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“竜王戦ドリーム”まであと一歩「終わってみると、永瀬さんはとても強かった」

文春オンライン / 2021年9月4日 11時0分

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梶浦宏孝七段

「ドラフト指名は正直厳しいかなと…」梶浦宏孝七段が語ったABEMAトーナメントの舞台裏 から続く

 棋界の最高峰・竜王戦は、「誰にでも門戸が開かれている」ことが特徴だ。順位戦を一つひとつ順番に上り、さらにA級リーグ1位になった棋士のみが挑戦権を得られる名人戦とは違って、理論上は新四段やアマチュアにも頂点に立つチャンスは与えられている。そんな「竜王戦ドリーム」に期待を抱かせる旋風を引き起こした若者がいる。それも2年連続で――。

 梶浦宏孝七段(26)だ。5組ランキング戦で優勝した昨年度は、高野智史五段(6組優勝)、石井健太郎六段(4組優勝)、木村一基王位(1組5位)、佐藤康光九段(1組4位)を連破。4組ランキング戦で優勝した今期は、青嶋未来六段(5組優勝)、佐藤天彦九段(1組5位)、羽生善治九段(1組4位)を次々と破る快進撃を演じた。

 改めて「夢」の当事者に聞いてみた。

「竜王戦2期連続ベスト4」という成績には納得している

――続いて、竜王戦についてお聞きします。まず、2期続けてのベスト4という結果についてはいかがでしょうか。

梶浦 色々と、頭の中で振り返ったんですけど、自分にとってけっこういい目が出たんじゃないかと思います。単純な確率論ではもっと前に負ける確率の方が高かったのではないのかなと。

――昨年の準決勝で敗れた羽生善治九段に、今回は準々決勝で勝ちました。

梶浦 シンプルに嬉しかったですね。羽生先生は私が将棋を覚えた小学生の頃からタイトルをずっと持っていて、その先生に2年連続で大舞台で戦えて、勝つことができたのはその当時を思うと夢みたいです。

――竜王戦の決勝トーナメントで4~6組優勝者が勝ち進むと、1組5位との対局が組まれ、俗に「1組の壁」と呼ばれています。普段は対局する機会も少ない相手が多いと思いますが、やはり違いは感じましたか。

梶浦 初手合いの方が多かったですね。得難い経験です。そういう経験が、勝てば次にもあると思うと、モチベーションが高まります。

――そうした対局の際には、何か特別な対策をするのでしょうか。

梶浦 特段、すごい力を入れるわけではないんですけど、序盤の作戦は練っていましたね。

――ちなみに、昨年の決勝トーナメント準々決勝で対局した佐藤康光九段のときは、どのような戦型を予想していましたか。

梶浦 佐藤先生相手だと、特に色々な戦型になる可能性がありますが、過去の棋譜を見て、先後ともに3つくらいの作戦は立てていました。ダイレクト向かい飛車になったのは、結果的に当たっていましたね。

――2年前の6組、昨年の5組、そして今回の4組における、ランキング戦3期連続優勝についてはいかがですか。

梶浦 2年前の6組優勝までは他の棋戦も含めて、一番上まで行ったことがありません。竜王戦だけ調子がよく、相性がいいのかなという気がしています。じっくりと考えたいタイプなので夕食休憩がある持ち時間5時間というのが、もしかしたらあっているのかもしれません。それまで持ち時間についてはあまり考えたことがなかったのですが、竜王戦を踏まえると長いほうがいいのかなという気もしてきました。もちろん、どんな状況でも強いのが理想ですが。

「負けたらしょうがない、次に向けて切り替えることも大事でしょう」

――あと1勝すれば挑戦者決定戦進出という「竜王戦ドリーム」が見えていましたが、惜しくも敗れてしまいました。

梶浦 去年も今年も、どこまで行こうというのは考えておらず、1局1局を全力で戦うことだけを考えていました。準決勝まで来たから挑決が見えてきたという意識はありません。ただ、昨年の七番勝負第1局で大盤解説に呼んでいただき、セルリアンタワーの能楽堂という大舞台での対局を見て、大きな勝負を逃したのかと残念に思うことはありました。

 昔から世話になっている永瀬さん(拓矢王座)とこんな大きな舞台で戦えるというのは、すごくうれしかったですね。終わってみると、とても強かった、自分との差を大きく感じたというところです。

――そもそも、ベスト4というのは、「ここまで来た」という自信になるのでしょうか、それとも「あと一枚を抜けられなかった」という悔しさのほうが強いのでしょうか。

梶浦 どっちですかね。自分は負けを引きずるということはなく、自分が劣っていたということで納得している部分もあります。半分半分なのかなあ。結果に満足してはいけないと思いますが、負けたらしょうがない、次に向けて切り替えることも大事でしょう。

目標は年間30勝とタイトル獲得

――改めて、今後の目標についてうかがいます。短期的なものと長期的なものをそれぞれお願いします。

梶浦 短期的なものだと、今年度に30勝を上げたいという気持ちがあります。今13勝ですが、棋士になってから年度30勝を達成したことがないので、それはひとつの目標ですね。それだけ勝てればどこかの棋戦でいいところまで行くでしょう。竜王戦では負けましたが、新人王戦でもベスト4まで残っています。こちらも昨年は準決勝で負けたので、決勝という舞台に臨めるかどうか。それが一つのステップだと考えています。長期的な目標はタイトルを獲るということですね。

――竜王ランキング戦通算3回優勝にともなって昇段されたので、新人王戦への出場は今回がラストとなりますね。タイトルという意味では、現状では豊島竜王や藤井二冠ら「4強」に勝つ必要が出てきます。梶浦さんは、ちょうどお二人の間に位置する年齢ですが、世代についてはどのように考えていますか。

梶浦 まず上に豊島先生がいて、その同年代の方も多くいらっしゃいます。藤井君の世代も近いうちに層が厚くなってくるでしょう。私の同世代はと言うと、近藤誠也七段、青嶋未来六段、佐々木大地五段。あと年齢は下ですけど、三段リーグで一緒だった増田康宏六段。世代間の団体戦をやっているわけじゃないんですけど、我々の世代は大変で、力をつけないといけないとは思いますね。しかも早いうち、ここ数年じゃないと……。けっこう追い込まれていますね。

将棋の取り組み方で変わったこと、変わっていないこと

――「力をつける」という点に関連して、将棋への取り組み方についてお聞きします。奨励会時代や四段昇段直後と比べて、取り組み方に変わったこと、あるいは変わってないことはどのようなものがあるのでしょうか。

梶浦 変わったことでは、棋譜並べを行うことが少なくなりましたね。奨励会時代は、公式戦で新手が出たら棋譜を並べていましたが、今はソフトありきなので、新手は出現した時点である程度は調べられています。人間の棋譜を並べることがなくなった代わりに(将棋ソフト同士が対局する)floodgateを見る機会が増えました。実は、プロでも見ている人はあまりいないと思いますが。

 変わっていないことは、自分の将棋を並べ直すことで、これは奨励会時代からの習慣です。今はソフトを交えて振り返り、想定外の驚きはたくさんありますね。

――プロになってから、力がついたという実感はどのようなときにありますか。

梶浦 ここ1、2年ではついたと思っています。結果を残せたという点も大きいですが、数年前の自分と比較して、指している将棋の技術が向上している自信はあります。その根拠をわかりやすく言うのは難しいですが、以前と比べて大局観がよくなったなど、色々な要素を含めて、前よりはちょっと先が読めるようになったのではないかと思っています。今のトップ棋士と比べると自分自身はまだ手前にいますが、いずれはそこに至って突破しなければいけません。そのためには必要な技術がまだたくさんあると思います。

写真=杉山秀樹/文藝春秋

(相崎 修司)

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