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1番人気はもちろん餃子、では2番人気は…? 「ぎょうざの満洲」全店長が難色を示したのに大ヒットした“意外なメニュー”

文春オンライン / 2021年9月28日 6時0分

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写真提供=株式会社ぎょうざの満洲

「551HORAI」の商品のなかで毎日最初に売り切れるのは“豚まん”ではなく…意外と知らない“隠れた実力商品”とは から続く

「3割うまい!!」のキャッチコピーで埼玉県、東京都、群馬県に展開している「ぎょうざの満洲」。堅調に営業を続けて2022年には創業50周年を迎える同店が愛され続ける理由は、いったいどんなところにあるのだろうか。

「秘密のケンミンSHOW」の元リサーチャーとして全国各地のネタを集め、現在はジャーナリストとして活躍する辰井裕紀氏の著書『 強くてうまい! ローカル飲食チェーン 』(PHP研究所)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

売り上げの3割が「餃子テイクアウト」

「うちは売り上げの3割が、生餃子のテイクアウトなんです」

 そのテイクアウトでとくに売れるのが、業務用の「冷凍 生ぎょうざ60個入」。もともとは出前を中心に営業していたが、そのときに創業者が出前をやめて「お店に来ていただける店づくりをしたい」と、じつに50年ほど前から生餃子のテイクアウトを始めた。

 さらに、テイクアウト全体では売り上げの4割を占める。店頭レジ横の冷蔵庫の面積は店内の数十分の一に過ぎないが、満洲の屋台骨なのだ。

 実際、店内には大袋に入った「業務用餃子」を買い求める人がよく訪れていた。

 餃子の売れ行きに一役買うのが、テーブルのタッチパネルだ。

 「餃子のおいしい調理法」が表示されるので、スマホのカメラで撮ればレシピになる。餃子の特売日情報も流れるから、帰るときには、ついおみやげの餃子を「買っていこうかな」となるわけだ。

 待ち時間での購入も働きかけて、二重三重ものアピールで「餃子買っちゃうか」を引き出す。

「餃子を包むのがヘタ」だから、合理化できた

 餃子は脂身を3割減らして、その分赤身を3割増量した豚肉のひき肉を使い、「カロリーを減らしつつ飽きない味に仕上げた」という。

 そしてこの餃子、機械では掟破りの「加水率約50%」をいち早く実現した。

 加水率とは小麦粉を練るときの水の比率で、水分の多い皮はくっつきやすいため、機械では作りづらい。たとえば機械ではかつて43%が限界で、市販の皮はいまも多くが35%程度だ。

 そこで小麦粉の練り方、ロールのかけ方、皮と皮がくっつかないようにする粉の散布の仕方など、メーカーに何十回も注文をつけながら膨大なテストと機械の改良を行なった。その結果、加水率約50%のもちもちな皮にできた。

 この餃子は、ぎょうざの満洲にとって合理化の象徴でもある。

 黎明期の1960年代、当時の社長であった金子梅吉会長の「餃子を包むのがヘタだった」というシンプルな理由から、まだ珍しい、自動で餃子が包める機械をいち早く導入した。ラクに手間なくたくさん早く餃子が作れて、かつほかよりずっと安かったことから、店は大繁盛したのだ。

「全店長が難色」の玄米50%チャーハンがヒット

 2番人気のチャーハン。耳を疑うのは、玄米を入れてからいっそう人気になった事実だ。

 「私が推した玄米の導入は、100人近くいる店長たちのほぼ全員が難色を示しました。でも、テストで1軒に導入したところ好評。1年半ほどで全店が玄米を取り扱うようになったんです」

 玄米が入ることで“パラパラ”にしやすく、玄米特有の香ばしさがチャーハンではプラスになった。

 ちなみに定食などに付く茶碗入りのごはんは白米と玄米が選べ、およそ4割が玄米を選ぶ。ときに女性以上にカロリーを気にする、40代の男性にウケた。名物メニューの「ダブル餃子定食(650円)」を「玄米大盛り」で注文する人も多い。

朝のスープ作りを卒業し、出勤は開店30分前でOK

 そして3番人気のラーメン。

 そもそも、中華料理店はラーメンスープのために勤務時間が延びがちだ。

 スープを作るには8時間も必要だし、朝7時から仕込んでも、一番おいしく仕上がるのは15時ごろ。最もお客さんが来ない時間帯にスープが最高の状態になる。しかもその日のスープは、その日に使い切らねばならない。

 そんな矛盾を抱える作業にピリオドを打つべく、約30年前にスープ工場を建てる。酸化せずに日持ちして、かんたんに沸かしたての味を楽しめるスープが完成した。一つの袋が2キロ(約5杯分)で廃棄ロスは少なく、「スープが切れたので閉店」もない。

 スープを沸かすために、朝早くから来る必要もなくなった。開店時間が11時だから、社員は10時30分に来れば間に合う。閉店後は30分以内に帰るように決められているので、社員の拘束時間はおよそ10時半~21時半におさまる。

 ラーメン以外の料理のベースにもなるスープの製造改革が、社員の働き方改革にも寄与した。

 工場の大釜で製造したスープは、素材の味をそのまま活かしやすいストレートの生スープ100%。袋詰めされ冷蔵状態で全店に配送される。

 製品の鮮度を重視するため、関東の店舗は埼玉の工場から自社トラックで90分以内に配達できる場所にある。だから店舗は埼玉近辺になるのだ。

 2019年の川越本社工場完成時には、新たに圧力釜を採用。スープを加熱する時間が約3分の1に短縮され、スープに濃厚さが増したうえに2倍の量が取れて、コストを削減できた。味のブレも消えて、ラーメンの注文はさらに増えている。

 ちなみにラーメンの生麺も、餃子と同様に手作りと同じ加水率約50%を実現し、加水率30~43%の店が多い競合店に差をつけた。

 それらは池野谷社長自身が最終チェックする。お店で提供するものと同じ餃子やラーメンのハーフサイズを毎日試食し、気になったところは即改善する。

 たとえば季節ごとに野菜の水分量が変わるから、対応して調理しなければ水分や塩分の量がブレる。その兆しを自らキャッチし、現場に指示するのだ。

「本社社員は約20人だけ」親子2代でシステム化

 お店をバックアップする本社の社員は数年前まで13人しかおらず、いまでも川越本社の社員はわずか約20人。徹底した自動化で、管理部門・営業部門・品質管理部門を少人数で行なう。

 従業員の出勤時にもタイムカードの代わりに静脈認証を導入し、紙の給与明細も廃止してスマホでチェックできる。

 多店舗展開が成功した秘訣もシステム化だ。

 店舗が8軒程度の規模のときに、POSレジをいち早く採り入れる。自動発注も1995年ごろから導入し、商品の廃棄ロス率を約8%→0.3%未満まで減らした。

 このような徹底した効率化が、創業者の金子梅吉氏、娘の池野谷社長の親子2代にわたる経営において貫徹されてきた。

 池野谷氏は1986年に入社し、食品商社勤務の経験を活かして、当時手書きだった帳簿作成をやめ、PCでの在庫管理・経営管理システムを構築する。さらにレシピの材料をグラム単位でマニュアル化し、経営のシステム化を推進。

 当時社長の父・金子氏にもPCスキルを伝授した。金子氏は、娘の池野谷氏をこう評す。

 「商売の細かいところにまできちんと目配りできるし、会社を引き継いで、私と同じ視点でやってくれるのはやっぱり娘だなって。仕事をするのに性別は関係ありません」

店員からの公募で選ばれるフェアメニュー

 ぎょうざの満洲では多くの効率化により、飲食産業には珍しい社員の1日8時間勤務と、週休2日を実現した。従業員の健康な生活があってはじめて、いいサービスをお客さんに届けられるからだ。

 ぎょうざの満洲といえば月ごとの限定メニューも魅力だが、スタッフの腕が鳴るのは年2回のフェアメニューだ。店員からの公募で選ばれ、考案者の名前や顔写真、コメントまでメニューに掲載。これなら「次は自分が」と、店員のやる気につながる。

 他店で食べたお客さんが、わざわざ電車で考案者の店まで足を運び、「君が考えたんだね。おいしかったよ」と声をかけてくれたこともあった。

 「涙が出るほどうれしかったです」

 限られた地域に集中出店するローカルチェーンだから生まれたワンシーンだ。

 なお、毎月発行の『おうちde満洲レシピ』にも、メニュー考案者のスタッフ名が表記される。

【前編を読む】「551HORAI」の商品のなかで毎日最初に売り切れるのは“豚まん”ではなく…意外と知らない“隠れた実力商品”とは

(辰井 裕紀)

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