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“業界でしか生きてこなかったから感覚がズレていた” 元女優が明かすAV引退後の生活の「リアル」

文春オンライン / 2021年7月24日 18時30分

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©️iStock.com

「卑猥なことをしている認識もなかった」彼氏に認められたくてAV女優デビュー…身バレした瞬間の周囲の“意外な反応” から続く

 AV女優の生き様に関する本が多数出版されるなか、女優一人ひとりのライフヒストリーを詳細に紹介した一冊が話題を集めている。

 そのタイトルは『 AV女優、のち 』(角川新書)。ここではライターの安田理央氏による同書の一部を抜粋。一世を風靡したAV女優、長谷川瞳氏の引退後の生活について紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

AV女優から風俗嬢へ

 04年に、紋舞らん、三上翔子、美里かすみとの共演作『ぶっとびシンデレラ』(ケイ・エム・プロデュース)を最後に長谷川瞳はAVを引退する。

 その頃、長谷川瞳には久しぶりの彼氏ができていた。

「一応、仕事のことは知っていて、理解はしてもらえていたはずでした。でも、やっぱり撮影の日になると機嫌が悪くなるんですよね。台本に『アナル中出し』っていうのが書いてあったのを見て、彼が激怒したことがあるんです。『オレにもさせないことをおまえは仕事でさせるのか!』って。本当は、撮影そのものは疑似だったんですけどね。でも、わたし自身もちょっとおかしくなっていて、ある日の夕飯のときに自分の初期の作品とかを見せたんですよ。『こんなに頑張っていたんだ』っていうのを知って欲しいがために。でも、彼は凄く怒って箸をバーンって投げて……今考えてみれば、怒るのも当然なんですけどね」

 長いことAV業界でしか生きてこなかったために、自分の感覚がずれていたことに気づかなかったのである。

「友だちもAV関係者しかいないって感じでしたからね。でも、その話をあるスタッフさんにしたら『ハセ、それはあかんで』って注意されました(笑)」

 結婚も考えていたが、結局は彼の浮気が原因で別れることとなった。

「一緒に暮らしていたのですが、彼がキャバ嬢と浮気をしていたことが発覚して……。問い詰めたら、泣きながら『悪いけど別れてくれ』って言われました。でも、『これからどうしよう』と思いましたよね。事務所にも、『もう戻りません』って啖呵を切って辞めちゃったし、盛大に引退式もやってもらっちゃったし、そうなるとAV業界には戻れない。じゃあ、もう風俗しかないかなって……」

 普通に一般職で働くという選択肢は考えなかった。

「学歴もないし、一般的な仕事もしたことない。彼氏のキャバクラ遊びが原因で別れたのだから、水商売もしたくない(笑)。じつはわたし、実家に毎月送金していたんです。それが普通の仕事じゃ賄えない金額で……。彼氏はそれなりに稼いでいたので、『結婚したらおまえの家族の面倒も見るよ』って言われていたのですが、それもなくなっちゃった。そうなると、もう風俗しかなかった。なおかつ、稼げるとなるとソープランドだろうと」

 最初は吉原のソープランドで働いた。

「抵抗はめちゃめちゃありましたね。仕方なくやるという感じだったから、今思うとその頃のお客さんには申し訳なかったと感じています。実際に、接客態度もよくなかったと思いますしね。風俗をやっているというのを人に知られるのも、どこかで抵抗がありましたし」

ソープの奥深さを知って、覚えたやりがい

 吉原で3カ月ほど働いて、現在の川崎の店に移った。そこで、ソープ嬢としての心がけを叩き込まれることになる。

「店長に怒られました。『ソープはそんなに甘い世界じゃないんだ。今までAV女優で頑張ってきたなんてことは1回忘れろ』と言われて。泣きましたね……。ただ、ソープの世界の厳しさがわかってきたら、やりがいという部分では、AVよりもあるんじゃないかと思えてきたんです」

 店長の他にも、ソープの仕事の奥深さを教えてくれた人物がいた。

「ソープのプレイを講習してくれた“先生”がいるんです。わたしのひとつ下の女の子なんですけど、もうプロフェッショナル中のプロフェッショナルという感じだった。わたしは彼女にソープ嬢としての極意を教えてもらいました。素直に、『凄い!』と思える人だったんです。『この人だったらお客さんは絶対に喜んでくれるだろう』『この人みたいになりたい』という気持ちに素直になれました。そこから、仕事に対する姿勢が変わりましたね」

「長谷川瞳の大ファンだったんです」というお客さん

 とはいえ、プロの男優だけを相手にしていればいいAV女優と、不特定多数の客を相手にしなければならない風俗嬢ではちがいも大きい。そこへの抵抗はなかったのだろうか。

「正直、それはありましたよね。男優さんみたいにシャワーを浴びてきてくれるわけじゃないし、お客様にはいろいろな人がいるわけです。最初こそそこに抵抗はありましたけど、今なんかはいろいろな人がいるってところに面白みを感じています」

 当初は、在籍していた事務所との契約の問題で「長谷川瞳」の名前が使えず、ただの「長谷川」という源氏名で仕事をしていたが、それでも働いていることを調べてやってくるファンも大勢いた。

「『自分は長谷川瞳の大ファンだったんです』って言ってくれるんですけど、わたしも言っちゃいけないので『それを長谷川瞳さんが聞いたらとてもお喜びになるでしょうね』って言ったり(笑)。お客様もわかってくれて話を合わせてくれました。しばらくしてから長谷川瞳と名乗れるようになったのですが、もう普通に『長谷川』としてのお客様がついている状態になっていましたね。でも、やっぱり今でも『ファンでした』と言って来店してくれるお客様もいます。ありがたいことですよね」

 そういったかつてのファンである客と接するときは、緊張もあるという。

「みなさんとても優しいんですよ。それこそ、アイドルに会うみたいな気持ちで来てくださっています。だから、『もうただのおばちゃんだから、本当にごめんなさい……』って気分になっちゃいますね。それでも、『変わってないね』と言われると嬉しいですよ。当時の話をするのも楽しい。過去の話も嫌ではありません」

長谷川瞳じゃない自分は考えられない

 AV女優として活動していた4年間は、自分にとってどんな時期だったと思っているのだろうか?

「青春時代でした。本当に青春時代だったと思う。当時、仕事で知り合った女優の子たちとは今でも友だちです。頻繁に会うというわけではないけれど、会うと当時みたいに自然に話すことができる。やっぱり同じ時代をわかりあった“戦友”みたいなところがあるんですよね」

 もしAVをやらなかったら、別の人生があったのではと考えることはないのだろうか。

「それは考えられません。やらなかったら、暗い人生を歩んでいたんじゃないかな? あの頃は精神的に不安定でしたし、AVに救われたんだと思います。風俗業界でも同じようなことがあるんですよ。風俗をやることで精神を病んじゃう子もいますけど、逆に風俗をやったことで治ったって子もいるんですよね。AVの現役時代で後悔しているのは、ベストじゃない状態での作品が世に出てしまったということ。あれを見てしまったユーザーさんには謝りたいです」

 長谷川瞳の名前を使うようになって、もう16年になる。その名前は、もう本名と変わらないくらいに自分自身と固く結びついている。

「長谷川瞳を切り捨てるということは考えたことはないですね。もう自分自身ですし、長谷川瞳じゃない自分は考えられません。『長谷川瞳ちゃん』だったおかげで、売れてくれたおかげで今の自分があって、『本当にありがたいな』って思っています。むしろ、長谷川瞳にならなかったらと考えるとゾッとするくらい(笑)。考えたくないです」

ライターとしての長谷川瞳

 長谷川瞳はソープランドに勤務する傍ら、ライターとしての仕事もしている。AV女優を引退してからすぐにはじめているので、キャリアは10年以上になる。

「AV女優をしているときに、雑誌に漫画を描くお仕事があったんです。そのときに担当してくださった方が『長谷川さんはなにか書いたらいいのに』と言ってくれて。それから、ライターのお仕事をいただくようになりました。長谷川瞳の名前で書くこともありますし、名前を出さないこともあります。むかしから書くことは好きでしたから楽しいですね。それと、じつは小説を勉強しています。全然ちがう名前で書いていますが『オール讀物』(文藝春秋)新人賞の三次までいったこともあるんです」

 現在書いているのは、風俗の仕事をテーマにしたものだという。

「『それを書くのはタブーなのかな』って思っていたのですが、せっかくみんなが知らないようなことを体験しているんだからそれを面白おかしく書くのもいいかなと考え直して。でもわたし、あまり官能系は上手じゃないみたいなんですよね。エロくならないんです(笑)」

 彼女が勤務する店のホームページにある本人のブログを見ると、毎日のように映画を観て、それについての感想を書いている。それも、フランソワ・トリュフォー(50年代~80年代に活躍したフランスの映画監督)の作品や小津安二郎の作品など古い映画が多い。

「以前から映画は好きだったのですが、最近になってインターネットの動画配信で見られるようになったこともあって、頻繁に見るようになりましたね。小説も今までは現代作家さんの作品ばかりを読んでいたんですけど、クラッシックなものの良さがわかるようになってきました。多分、それはわたし自身の年齢的なものなんでしょうね。今までわからなかったものがわかってきました」

自分で「大丈夫かな?」って思うくらいに幸せ

 書く仕事をして、店の仕事をして、映画を見て、本を読んで、ランニングをして……。そんな今の生活が最高に充実しているという。

「このルーティンを過ごせることが幸せです。わたし、自分で『大丈夫かな?』って思うくらいに幸せなんです。ここ10年くらいは、ずっと今が幸せだと思って生きています」

 ただし、特定の彼氏はずっと不在だという。

「ずいぶん長いことプライベートではセックスしていませんね。でも、お客様が上手なんですよ! それこそ、男優さんに負けないくらいに上手な人が世の中にはゴロゴロしてるんです。びっくりしますね。だから、それで十分に性欲は解消できちゃう。『仕事だと気持ちよくない』という人もいるようだけど、わたしは関係なく気持ちよくなれる。だから、体力的にも疲れるのであまりたくさんのお相手はできないんですよ(笑)」

【前編を読む】「 卑猥なことをしている認識もなかった」彼氏に認められたくてAV女優デビュー…身バレした瞬間の周囲の“意外な反応”

(安田 理央)

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