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河野太郎、平井卓也、西村康稔、茂木敏充の“自民党パワハラ四天王”はどこへ向かうのか

文春オンライン / 2021年9月6日 11時50分

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河野太郎氏 ©️文藝春秋

 菅義偉さんが、総裁任期いっぱいで総理大臣・自民党総裁を降りると宣言してしまいました。本当にお疲れさまでした。

 やっている政策そのものは決して悪くなかったし、ワクチン接種推進はもとより、福島処理済水の海洋放出やデジタル庁設置、新型コロナ対応に東京オリンピック開催、対外的には開かれたアジア太平洋構想の推進にトランプ後の日米関係の確認・強化と、在任期間1年前後の割にはできることは全部推進して仕事はした政権でした。

開き直って「俺は解散する」と言えていれば…

 惜しむらくは総理のキャラクターが辛気臭く、国民に直接語り掛ける雄弁さが足りなかったことで、仕事の中身をきちんと国民に伝えられず支持率は3割を切り、自民党内からは来たる衆議院選挙の「顔にならない」と判断されてしまったことでした。本来なら総理大臣の専権事項のはずの9月中解散を封じられ、せっかく二階俊博さんの幹事長交代を進めたのに後任人事を有力者に蹴られて行き詰まった結果、地元神奈川県の県連からも突き放されてしまいました。

 結局、コロナ対策を優先することを口実に勇退を余儀なくされてしまったのですが、よりによって小泉進次郎さんのメンタリストDaiGoみたいな泣き落としで総裁選出馬断念を決断してしまうという微妙な状況になったのは非常に残念なことです。開き直って「俺は解散する」と一言言えていれば、あるいは昨年のいまごろ支持率7割の祝賀ムードのうちに一気に「民意を問う」と号して解散総選挙をしていれば、本格的なガースー“仕事人”長期政権の幕開けだったかもしれず、そこが何より残念なことです。

 その後、総裁選モードとなって60歳の高市早苗さんが日本初の女性総理を目指し名乗りを挙げます。60歳の高市さんが走ることで、慌てるのはそれ以上の年齢、当選回数の自民党有力者たちです。それ以上の経歴を持つ人々が、ここで総裁選に出なければもう次に総裁選に出ることができないかもしれない。本来ならガースーが再選を目指して登場するはずが、なにぶん自爆してしまわれたので有力閣僚も党人派有力者も上を目指すならここで出ないわけにはいかないわけですよ。

 先日、週刊文春が河野太郎さんのパワハラ発言を報じていました。

河野太郎大臣パワハラ音声 官僚に怒鳴り声「日本語わかる奴、出せよ」
https://bunshun.jp/articles/-/48318

 確かに槍玉に挙げられていたお役人さんもイマイチ何を言ってるのか分からんので叱責をされても仕方がないのかなとも思う反面、レクを受ける上役の河野太郎さんが威圧的に「ハイ、次」とか「日本語わかる奴、出せよ」などとお話しされているのを見ると、もう少し伝え方があったんじゃないかって思います。菅義偉さんは口数が少なくて伝わらなかったのに対し、河野太郎さんは思い通りにならないと口調が鋭すぎてパラハラ待ったなしになるのではないかと心配になります。

駄目出しして「日本語わかる奴、出せよ」はパワハラ的

 レクされている政策の中身は3年に一度改訂されるエネルギー基本計画であり、そのうちすでに発表済みの資源エネルギー庁の素案では、2030年に総発電量のうち再生可能エネルギーの比率を「36~38%程度」としていたものを、もっと上積みを求めたい河野太郎さんが「36~38%以上」とさせたい意向を強く打ち出したものでしょうか。

 日本の再生エネルギーに対する取り組みは、諸外国に比べて遅れているように見受けられるのは事実ですが、一方で、政治が「こうしたい」と言っても再生エネルギーへの技術開発や産業支援の取り組みはまだこれからの面もありますから、実現可能な現実的な積み上げとして資源エネルギー庁が頑張っても「36~38%程度」としていることを閣僚へのレクとして行っていることになります。

 他方、河野太郎さんはワクチン担当相や行革担当相という無任所大臣でありながらも、このエネルギー基本計画の実施お墨付きは閣議決定であることから、直接の部下ではない資源エネルギー庁などからのレクチャーについても上役にあたると解されても不思議ではありません。了解を取り付けるためにレクをしに行ったら、より高い目標が必要だと駄目出しされて「日本語わかる奴、出せよ」と言われてしまうのは、まあ確かにパワハラ的側面はあります。

 政治に限らず、組織で方針を定める上役・上司と、現場を担っている部下・管理職の間で、緊張関係を持つのは当然です。「お前、ここまでやれや」「いや大将、さすがにそれは無理でやんすよ」という掛け合いは、それこそ日本国中だけでなく海外も合わせれば100兆回も繰り返されてきた組織の摂理でもあります。

 しかしながら、結果を出せる上司とそうでない上司、現場からの信任の篤い上司と現場から馬鹿にされる上司というのは、まさにこのような緊張する議題を進めなければならないときに、部下にかける言葉の選び方ばかりか声のトーンまですべてが影響すると言っても過言ではありません。

納得できる意見を部下が言わなきゃ気が済まない

 平成最大の厄災であった東日本大震災とそれにともなう福島第一原発事故では、活動家から声望を集めて総理大臣にまで立身出世した菅直人さんが原発事故対応の「陣頭指揮」を取るにあたり、かねて欠点とされた「イラ菅」とも呼ばれる狭量な態度が爆発しました。「俺は原発には詳しいんだ」などの歴史に残る名言を部下に浴びせながら現場に介入、結果としてやらんでもいいことをたくさんやって足を引っ張り大混乱に陥って、原発事故の被害を軽減させられる機会を何度も逃したとされ、パワハラの帰結としては悲しすぎる事実を残しました。

 危機に際して、また、自分の意に添わない悪い状況や提案に対して、どのような態度で接することが求められているのかという間合いが分からないと、権力者から部下や現場の心は離れていってしまいます。一見して外ヅラが良く、ネットでは話の分かりそうな態度を取っていても、思い通りにならない現実に直面した際に自分の考えや理想を声高に強弁し、部下に強要して納得できる意見を言わせないと気が済まないというのがパワハラ民の本性です。現実を受け入れる理性よりも、その場で怒鳴り散らし相手をねじ伏せる感情のほうがはるかに勝ってしまうのです。

部下に「脅しておいて」と命じるデジタル改革担当大臣

 同じく週刊文春が、先日9月1日に発足したデジタル庁の平井卓也さんについての実名告発の記事を掲載していました。6月には五輪アプリの発注などをめぐって、平井卓也さんが部下に対してNECを「徹底的に干す」「脅しておいて」などの発言を行ったとして騒ぎを起こしています(朝日新聞報道)。

 常識的に考えて、部下に出入り業者を脅しておけと要求していること自体がおかしいうえに、IT政務官時代に長い付き合いがあったとされる豆蔵ホールディングスの株式を取得、その後、MBO(マネジメント・バイアウト=経営陣による自社株式の買い取り)で少なくとも1,200万円の利益を平井卓也さんは得ていたにもかかわらず、これが資産等報告書に未記載とかいう事例もありました。

五輪アプリ開発責任者が実名告白 平井デジタル庁はもう既に壊れている
https://bunshun.jp/denshiban/articles/b1590

 この豆蔵ホールディングスの子会社の「ネクストスケープ」は、平井卓也さんのお膝元である内閣官房IT総合戦略室から東京五輪向けアプリの再委託先として6.6億円で受注していることも明らかになっています。控えめに言ってもヤバいレベルの利益相反じゃないかと思うんですよね。常識的にはこれ一発でデジタル大臣や個人情報保護委員会担当の内閣府特命大臣を辞任すべき状況なだけでなく、場合によっては議員バッジも返上しなければならないほどのスキャンダルのはずなのですが。

 結果、この問題で周辺にさらに当たりちらし、第三者ではない調査委員会を作り、一連の大臣暴言や不適切発注を含む問題を「調査」し、問題のある役人や有識者がいたということで自分がやらかしたことは全部棚に上げて処分してしまうという狼藉にまで発展してしまいます。これから新しくデジタル庁が発足するぞというところで、パワハラ紛いの発言や不透明な取引を自ら手掛けておきながら、居座った挙句に自分でこしらえた委員会で都合よく調査報告書を作って、それを元に部下を処分というのは驚きを禁じ得ません。

 やってることが江戸時代の悪代官そのものだと思うのですが、そういうパワハラ以上の問題に付き合わされているのが日本の官僚や有識者、学識経験者だとするならば、そりゃ自らの行く末を悲観して多くの若手官僚が霞が関を去ってもおかしくはないでしょう。

周りにいる人間がすべて馬鹿に見えてしまう西村康稔大臣

 さらには、コロナ担当相に経済再生担当相を兼務して、官邸の重要政策を担った西村康稔さんも、パワハラが常態化してしまって大臣をお世話する秘書官が次々と交代してしまう惨事を引き起こしています。

 西村康稔さんは自分自身が日本で一番賢く、周りにいる人間がすべて馬鹿に見えるという典型的なインテリ系パワハラ症候群を引き起こしていたと見られ、霞が関では量産型塩崎恭久の異名まで取ってしまう状況になっています。塩崎恭久さんは重要閣僚を歴任してパワハラに見合う重要政策も実現してきた人物ですが、西村康稔さんはコロナ担当相と経済再生担当相というブレーキとアクセルを両方踏んづける役職にあったため、菅政権が車体をスピンさせてしまう原動力にしかなってなかったように見受けられます。

「パワハラ疑惑」西村康稔大臣の秘書官が6月末でまたも交代
https://bunshun.jp/articles/-/47097

 確かに新型コロナも、またコロナ禍の経済も、西村さんからすれば思い通りにいかない難題であることは間違いなく、また、西村さんの能力が足りなかったというよりは、誰がその任にあっても100点満点の仕事にはなり得ないという意味では同情すべき点もあります。

 しかしながら、そういうときだからこそ担当する現場の士気を高めたり、疲弊しすぎないようにリソースを確保して長期戦に備えるといったアクションを取るべきところ、なにぶん周りがみんな馬鹿に見えるために、上手くいかない理由はお前のせいだぐらいに罵倒して回ることもあって、内側から「西村康稔さんはこういうことを言う人だ」というリークが続出することになります。マスコミ人としてはリークは基本的にありがたいのですが、西村さんが留学経験もある部下たちに対して「だからお前は頭が悪いんだ」とか「(自分の)言うことを理解できてから説明しに来い」などと罵倒して詰問する録音を聴くにつけ、溢れ出る涙を禁じ得ません。

 他の大勢いる前で「お前なんて、いつでも辞めさせてやれるんだからな」と西村康稔さんから素敵なお言葉を賜った皆さんで「西村康稔被害者の会」まで結成され、Facebook上では平井卓也さん茂木敏充さんと並んで「みんなが選んだ暴言集」まで編纂されています。

 冗談で済まないのは、これらの被害者である国家公務員はプロパーも官民人事交流で来た人も、みな自分の人生を政策や政府・省庁のために捧げるために集まっているわけで、パワハラを平気で行うハズレ上司に当たってしまうと、自分が10年、20年と頑張ってきたキャリアが台無しになる怖れがあります。地元では神童と呼ばれ、受験戦争を勝ち抜き、志を持って国家公務員試験に合格して霞が関に足を踏み入れた結果、お前よりも俺の方が賢いのだと思い込んだ政治家に面前で罵倒されて精神的に楽なはずがないんですよね。

自民党きってのパワハラキング、茂木敏充氏

 その中でも自民党きってのパワハラキングと目されるのが、外務大臣としてアフガニスタン撤収の責任者でもある茂木敏充大先生です。週刊文春では、かつて、よりによってこの茂木敏充さんが「人づくり革命担当大臣」とかいうこれはいったい何のギャグなのかという人事を評する素敵な記事を提供して、永田町や霞が関に素敵な笑いを届けてくださいました。

安倍「仕事人内閣」を “必殺”身体検査
https://bunshun.jp/articles/-/3733

 私の身近な事例で申しますと、茂木敏充さんから「この案件で報告しろ」と指示を受けた官僚が徹夜して翌朝まで仕上げた書類を大臣室にもっていくと、「そんな報告しろと言ってない。二度と大臣室に来るな」と叱責され、廊下で真っ白になっている姿が発見されて、気の毒すぎて誰も声を掛けられなかったという事案がございます。

 また、茂木敏充さんは、外部事業者に情報収集を怒鳴りつけて依頼し、頻繁に朝の会議で呼び出しておきながら、いますぐ信頼できるデータを持ってこいと強弁するなど、カジュアルにパワハラをやってのけるナチュラルボーン威圧者としての風格を備えておいでです。

 今期で当選9回、本来なら文字通り総理候補として目され、重要閣僚の責務もしっかりこなす有能さの裏返しとして、その足元にはパワハラ被害者の皆さんが転がっていると思うと胸に迫るものがあります。本来ならば、今回の総裁選でも押しも押されもせぬ有力候補としてポスト菅最右翼であるべきところが、あまりの人望のなさから待望論がさっぱり立たないのもまた、パワハラのなせる業なのでありましょうか。

自民党パワハラ四天王、総じて評価は「優秀」だけれど

 自民党が誇るパワハラ議員は、いずれも「優秀」という評価が下っているのも特徴です。ワクチン担当大臣として河野太郎さんは何とか国民の負託に応える以上のワクチン接種を実施し、西村康稔さんも非常に多難な局面で矢面に立ちながら何とか役割をこなし、茂木敏充さんも重要閣僚として多国間安全保障を担う外交を率先してこなすかたわらアフガニスタン撤収についても一定の役割を果たしました。

 ただ、それらの能力を発揮できた裏側というのは、粉骨砕身、政策の実現に努力してくれる優秀な官僚組織がパワハラにめげず無理難題をどうにか形にし、役割を果たそうとしたからこそだと思うんですよ。そういう政府の「足腰」はどうであるかを考えることなく、部下に強要したり、意見を無理押しすることでどうにか実現できた部分もあるだろうし、また官僚は官僚でおのおの考えがあり、賢さもズルさも併せ持つ存在であることを忘れて、平然とパワハラを繰り返すのはいかがなものかと思うんですよね。

 この四天王、ことあるごとにリーク記事を書かれて「誰だ、こんなのをマスコミに垂れ込んだのは」と激怒し犯人捜しを始めることもしばしばですが、胸に手を当てて考えていただきたいのは、なぜそういう情報提供がマスコミにあるのかということです。一口に言えば、嫌われているんですよ。

 総理総裁になりたいが一心で繰り出すパフォーマンスやネット受けだけでなく、もう少し、部下もまたひとつの人生を歩んでいる人間なのだということに思い致すことができるようになれば、おのずから、多くの人たちから求められて掌中に総理の椅子が転がり込んでくるものなのかもしれません。

(山本 一郎)

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