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耳元で「金で男を買った気分はどう?」と…30代女性が2時間2万円の「女性用風俗」に救われた、“切実な理由”

文春オンライン / 2021年9月2日 17時0分

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写真はイメージです ©iStock.com

 どうしようもなくのめり込んでしまう趣味を「沼」と呼ぶことが増えている。不倫・ママ活・スピ・推し・タワマン…… 『沼で溺れてみたけれど』(講談社) では、『浪費図鑑』の編著者でもあるひらりさ氏が様々な「沼」に溺れた女性たちに取材している。

『沼で溺れてみたけれど』 から、切実な理由から「女性用風俗」という「沼」に溺れた女性のエピソードを紹介する。(前後編の前編/ 後編 を読む)

舞い込んできたDM「実は女性用風俗を利用しています」

 人生の大半、恋人がいない。二〇一九年もそうだった。「劇団雌猫」名義で三冊書籍を刊行し、推し俳優チュ・ジフンができ、仕事も趣味も充実した一年だったけれど、「恋愛にももう少し時間を割いておくべきだったのでは……」という心の声はたまに襲ってくる。

 普段は忙しさにかまけて忘れているが、誕生日、クリスマス、バレンタインデーといったイベント事が訪れたり、他人の慶事の話が飛び込んだりしてくると、心の奥底のどこかをざらりと撫でられるような感触がある。たわむれにマッチングアプリをインストールしては、渦巻くエネルギーに目眩(めまい)がして、すぐに閉じていた。

 日々は充実しているし、結婚・出産に対して切望があるわけではない。世界に無数にいる他者のなかから誰かを選んで、関係を築いていくことに、どんどん怖気付いている。いっそホストクラブとかレンタル彼氏とか、そういう“沼”で疑似恋愛をしてみると自分が求めているものが見えるのかも……? と、思ったりもした。

 振り子のように心が揺れ動いていた二〇一九年の冬、Twitterに一通のDMが舞い込んだ。何度か対面したことがあるフォロワーのミユキさん(39歳)からだった。

「連載、楽しく拝読しています。この間話せなかったんだけど、実は一年前から女風(女性用風俗店)を何度か利用していて、男性セラピストにお金を払っています。いろいろ他人に話したいけれど、そんなにおおっぴらには言えない課金のため、悶々としており……。よかったら話を聞いてくれない?」

 なんと、ホストもレンタル彼氏も飛び越えて、女性用風俗の話だった。

 聞いたことはあったけれど、まさか身近な知人に、利用者がいたとは。そんなに簡単にアクセスできるものなの? というか一体どのような価格帯なの? というか一体どんな人たちが働いているの? 疑問はつきず、すぐにミユキさんにお会いすることにした。

二時間で2万円くらいと知って「え、払えるじゃん」

 フリーランスのデザイナーとして働いているミユキさんが、女性用風俗を利用し始めたのは、二〇一八年十二月のこと。その前に、配偶者とのすれ違いが続き、十年続いた結婚生活を解消した流れがあった。

「家を出て、一人暮らしを始めて、『結婚してたときにできなかったことをいろいろしよう!』と思ってマッチングアプリに登録したりもしたのですが、うまくいかなくて……。離婚後、一年目のクリスマスの直前に、ある女風のサイトを訪問しました」

 その店で働く男性をたまたまネット番組で見かけ、サービスの存在を知ったのだという。

「その人——女風業界だとセラピストやキャストっていうんですけど——は、“最低男”のようなくくりで、自分の女性経験をあれこれ話していました。ホスト系の顔立ちでした。こういう人が働いているんだなぁとだけ思って、その後しばらくは忘れていたんです。

 でも、個人的にメンタルが落ちてしまったタイミングで『女性用風俗』で検索したところ、二時間で2万円くらいの相場感なのを知って。『え、これなら払えるじゃん』と思って、そのまま店のLINEアカウントにメッセージを送って、初利用の予約をしました」

 サイトには、セラピストのプロフィールと写真、出勤スケジュールなどが掲載されているが、顔を完全に出している人は少数。出しているパーツの雰囲気や自撮りの撮り方、プロフィール文を吟味して、一人のセラピストを指名した。

「初回はとっても緊張してましたね。いまだに相手から『最初はガチガチだったよね』と言われるくらい(笑)。風営法の条文を読み込んで、ブログやSNSで体験談もチェックして、ホテルは休憩でも予約ができる小綺麗なところとして『バリアンリゾート』を予約しました。指名料、ホテル代、相手の交通費を入れて、合計3万円くらいです」

「成人マンガの宣伝で見たようなこと、全部やってもらってる!」

 念入りに下調べをして迎えた当日。写真から予想した通りの、清潔感があってすらっとした20代前半の青年がやってきた。ミユキさん曰く「AV男優の一徹さんの顔をもう少し縦にのばした感じ」とのことだ。

 まずはカウンセリングシートを渡されて、あれこれ記入した。

「お店をどこで知りましたか? とか、呼んでほしい名前は? とかに答えていくと、下にいくにつれてだんだんエロい質問になっていくんですよ。どこが感じる? SかMか? やってほしいことは? みたいな。

 黙々と回答していると、床に跪(ひざまず)いて距離をとっていたセラピストがいつの間にか近づいてきて。『え~耳が性感帯なんだ……』なんてささやきながら肩に手をまわされ、浴室に連れて行かれました」

 その後はマッサージをするという名目でベッドに横になり、希望した性的なサービスを施してもらう……というのが女性用風俗の一連の流れだ。風営法にのっとって挿入はNGだが、「それ以外のことはすべてやってもらえると言っても過言ではない」とのこと。

「『成人マンガの宣伝バナーで見たようなこと、全部やってもらってる!』と、心から衝撃を受けました(笑)。初めて会う異性の前で裸になるのは当然抵抗ありましたけど、流れがあまりにもなめらかだったのと、『お金払ってるしいいじゃん!』と開き直れた部分がありますね。鏡にガッて顔を向けさせられて、『金で男を買った気分はどう?』と言ってもらったのも、とてもよかった……」

すっかりハマってしまい、序盤は週1ペースで利用

 一度きりの奮発をしたつもりが、初回ですっかりハマってしまったミユキさん。しばらくは週一ペースで同店を利用した。

「序盤のペースは、相手からも軽く引かれましたね(笑)。毎日出勤してる子だし、私はフリーランスだから、いくらでも融通がきいちゃったんです。とはいえ月に12万円を風俗に使うのはさすがにな……と思い、今は月一~二回ペースに落ち着きました」

 ミユキさんの年収は額面400万円程度。離婚の財産分与もあり、そもそも他にお金を使う趣味もないので、月3万~6万円の出費であれば、貯金を崩さずに通えているという。

「他の子を指名してみるのもおもしろいかもという気持ちはあるけど、多分支出が倍になる気がするんですよね(笑)。それで一人だけに絞ってます。彼が仕事をやめたらそこで終わりでもいいかなと思っているし、一人にずっとお願いしてると『前回はこういう感じだったから、次は拘束プレイ試してみてくれる?』とか、PDCAを回せるのもいいです」

 月一で身体をかさねながらも、指名セラピストに恋愛感情があるわけではないというミユキさん。予約はTwitterのDM経由なので細かいコミュニケーションも可能だが、それも控えめにしている。

 ミユキさんは「お金払ってる時間以外をもらいたいとは思わない」と断言する。

「フリーランスとして働いていても、身にならない雑談に呼び出されたりするとイライラするんですよね。業務以外のコミュニケーションって本当にいやだと自分がよくわかってますから。プライベートに踏み込みたくないので、『なんでこの仕事してるの?』とかは、こちらからも聞かないようにしています」

ミユキさんが人知れず抱えていた悩み

 自分なりの節度を守って女風に通っているミユキさん。しかし、恋人をつくろうとは思わないのだろうか。聞いてみると、「お金を介した関係のほうが気楽なんですよ」という答えが返ってきた。というのもミユキさんは、20代のころから性交痛に悩み挿入を伴うセックスで気持ちよくなれたことがほとんどないのだ。「処女膜強靱症」の診断を受けている。

「最初の彼氏といたそうとしたときに、ほとんど入らなかったんです。病院でもらった麻酔入りの潤滑ゼリーのようなものを使ってもダメで。歴代の彼氏たちは、それでひどいことを言うような人たちではなかったんですが、私のなかで『ちゃんとしたセックスがしたい』という気持ちが強くて。悩んだすえ20代前半に産婦人科で手術をしました」

 手術を経て挿入はできるようになったが、問題は解決しなかった。

「泣くほど痛くはなくなりましたけど、挿入自体で気持ちよくなる感じではないんです。自分が気持ちよくないと、相手も遠慮するじゃないですか。相手に加害者意識を持たせてしまうのが、心から苦しくて。

 どうにか解決できないかと、いろいろな本を読みましたが、そのなかで『あなたのセックスが痛いのは、愛がないからです』という論を展開しているものがあって。あれを読んだときは、心から腹が立ちましたね……。女性に“呪い”をかけてると思います」

他人を加害者にしないで済むことに、ほっとした

 そんなミユキさんの体質を尊重して理解してくれたのが、元結婚相手の男性だ。

「結婚している間は夫一筋でしたし、スキンシップも十分あったと思います。ただ、夫が仕事で忙しくなって、すれ違う時間が増えるようになると、心が離れていきました。もし普通の夫婦みたいにちゃんとしたセックスでコミュニケーションができていたら、結末は違ったのかもしれない、とはいまだに思います」

 マッチングアプリでは、それなりに出会いはある。しかし遊び目的でも結婚目的でも、最終的にはセックスは避けられない。どうしても引け目があった。

「普通の恋愛関係において、『挿入できなくてもいいよ』と言ってくれる人に出会う可能性って、非常に低いですよね。仮にいたとしても、誰かを私の事情に付き合わせるのが申し訳なくて。結局誰かと深く仲良くなることは諦めたところで、女風と出会ったんです」

 先にも書いたように、風俗は挿入がNGだ。そうして、なにをやってなにをやらないかは、お金を出している側にゆだねられている。相互に心身を求めあう関係ではなく、「お金」という対価と交換に快楽を提供してもらうシステムのなかで初めて、ミユキさんは人を加害者にしないで済む気楽さを得ることができた。

「“いい奥さん”にも“いいパートナー”にもなれなくて、ちゃんとできない自分が本当につらかったんです。今はパートナーはいないけれど、推しセラピストのおかげで性欲は解消できてるし、ちゃんとしなくてもいいんだって思えて、のびのび生きられてます」

【続きを読む】 かけた金は100万円以上、“推しセラピスト”の退店に彼女は…「女性用風俗」にハマった30代女性が得た「教訓」

かけた金は100万円以上、“推しセラピスト”の退店に彼女は…「女性用風俗」にハマった30代女性が得た「教訓」 へ続く

(ひらりさ)

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