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「私が飛び降りたらみんな焦るんかな」人気HIPHOP作曲家わいせつ事件 被害者を苦しめる事務所への不信感

文春オンライン / 2021年8月29日 13時0分

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小学生時代の絵里さんと村上

「母親が男を娘に取られて、嫉妬に狂ったのよ」人気HIPHOP作曲家わいせつ事件 加害者の父親が直撃に答えた言葉「犬や猫じゃないんだから…」 から続く

 HIPHOPの人気トラックメーカー・MURVSAKIこと村上恭平受刑囚(32)が2020年11月29日に監護者わいせつ罪の容疑で名古屋市内で逮捕された事件。村上被告は、後に児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、東京都青少年の健全な育成に関する条例違反でも追起訴され、2021年3月4日から始まった公判で2021年6月10日に懲役2年の判決を受け現在は服役中だ。

※村上受刑囚が犯した「監護者わいせつ罪」とは「18歳未満の者に対し親や保護者など監護する者が監護者であることによる影響力に乗じてわいせつな行為をする」犯罪を指します。加害者と被害者の関係性が密接なため加害者名を公表するとわいせつ行為を受けた被害者が特定される可能性が高いため、プライバシー保護の観点から一般的に加害者の実名は裁判などでも公表されません。しかし本記事では、事件の悪質性・重大性に鑑み、被害に遭った少女と保護者の同意を得たうえで、村上恭平受刑囚について実名で報道します。また、被害者は現在も未成年であることから、取材は保護者同席のもとで慎重に行いました。

村上の曲を聞くたびに思い出してしまう

 村上は、10年近く事実婚状態にあった女性の連れ子・絵里さん(仮名・被害当時16歳)に対して、胸を触る、股間を触らせるなどの行為におよび、監護者わいせつ罪で有罪となった。公判では高校生以降に起きた事件2件が起訴されたが、他にも小学生の頃から絵里さんにわいせつ動画を見せたり、布団に潜り込んで抱き着く、キスするなどの行為が明らかになっている。

 しかし、村上が逮捕されても絵里さんの苦悩は終わっていない。今も配信されている楽曲を見るたびに被害を思い出すなど、辛い状態が続いている。

 現在絵里さんは村上が「MURVSAKI」として発表した楽曲がいまでも配信され、それを目にしたり聞いたりした時に被害を思い出してしまうことが苦しいという。母親は複雑な心境をこう吐露する。

「ミュージシャンが逮捕されたからといってマネジメント側が公表する義務はないですし、作者の犯罪と作品が別物なことも理解しています。ただ村上の曲が聞こえたり写真を見たりすると絵里が当時のことを思い出してしまうようで……。一度Mall Boyzのメンバーが村上の作品を名前を伏せて逮捕後に発表したのですが、村上は自宅で作曲活動をしていたので、いくら名前を伏せても聞けば分かってしまいます。そのことは後から謝罪されましたが、村上が所属するMall Boyzの人には逮捕も含めて事情を伝えたうえで、村上の未発表曲を使用する場合などには情報を共有してほしいと話し合っていたのですが」

「裏切られたような気持ちになりました」

 しかし、2021年8月に発売されたカルチャー雑誌のMall Boyzの特集には、村上の写真が掲載された。インスタグラムにもその写真が転載され、それが絵里さんの目に入った。

「Mall Boyzから雑誌掲載の連絡はもらっていなくて、問い合わせたら『顔は見えていないから』『昨年から決まっていた企画で撮影も終了していたので変更できなかった』と後から言われたんです。そういう事情があるなら出る前に教えてほしいだけなのに、事前に連絡をもらう約束は現状守ってもらえていません。しっかりコミュニケーションをとると言ってくれたから信じたのに裏切られたような気持ちになりました。

 楽曲の取り扱いについても、いまだにうやむやな状態です。一部の楽曲ではクレジットから村上の名前だけ消して、でも配信はしている。関係者には対処しなければならないという意識はあるんでしょうけど……」

 Mall Boyzとの連絡自体もスムーズではなく、絵里さんと母親のストレスになっている。

「2021年7月頃に、SNSで『村上が性犯罪で逮捕された』と騒ぎになったことがあり、その時にMall Boyzから『村上の現状について声明文を出すので判決文を見せてほしい』と言われて判決を含めた関連資料を送ったのですが、騒ぎが収まったらうやむやになり声明文も出されませんでした。問い合わせをしても返信が遅く、一方で自分たちのPRは毎日のように発信するのも誠意が感じられません。それを見て絵里は『今日も返信来なかった』と落ち込んでいます」(絵里さんと母親)

「何もなかったような顔で音楽活動を再開するとしたら許せません」

 村上が受けた判決は懲役2年で、2022年中には出所すると見られている。絵里さんと母親は、Mall Boyzの沈黙が、村上が出所後に音楽活動を再開するための時間稼ぎではないかと感じているという。

「2021年4月に本人から送られてきた謝罪文には『今後「MURVSAKI」としての音楽活動を辞めることに決めました』と書いてありましたが、公判中もとても反省しているようには思えませんでしたし、報道されていないのをいいことに、何もなかったような顔で音楽活動を再開するとしたら許せません」

 絵里さんは被害の記憶やMall Boyzとの進まない交渉にストレスをため、今も全身に蕁麻疹が出ることがあるという。取材の最中にも、蕁麻疹の症状が出てしまうことがあった。

 Mall Boyzのマネジメント会社に楽曲配信の対応について質問状を送ると、以下のような回答があった。

「MURVSAKI氏の行いは決して許されるものではなく、当社としても同氏に強い憤りを感じております。

 当社が同氏との間で、所属契約やマネジメント契約を締結していたという事実はありません。もっとも、同氏は、当社がマネジメントするアーティストの複数の楽曲制作に関与しておりました。本件の発生により、同氏との予定されていた活動を行うことができなくなり、当社にも小さくない損害が発生しております。

 本件につき公式見解を発表するか否か及びその内容につき、当初から検討しておりました。しかし、被害者及びMURVSAKI氏本人のプライバシーに関わるものであるため、顧問弁護士とも協議し、現時点では発表するという判断をしてはおりません」

 

 2017年に制定された監護者わいせつ罪は、被害者のプライバシーを保護するために加害者の実名を公にしないことが慣例となっている。しかし、それが意図せず二次被害を生んでしまうこともあるという。性犯罪事件を多く手掛けるアトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士はこう解説する。

「監護者わいせつ罪では、被害者の方のプライバシー保護のために、裁判でも被告人Aというように氏名秘匿で行うことがあります。メディアも、それに合わせて自主規制するケースが多いです。

 ただ親子関係や事実婚状態など、心理的に抵抗できない子供に対してわいせつ行為を行う悪質な犯罪であるにもかかわらず、名前が公表されないことによって加害者の隠れ蓑になってしまうケースは多くあります。加害者が芸能活動をしていて、名前が出ないことで社会的な露出が続いて被害者が精神的な負担を受ける今回のケースは、法律の落とし穴と言えるかもしれません」

 監護者わいせつ罪の法定刑は6カ月以上10年以下の懲役と強制わいせつ罪と同じだが、高橋弁護士は「被害者と加害者の関係性が最も深いという意味では最も重い罪です」という。

「強制わいせつ罪では、暴行や脅迫があったか、もしくは被害者が心神喪失などの抵抗できない状態であったという立証が必要です。ただ、親子関係や養子縁組関係などでは、暴行や脅迫がないケースの方が圧倒的に多い。親に依存せざるを得ない立場であるため、親に抗うことが難しく『しょうがないので受け入れた』という場合では、強制わいせつ罪に問うのは難しくなってしまう。そのことへの問題意識があって制定されたのが監護者わいせつ罪です。村上受刑囚の場合も、まさにその問題意識が当てはまるケースと言えます。

 ポイントは、殴ったり恫喝して無理やりわいせつ行為に及んだわけではなく、一見すると合意があるようにみえる状態でも罪になるところ。親子はもちろん、養子縁組や事実婚状態であったとしても監護者であることが認められれば、監護者わいせつ罪となります」

「私が飛び降りたらみんな焦るんかな」

 裁判が終わってもなかなか日常を取り戻せずにいることについて、母親が苦悩を語る。

「突然、絵里が『私が飛び降りたらみんな焦るんかな』と言ったりするんです。私にとっては大事な一人娘です。私に心配をかけまいと気丈にふるまっていてくれていますが、この子に何かあったらどうしようという不安はいつまでたっても消えません」

 村上は、絵里さんに対する監護者わいせつ罪の裁判中に、別の児童に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、東京都青少年の健全な育成に関する条例違反でも追起訴されている。それは当時15歳の少女に対して行った卑劣な犯行だった。(#4へつづく。#4は近日公開)

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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