の先輩、荒木大輔コーチから教わったこと

「ヤクルトの11番というよりも、球界の11番を見た時にエースと呼ばれる人が多いし、ピッチャーの代表的な番号だという意識がありました」

 荒木は投手コーチとして由規と長く関わった。「すごくお世話になりました。あの選手を見習えとか、この動画を見ろとか。西武のコーチもされていたので、僕がオールスターに選ばれた時には『涌井と岸に話を聞きに行け』と、事前に話を通してくださって、当日色々話を聞くことが出来ました」

 高卒1年目の2008年から、由規は一軍で6試合を投げ2勝1敗。ファームではイースタン最多勝となる8勝を挙げた。

「開幕一軍を狙ってたけど、足首の怪我もあり開幕は二軍。それでも二軍でローテーションで回って、ある程度自信が出てきた時に呼ばれたという感じです。今となってはいい階段の駆け上がり方でしたね」

 2年目には開幕ローテーションに入り5勝10敗。登板数とイニング数が大幅に増えた。

「この年はもう何回もマメ潰して、6回7回抹消したんで……それは勿体なかったです。普通だったらもっと投げてもおかしくなかった」

 いい投球をしたと思うとつまずく年だった。ファンもやきもきしたが、本人も歯がゆかっただろう。

 一つの転機があった。きっかけは投手コーチの言葉だ。

「そのころ伊藤智仁コーチに『ボールの握りから変えろ』って言われたんですよ。で、3年目にそれがハマった感じでしたね」

 翌2010年にはキャリアハイの12勝を挙げている。背番号11がひときわ強く輝きを放った時期だった。

「一軍に出るかどうかの投手にとって二軍生活は大事」

 投手コーチとの関係は、投手の成長に大きな影響を与える。特に一軍か二軍かという位置にいる投手にとって、二軍投手コーチの存在は大きい。

 今年のヤクルト二軍は、昨年からの小野寺力・松岡健一両コーチに加え、二軍投手チーフコーチとして熟練の尾花髙夫が復帰。スカウトだった山本哲哉が育成投手コーチに就任し、手厚い布陣となった。奥川が小野寺二軍投手コーチとの二人三脚で高卒1年目を過ごしたように、投手一人ひとりに向き合い、育成と調整を手掛けている。

 その点に水を向けると、由規は強く頷いた。「その環境って大事だと思います。一軍に出るかどうかの投手にとって二軍生活は大事。今、多分久しぶりに3人体制だと思うんですけど、やっぱり(ビジター試合で)残留した時の練習レパートリーとか、引き出しが全然違う」

 最近では戸田球場の試合中に、試合に出ない投手陣がサブグラウンドで練習している姿がある。コーチが投手陣に割く時間も見る目も、確実に増えている印象だ。

「試合でボールボーイとかやらずに練習できるんですよね。それめちゃくちゃ大事。たまには試合を見ることも必要だけど、3時間半とか試合見てバット引きやって……その時間でできることって結構あるんです。その時間は大事」と由規は言い切った。

 若い選手には、有効に時間を使ってほしい。自分で考え理解して練習に取り組むことをしてほしい、と。

 今、31歳になった由規は、当時よりも確実に自分を知り、多くのものを自分で考えて取り入れることが出来るようになった。そうして自分のピッチングを高めながら、若い選手たちにもチャンスを掴んでほしいと見守っている。

 ペナントレースも後半戦が始まり、首位まで僅差の大事な初戦に、奥川は先発を任された。

 7回88球1失点。被安打4奪三振9。無四球の好投――。

「開幕時よりすべての球を自信を持って投げている印象でした。その余裕からなのか、表情も以前より飄々と投げているようにも見えましたね」

 投げたあとは登録抹消。まだ奥川は育成プランの途中だ。高卒2年目で着実に力をつけ、来季へ大きく羽ばたく予兆にも見える。

 奥川と一緒に野球をやったことがあるわけではない。でもだからこそ、という思い入れも持っているのだと由規は言う。自身と通じるところもあり、でも全く違うタイプの「背番号11」に、由規はエールを送る。

「チームも優勝争いをしているので、これから終盤になればなるほど、もっと緊張感が出てきたり、プレッシャーを感じたりする場面が増えると思う。でもそんなことは気にせず、失敗を恐れず若々しく! 打てるものなら打ってみろ精神でガンガン投げていってもらいたい。そうすれば結果も自ずとついてくる」

「11」が登るマウンドを、由規もファンとともに楽しみに待っている。

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(HISATO)

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