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〈不妊、血栓症、逆に重症化、5G、磁石…〉“反ワクチン本”のウソを医学的・科学的にしっかり検証

文春オンライン / 2021年9月14日 6時0分

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高橋徳・中村篤史・船瀬俊介『コロナワクチンの恐ろしさ』成甲書房

「読んではいけない反ワクチン本」 遺伝子改変、不妊、何年か後に副作用…偽情報を徹底検証 から続く

「文藝春秋」2021年10月号より「読んではいけない『反ワクチン本』」(大阪大教授・忽那賢志氏)を全文公開します。(全2回の2回目/ #1 から続く)

科学的に正しくない記述(4)
「ワクチンを打つと不妊になる」

〈米CDCの報告では、コロナワクチン副反応報告の80%は女性の被害だった。訴えは「生理が止まった」「不妊になる」など〉(『コロナワクチンの恐ろしさ』p.55)

 反ワクチン情報で若い世代を特に不安にさせているのが、不妊症や流産についてのものです。

 最初に申し上げたいのは、一般的に、ワクチンで不妊や流産が誘発されたという事例は過去、見られないということです。例えば、インフルエンザワクチンは妊婦さんでも打つことが出来ますが、これまで流産の問題が生じたことはありません。

 不妊にかんする誤情報は、ファイザー社の元ヴァイス・プレジデントとされている人物がネット上に流した主張がきっかけだったようです。新型コロナワクチン接種によって体内でつくられる抗体が、胎盤にあるシンシチン-1というタンパク質に反応し、胎盤を攻撃する可能性があると主張しました。

 新型コロナのスパイクタンパクとシンシチン-1の構造が類似しているため、抗体が誤って攻撃するというのです。

 しかし実際にシンシチン-1とコロナウイルスのスパイクタンパクの構造を比べてみると、アミノ酸の配列が同じ個所がわずかにあるものの、類似性はそれ以外に見当たりません。両者は十分に違う構造なので、スパイクタンパクに対する抗体が、シンシチン-1に対して交差反応(間違って反応すること)を起こさないことは確認されています。

科学的に正しくない記述(5)
「卵巣にmRNAが蓄積する」

 もう一つ、不妊の誤情報としてよく出回っているのが、次のような主張です。

〈筋注したmRNAワクチンが体内のどこに運ばれ、どのように代謝されるのか。(中略)接種部位、脾臓、肝臓に多いことは想定内。体内に入り込んだ脂質ナノ粒子を白血球が貪食し、それが脾臓や肝臓にたまって、高濃度に蓄積したものと考えられる。しかし意外なのは、卵巣である。卵巣に高濃度のmRNAが見られた。(中略)卵巣を構成する細胞のDNAに取り込まれ、次世代に悪影響を与えるのではないか。つまり、不妊になる可能性が懸念される〉(『コロナワクチンの恐ろしさ』p.117~118)

 そもそも、mRNAが卵巣に蓄積することを示すデータは一つも存在しません。例えば、日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)が、ワクチン投与後に成分がどれだけ卵巣に蓄積するのかを調査したデータがあります。調査によると、投与から2日後、卵巣での成分濃度は約0・095%でした。この数値では「蓄積している」とは言えず、卵巣に影響を及ぼすレベルではありません。

 また男性不妊にも触れておくと、これまでの調査でワクチン接種による男性不妊の報告はありません。逆に海外では、新型コロナから回復した男性の精子が減少しているという報告が複数出てきています。

 子育て世代の方にも、ワクチン接種が推奨されるべきでしょう。

科学的に正しくない記述(6)
「ワクチンを打つと逆に重症化する」

〈変異しやすいRNAウイルスの場合は抗体ができることにより細胞内でウイルスが爆発的に増加する抗体依存性感染増強(ADE)という現象が起こり、逆に重症化する可能性があります。(中略)SARSの際にも、今回のようにワクチンが注目されましたが、ADEの可能性があることがわかり開発が中断されました〉(井上正康・坂の上零『コロナワクチン幻想を切る』ヒカルランド、p.86~87)

 ワクチンを打つことで重症化するという主張も散見されます。

 一度ウイルスに感染した人や、ワクチンを打った人は、該当するウイルスに対する抗体が体内で作られます。この抗体が中途半端な形で出来てしまった場合、逆にウイルスがヒトの細胞に入り込むのを助けてしまい、症状が悪化することがあるのです。これをADEと呼びます。

 ADEは確かに、mRNAワクチンの懸念材料ではありましたが、現時点ではワクチン接種によるADEの報告は上がってきていません。これだけ世界中で接種が進んでいながら一例も報告がないということは、新型コロナワクチンでのADEは起こらない、または、起こるとしても極めて稀なことだろうと言えます。

科学的に正しくない記述(7)
「ワクチンを打つと猛毒スパイクが体内で増殖する」

 最後に“トンデモ理論”もいくつかご紹介しておきます。

〈ワクチン注射を打つとまず、猛毒“スパイク”が体内で増殖します。わかりやすく言えば、コロナの猛毒“トゲ”が大量にできて、血流に乗り全身をめぐる。そのとき、“トゲ”が血管の内皮細胞に刺さる。そこが炎症を起こす。すると腫れて血栓となる。この血流不全は万病を引き起こします〉(『コロナワクチンの恐ろしさ』p.31)

 冒頭でご説明したように、スパイクタンパクとは、新型コロナウイルスの表面に見られるトゲトゲとした突起状の部分です。それを実際のトゲのようなものだと説明していますが、誤りです。スパイクタンパクが血管につきささって血栓症を引き起こすなんてことはあり得ません。

 なお、血栓症については、英アストラゼネカ社製のベクターワクチンで、接種後ごく稀に(約25万回接種に1回)特殊な血栓症が起こることが報告されています。このことから、日本ではアストラゼネカ社製のワクチンは、血栓症が比較的起こりにくい40歳以上の方に限定した使用となっています。現在、日本で広く接種が進められているファイザー社・モデルナ社製のmRNAワクチンについては、血栓症との関連は認められていません。

科学的に正しくない記述(8)
「ワクチンは体内の電磁場を乱す」

〈体内に貯留したハイドロジェル(引用者注・ワクチンを安定させるための添加物)は、バイオセンサーとして利用できる。つまり、これらを通じて体内のデータを集めることもできるし、Wi-Fiや5Gを通じて起動し、エネルギーやパルス波を発散することもできる〉

〈コロナワクチン接種者が、接種部位に磁石をあてる。すると、磁石が接種部位にくっつく。接種してない反対の腕に磁石をあてても、当然くっつかない。体内の電磁場を乱す何らかの物質が入っていることは間違いないだろう〉(中村篤史『コロナワクチン、被害症例集』ヒカルランド、p.112~113)

 一時期はネット上でも騒がれた5Gや磁石についての主張は、医学的にも、科学的にも、まったく誤っているので、そもそも議論のしようがありません(笑)。このような超常現象は起こらない、としか言いようがないですね。

「利己的」な考えに囚われてはいけない

 ここまで「反ワクチン本」の内容を紹介してきましたが、これはほんの一部です。身の回りに飛び交う膨大な偽情報に対する“免疫”をつけるにはどうすればいいか。一番重要なのは、「正しい情報源」から「正しい情報」を仕入れることです。ツイッターなどのSNSは、フォローするアカウントを自分で選択するため、情報が偏りがちになりますし、その正確性も保証されません。必ず厚労省や専門機関のサイトをチェックするようにしてください。

 コロナ禍が収束に向かうには、全世代のワクチン接種率を高めていくことが必要です。高齢者の2回接種率はすでに8割を超えているため、若い世代の接種率が鍵を握ります。

 しかしながら、ワクチンに対する不安を抱えているのは、特に若い世代なのです。

 国立精神・神経医療研究センターがおこなった調査では、「ワクチン接種をしたくない」と答えたのは高齢男性(65~79歳)が4・8%、高齢女性が7・7%であったのに対し、若年男性(15~39歳)は14・2%、若年女性は15・6%でした。接種をしたくない理由としては「副反応が心配だから」と回答した人が、73・9%にも上ります。「自分は若いから重症化しないし、副反応が心配だから」と、接種を希望しない方が多いのです。

 人々がワクチン接種について考える際、「利己的」な理由だけに囚われるのではなく、「利他的」な視点を取り入れると良いかもしれません。

 ワクチン接種者がウイルスに感染しにくくなるということは、周りの人の感染リスクも低くなるということです。自分の家族や周りの人を感染から守ることができるのであれば、接種する意義は十分あります。

 この記事が皆さんにとって、新型コロナワクチン接種を真剣に考えるきっかけとなれば幸いです。

(忽那 賢志/文藝春秋 2021年10月号)

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