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ハロプロ、48グループの不在…日中韓オーディション番組でわかった「アイドル戦国時代」の儚さ《『ガルプラ』でも韓国勢リード》

文春オンライン / 2021年8月20日 17時0分

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『GIRLS PLANET999』公式サイトより

《『プデュ48』とは大違い》大健闘の日本勢、暫定1位は日本人…オーディション番組『ガルプラ』に見る日中韓アイドルの“今” から続く

 日韓中から33人ずつ99人の参加者を募って始まった、K-POPオーディション番組『Girls Planet 999 : 少女祭典』(以下『GP999』)。

 前編では、中国と日本の参加者のパフォーマンスを確認した。日韓それぞれの影響が感じられた中国勢のお披露目パフォーマンスに対し、日本勢には日本アイドルの“匂い”をまったく感じさせない存在も登場した。

 東アジアで盛り上がるK-POPオーディション番組は、どこに向かい、なにを目指すのか──。(全2回の2回目/ 前編 から続く)

オーディション番組経験のある「猛者」が次々登場

 韓国勢の水準は日中の参加者よりもさらに高かった。トップ9候補者は、33人中16人と半数近くにもなった。

 強烈なインパクトを残したのは、ボーイズグループ・NCT127の「英雄(Kick It)」を披露したソ・ヨンウンだ(※動画開始時に立ち位置が向かって左)。強い眼力を軸とした挑発的なそのパフォーマンスは、強い女性像を表す“ガールクラッシュ”コンセプトだ。

 日中ではまださほど見られないガールクラッシュは、BLACKPINKのブレイク以降にK-POPで主流となりつつあるスタイルだ。それは旧いジェンダー観に基づいた疑似恋愛対象としての“アイドル”から一歩先に進んだことを示唆している。

 韓国勢では、すでにデビューして活動を続けている参加者も注目された。たとえば、FANATICSの現役メンバーであるキム・ドアや、Cherry Bulletのキム・ボラがそうだ。

 キム・ドアは、14歳だった3年前に『PRODUCE 48』(以下『プデュ~』)に参加し、30人にまで残ったこともある(最終23位)。翌2019年にデビューしたが、その活動は決して順調とは言えない。新型コロナウイルスが大きな障害となっているからだ。メンバー内でもグループ解散の話が出ているとキム・ドアは涙し、『GP999』出演が最後のチャンスだと語った(※動画の上下ブラックの衣装)。

 デビュー済みでもっともキャリアが長い参加者は、CLCのチェ・ユジンだ。『GP999』2回目までの放送は、さまざまな点においてこのユジンを中心に組み立てられている。

 彼女は2015年にデビューし、すでに7年近くのキャリアとなる。だが7年目はK-POPにおける大きな関門でもある。韓国では公正取引委員会が芸能人の複数年契約を7年までとの指針を出しており、その期限に達するとグループの解散やメンバーの脱退が相次ぐ。これが「K-POP・7年の壁」だ。

 ユジンも番組内で、「会社からもうグループの活動はしないと聞かされた」と、CLCの活動終了に触れた。運営するCUBEエンタテインメントは、2018年に(G)I-DLE、今年はLIGHTSUMと、ガールズグループを立て続けにデビューさせており、大ブレイクしなかったCLCの解散は避けられない情勢だ。

オーディション番組の「セーフティネット化」

 チェ・ユジンやキム・ドアなど、現役やデビュー経験のある参加者は、韓国勢が9人、日本勢が6人、中国勢が8人と、全体で23人にものぼる。チェ・ユジンほどのキャリアを持つ参加者は他におらず、ほとんどがチャンスを掴むために参加している。

 過去に他のオーディション番組に挑戦した者も多い。韓国勢は2人、中国勢は13人、そして日本勢は2人だ。たとえば中国のスー・ルイチーは、2018年に『創造101』で25位、2020年に『創造営2020』で11位と上位に食い込んだが、ともにデビューを逃した。彼女は成功を目指してサバイバルを渡り歩いている。

 オーディション番組は、参加者の能力を伸ばしたり、ショウケースであったりするのと同時に、再チャレンジを可能とするセーフティネットでもある。その成功例は、IZ*ONEのリーダーとして活躍したクォン・ウンビだろう。

 彼女は2014年にYe-Aというグループでデビューしたものの鳴かず飛ばずに終わり、2018年にIZ*ONEで2度目のデビューを果たして成功した。今月にはソロデビューも予定されており、オーディション番組が大きな転機となった。

 そうした状況は、プロ野球やサッカーで活躍の場を求めて移籍するアスリートを連想させる。スポーツでは、実力を発揮できない選手が移籍して花開くケースが珍しくない。K-POPオーディション番組も単に参加者を競争させるだけでなく、人材の流動性を高めて業界を活性化する機能を果たしている。

少ない日本のグループアイドル出身者

 日本でもアイドルが芸能プロダクションを移籍して再デビューするケースはあるが、K-POPほどのダイナミズムはない。今回の企画でも、日本のグループアイドル出身者は少ない。

 確認できる範囲では、元X21(オスカー)の川口ゆりなと元革命少女(ローカルアイドル)の桑原彩菜、元Prizmmy☆(エイベックス)の久保玲奈、そして元さくら学院(アミューズ)でBABYMETALのサポートメンバーを務めていた岡崎百々子の4人だ。事前審査で落とされた可能性もあるが、00年代の「アイドル戦国時代」の残滓はまるでない。

 とくに残念なのは、すでに解散したE-girlsやフェアリーズの元メンバー、あるいは『プデュ48』で厳しく評価された48グループや、実力派だと目されているハロプロのメンバーなどが参加していないことだ。もし参加していればHKT48(+AKB48)からIZ*ONEにステップアップした宮脇咲良のように、大きなチャンスを掴む可能性もあったはずだ。

実力とともに重視されるスター性

 日韓中の参加者によるお披露目パフォーマンスは、「K-POPマスター」と呼ばれるパフォーマーや振り付け師が評価していった。K-POPの大先輩であるマスターは、トレーナーとして彼女たちを指導する立場だ。

 今回その中心にいるのは、少女時代のティファニーと、元ワンダーガールズのソンミだ。ともに2007年にデビューして大ブレイクした両グループは、現在に続くK-POPガールズグループの基礎を築いたような存在だ。現在もソロで活躍するふたりは、10代の頃から切磋琢磨してきた関係だ。

 ふたりの評価基準は、とても興味深いものだった。

 ティファニーは「実力とディテール」、そして「表現力」を重視し、かなりハッキリと参加者にコメントする。ただ、その多くはヴォーカルやダンスの技術的な側面についてで、ドライかつ論理的に改善点を淡々と指摘する。対してソンミは、参加者の「オーラ」や「雰囲気、元気さ」に注目する。ある参加者に対しては、「才能はあるんだけど、オーラを感じられない」とまで言う。

 ティファニーの「表現力」とソンミの「オーラ」は、近い要素を指し示している。それらはオーディエンスを惹きつける魅力であり、一言で表せば“スター性”だ。

スター性を見抜くオーディエンスの投票

 K-POPのオーディション番組では、ダンスやヴォーカルの能力と同じくらいスター性が重視される。昨年日本で行われた「Nizi Project」でも、主催のJYPエンタテインメントは、ダンス・ヴォーカル・人柄とともに、スター性を4つの評価基準のうちのひとつとしていた。たとえばNiziUのアヤカは、実力よりもこの資質を買われてメンバーに選ばれた。

 その逆に、オーディション番組には実力はあるもののスター性の乏しい存在がかならず登場する。練習ではとても上手だが、パフォーマンスが型にハマりすぎていてダイナミズムを失い、ステージで輝かないタイプだ。言い方を換えれば「上手くなりすぎている」状態だ。

 伸びしろ(将来性)を感じさせないそうした参加者は、オーディション中盤までは確実に残るが、たいていは殻を破れずに消えていく。今回もそうした存在がすでに複数確認されている。

 人気に直結するスター性は、言葉で説明できても計量化することは簡単ではない概念だ。歴史的に美の基準が一定ではなく絶対的でもないように、スター性の質も時代によってコロコロ変わる。それを確実に掴むことは簡単ではない。

 だが、この「スター性」を感覚的に見抜き、リードする存在がいる。ファンでありオーディエンスだ。よって、その民意というリソースを活用して、この「スター性」を発掘・構築することが、もっとも効率の良い手段となる。

 では、そのための具体的な方法論とはなにか?

 それが投票だ。K-POPオーディション番組は、オーディエンスの投票によって勝ち残る者を決め、盛り上がりを拡大して続いてきた。今回の『GP999』も、1月にローンチしたばかりのK-POPファン向けスマートフォンアプリ・UNIVERSEで投票が行われる予定だ。

 オーディエンスは参加者のスター性を見抜き、一推しメンバーを見つけて応援していく。その熱量がSNSでヴァイラルに拡がって熱狂を巻き起こし、参加者を鼓舞するのと同時に番組を盛り上げていく。00年代前半の『アメリカン・アイドル』から続いてきた視聴者参加型のオーディション番組は、このように練られた構造だ( 「K-POPオーディション番組は音楽のメジャーリーグを目指す」2021年8月6日 )。

番組の試金石は日韓中の政治的衝突

 『GP999』のオーディションは、8月20日の第3回放送から本格化する。3セル(9人)が1チームとなり、同じ課題曲で競うミッションが始まる予定だ。参加者が面識を得てから間もないこのバトルは、チームワークがその内容を大きく左右する。そして、その結果として半数近くが足切りされる。

 『プデュ』シリーズの前例を踏まえると、その後はポジション別(ヴォーカル・ダンス・ラップ)のバトル、レコーディングしたオリジナル曲のバトル、そして最終審査へと向かうと予想される。

 注目されるのは、この新たなオーディション番組でどのようなK-POPのイデオロギーが伝えられるかだろう。冒頭で説明したように、番組コンセプトは「K-POP=世界共通言語」だ。だが、日本と中国から多く参加したこの企画がどれほど円滑に進むかは、始まってみなければわからない。

 トラブルが生じる可能性ももちろん当然ある。日韓中3ヵ国の文化的な距離は縮まったが、政治的にはこの10年ほどともに良好とは言えない関係が続いている。結果、K-POPでも小さくない炎上劇が少なからず生じている。それもあって、制作側はこの番組でいっさい国旗を使用しないなど、政治的な衝突を防止することに神経を尖らせている。

 ただ、それでも番組の注目度が上がる中盤以降には、各国の排外主義者などが騒ぎ出す可能性は高い。避けられないその事態に直面したとき、K-POPのイデオロギーはそれをどのように乗り越え、そしてデビューグループを成功させるか──それこそが世界共通言語としての試金石かもしれない。

(松谷 創一郎)

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