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私が観ると負ける…阪神が優勝するためにファンができること(及び、してはいけないこと)

文春オンライン / 2021年9月25日 11時0分

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4日の巨人戦で15号逆転サヨナラ2点本塁打を放った大山悠輔

 再び首位陥落(9/22)。奪取したのは、巨人ではなくヤクルトだ。陥落は悲しい。が、せめてもの救いは首位がヤクルトであること。前回ここで書いたように、「1位阪神、2位巨人」という並びの優勝は70年を超えるセリーグの歴史で一度もない。今年もこの通りであれば、阪神が優勝できる条件は「2位ヤクルト」が必須となる。願わくば、三つ巴の戦いからヤクルトとの一騎打ちへと移行してほしい。

 まあ、現実には、このまま団子状態がつづくのだろう。

 そう考えるほどに、一つの負けが悔やまれる。とりわけ、負けないで済んだかもしれない試合での敗戦は悔やんでも悔やみきれない。しかも、その負けの理由が自分にあるとしたら……? 他のファンに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

今回の首位陥落は、私のせいではないかと思った

 いや、何を言っているんだ、負けの理由が自分にあるだって? 一体、何様のつもりだ。

 そんな批判もあるかと思う。むろん、一ファンの力でチームの勝敗が決するなどとは思っていない。むしろ、逆だ。一ファンの力などほとんどとるに足らない。とてもささやかでちっぽけなものである。そして、そのささやかでちっぽけであることを熟知するがゆえに、自分のちょっとした動きがチームに迷惑をかけることを恐れる。このように思ってしまうのが、ファンという生き物なのだ。

 競技は異なるが、サッカーJ2リーグのチームを応援するサポーター、ファンたちの日常を追った小説『ディス・イズ・ザ・デイ』(津村記久子著)には、このような一文がある。

「二人の間で常に一致している意見は、私たちが観ると負ける、ということだ」(p230)

 現地で応援すると負ける。そう思うがために、「昇格」のかかる最終節の試合をテレビ観戦することに、二人は合意する――。

 なんとも健気なファン心理だ。

 話を阪神に戻すと、実は、今回の首位陥落は、私のせいではないかと思った。

 9月19日(日)、甲子園での巨人戦。私がテレビをつけたのは、ちょうど1回の裏の阪神の攻撃が終わった瞬間だった。巨人のエース菅野投手から先制点を奪っていた。よしよし、と言いたいところだが、曰く言い難い「やな感じ」を覚えつつ、そのままテレビ観戦をつづけた。すると、2回表、阪神先発のガンケルが先頭打者の亀井に打たれる。そしてそのままズルズルと負の連鎖が始まった。ヒットやらエラーやら重なり7失点。事実上、この回で試合は終わった。

 どうして、「やな感じ」がしたまま見続けたんだ……?

 私はその日、このように自分を幾度となく責めずにはいられなかった。

 この話を、このコラム版タイガースのヘッドコーチ須賀くん(ミシマ社)にしたところ、「私も『自分が見ていると打たれる』はあります。こないだも私のせいで大谷投手の連勝を止めてしまいました」と衝撃の告白をした。大谷翔平選手並びに世界中のファンに伏してお詫びするほかない。

 というわけで、今回は、阪神が優勝するためにファンができること(及び、してはいけないこと)をお伝えすることにする。

阪神が優勝するためにファンができること(及び、してはいけないこと)

 まずは、前回同様、他チームのお力を借りたい。ベイスターズファンの松樟太郎さんには、かなり実践的アドバイスを頂戴した。

「相手のチームの選手の応援歌をつい一緒に口ずさんでしまった時、なんかよく打たれてる気がします」

 つい、やってしまいがちな相手チームの応援歌口ずさみ。私もやってしまいがちなだけに、残り試合では慎みたいものだ。続けて松さんは、「山田哲人の応援などつい口ずさみがちなので注意が必要です」とも。首位争いの中で、大変重要な留意点と言えよう。

 くわえて、不思議なルーティンも教えてもらった。

「自チームが守りの際、投手がファーストストライクを取った時に5回拍手したとしたら、セカンドストライクでは6回以上拍手するというように、徐々に回数を上げていくようにしています」

 さらに――。

「アウトカウントも同様に、ワンアウトで10回拍手したら、ツーアウトではそれ以上、通常は倍くらいにするようにしています。なので、スリーストライクでスリーアウトになった際は、『こいついつまで拍手してるんだ』というくらい長くなります。そういう時はフェイドアウトするように音を小さくしていきます」

 球場で応援する際、こうしたちょっとの変化をつけて選手に力を送る。これぞ、ファンというものだろう。

 さて、いよいよ阪神ファンの声を聞いてみたい。最初に訊いたのは、建築家の光嶋裕介さんをはじめ、内田樹先生が主宰する神戸の道場「凱風館」の猛者たちだ。ちなみに、この場合の「猛者たち」は「猛烈阪神ファンの者たち」を意味する。質問は、以下の2つ。

1)応援中に、こういうことをすると負ける、逆転される、という行動はありますか?
2)反対に、こうすると勝つというゲンカツギのようなものはありますか?

 猛者たちの回答は、実に示唆に富んでいた。

 最初の質問に対しては、「ツイートなどで、ここからの展開を予想すると、大体その通りにならないで、負ける」(光嶋)、「おー山の悪口言うとゲッツーになる」「仕事帰りに携帯で接戦で勝ってると確認。家に着いてテレビをつけるとピンチになってる」「逆にチャンスの時にテレビをつけると おー山の打順でゲッツーになる」「今年は西くんのユニホーム着て応援すると何故か勝てない」(S川)、など。

 どうだろうか。そうそう、と頷いた阪神ファンは少なくないにちがいない。

 私も、ツイッターで途中経過を呟いた直後に逆転負けした経験がある。以来、決してしないようにしている。『なぜ試合途中に呟くと逆転負けするのか』なんて新書があってもおかしくないと思う。

 大山に関しては……。

球場で応援できない場合は、どうすればいいのか

 ところで、「こうすれば勝つ」を発表する前に、この方にも訊いてみた。以前、大阪の病院でコロナ患者と日々向き合う看護師Sさんの声をお届けしたが、そのSさんである。

「京都から甲子園に通っていた時は、距離があったのもあり、気持ちもかなり強かったので裏目に出るのか、現地観戦はほぼ負けてました。なので行かない方がいいのかと真剣に悩んだこともあります。

 でも大阪に引っ越して、気軽に行ける距離になったのもあり、足繁く通うと、現地観戦でも勝つようになったので、とにかく楽しみにしすぎないこと、気負って行かないこと、ちょっとスーパー寄るぐらいの感覚で行くこと!」を心がけておられるそうだ。

 阪神が勝つために、そこまで殊勝に……。医療現場でのご苦労を思うと、「ぞんぶんに楽しんで、はしゃいでくださっていいですよ」と言ってあげたいのだが。

 そして、思い出したように、「あと、大山に限って言えば、大山ファンの人と一緒に観戦すれば、かなり打ってくれます」と教えてくれた。

 そう、これで「大山問題」は解決だ。大山が打席に立つときは、大山ファンと一緒に応援を。

 さて、いよいよ、「勝つ」ためにファンができることを公表したい。

 甲子園のすぐそばに住むA氏は、「球場での応援なら攻撃中は売り子さんのビールなどに目もくれずに全力で応援」するようにしているという。きっと、少し目を離した時にチャンスを生かせなかったりするのを、自分で許せないのだろう。松さん同様、球場でのファンの応援はかくも個別的であることを期せずして知ることとなった。

 球場で応援できない場合は、どうすればいいのか。面白いことに、3人の回答が同じようなものだった。

「諦めて風呂に入ってからテレビをつけると逆転している」(S川)、「テレビを見ないで風呂に入り上がってくると、逆転している」(光嶋)。

 なるほど、思いを込めて見るより、「見ない」を選ぶ。先日の私は見てしまったために逆転されたが、「見ない」ことで勝ちをとるというわけだ。そのとき、「風呂」という装置が有効であることが明らかになった。

 それをさらに徹底したのがK田氏である。

「諦めて寝たら、勝つ」

 文字通り、「果報は寝て待て」、だ。

 というわけで――。

 阪神ファンの皆さん、寝よう。風呂に入って、しっかり寝よう。さすれば、吉報が訪れよう。

 全ては阪神が優勝するために。優勝までの道中でバテてしまわないためにも……。

◆ ◆ ◆

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(三島 邦弘)

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