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77歳加賀まりこが語る、59歳から育んだ最後の恋「自閉症の息子を育てる彼は若い時より、ずっといい顔になっていたの」

文春オンライン / 2021年9月21日 11時0分

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 昭和のかっこいい女優といえば、加賀まりこさん。彼女が主演し、日本のヌーヴェルヴァーグと謳われた『月曜日のユカ』はいま観ても新しい。

 17歳でデビューし、20歳でひとり、パリに逃避。写真家・立木義浩に乞われ、ヌード写真集を出したのは27歳のとき。27歳で子供を授かると、シングルマザーとして出産。7時間後に喪ったが、前を向いた。54年ぶりの主演作の公開を前に、その人生について聞いた。

◆ ◆ ◆

写真に撮られ「まだキスもしてねぇってのに」

 私なんかは自由に生きてきた方だと思いますよ。“女優さん”であることに縛られずに。今の人はかわいそうね。ネットで何でも拡散されてしまう。そりゃ、私の若い頃にも「まだキスもしてねぇってのに」っていうのは、ありましたよ(笑)。写真に撮られてダメになって。でもまあ、所詮その程度の恋だったんだから、いいんだけど。

 加賀まりこさんは77歳にして今秋、54年ぶりに映画に主演する。その作品『梅切らぬバカ』で演じたのは、50歳になる自閉症の息子を一人で育てる老いた母親だ。

 今は芸能人じゃなくても色々生きづらい世の中だと思うけど、他人のことを気にするなら、その何分の一でも、障害を持つ人や、その家族に目を向けてくれたらいいのにと思うのね。

 私の連れ合いの息子が、自閉症なんです。45歳になったかな。すごく可愛いのよ。私にとっても息子です。コロナのせいでずっと会えなくて、すごく寂しいの。でも、少し前にどうしても届けなきゃならない薬があって、連れ合いが息子の暮らす学園に行って「わかる? 僕のこと」って聞いたら、「加賀まりこ!」って言ったんだって(笑)。

 連れ合いとは6歳年下の演出家、清弘誠さん。恋多き女のイメージが強い加賀さんだが、59歳の時から18年間、事実婚を続けている。

 彼とは長年の麻雀仲間だったの。最初は私が好きになっても、こっちを向いてはくれなかった。若くして離婚して、お母さんに手伝ってもらいながら育ててきた息子が、自分が老いた後、どうやって生きていけばいいだろうかと彼は頭を悩ませてた。やっと私の方を向いてくれたのは、息子を預ける学園が見つかってから。事情はわかっていたから、私はそれまで5年間、ノックし続けた。

上を向いてばかりの男が、息子を育てるなかで変わった

 今回の映画は、きっと息子が持ってきてくれたと思ってるんです。息子は純真な、美しい目をしている。逆に連れ合いの学生時代の写真を見たときは、「嫌な奴。こんな顔しているあなたには、絶対惚れないわ」って言ったんだけど。上を向いてばかりの男が、息子を育てるなかで変わっていったんでしょうね。

「あなたは本当に息子に感謝ね」って、いつも言うの。息子さんの存在があったから、私も彼を好きになったんだと思う。

 人生って大変な時があっても、あとで絶対良いことがある。人生の秤はちゃんと動くと、私は思っている。私も山あり谷ありだったけど、だからって罰を受けたわけでも、過去が薔薇色だったわけでもない。つまり人生はプラマイゼロ、ね。

 加賀さんの人生には、いくつもの痛みがあった。27歳で妊娠。子供の父親とはすでに別れていたため、一人で産み育てることを決意。だが生まれた娘はわずか7時間の命だった。その後、30歳で結婚したテレビマンとは5年で破局した。

悩んでる40代、50代の女性を見ると言いたくなっちゃうこと

 今でも、子供が生きていたら幾つだろうか、とは思いますよね。年齢を聞いたときに、「あの子と同い年だわ」とか、「こんなに歳とってるのか」とかね。でもね、感傷は追いかけてもしょうがない。それに子供のいない人生かと思っていたら、60歳にして結婚して、息子と娘ができたんだから。娘は40代になったばかりで、上海にいるんだけど、感覚が違うから新鮮よ。

 本当に、人生はどうなるか幾つになってもわからない。だから周りの悩んでる40代、50代の女性を見ると言いたくなっちゃう。アドバイスしたからってその通りにするとは限らないけど、「そっちの水は辛いよ」っていうのだけは、言っておきたくなる。とくに男については、経験値でわかるから(笑)。

 普通の人がいいのよ。普通の穏やかな人。これを探せって、私の好きな女性たちには言っているんだけど。若い頃はちょっとカッコイイところに行っちゃうでしょ。それはわかるの、私もそうだったから。苦い水も一度は飲んでおかないと、見分けられない。私の連れ合いを仲良しの天海祐希さんに紹介したら、「いや~、ほんとうに普通の人!」って言われちゃった(笑)。

 過去の恋愛では、私が一方的に尽くしちゃってた。だから飽きちゃう。連れ合いは私の転がし方が上手いのね。私は事務所に所属せず、マネージャーもなしで一人でやってるから、荷物が多いと現場まで運んでくれる。「付き人扱いして」と言う人もいるけど、彼は他人を放っておけない人なのよ。前に歩いている人がハンカチを落としたら、50メートルくらい全速力で追いかけちゃう。

 一昨日は衣装合わせの場所まで車で送ってくれたんだけど、近くに着いたところで「もう大丈夫よ」って降りてビルに入ったら、違う場所だった。後ろを振り向いたら彼がいて「ほら、間違えた」って。

仕事場には一人で行く……いつも他人が一緒は、嫌

 加賀さんは神田生まれの、神楽坂育ち。父は大映のプロデューサー。映画人が集まってはいつも議論をしているような家だった。

 私は昔から、一生懸命に車止めしているスタッフとか、そういう人たちに優しくしてきたつもり。姉は文化放送、兄も松竹に就職したから、みんな裏方。家族仲が良くて、一人暮らしをしても面白くなかった。今も神楽坂の実家を建て直して、兄夫婦と二世帯で暮らしているんです。姉が亡くなって、悪口を言い合える相手がいないのが寂しいけど。

 名前だけ事務所に所属していたこともあるけど、CM契約とか面倒臭いことをお願いしていただけで、作品は自分で選んできました。ギャラの交渉も自分でしちゃう。33歳から20年間付いてくれた付き人が辞めてからは、どこでも一人よ。仕事場に来ればメイクさんもスタイリストさんもいるし、身一つで来てもなんとでもなるでしょ。いつも一緒に他人がいるっていうのは疲れるから。私は、嫌です。

※後半では、20歳で女優を一時休業し、単身渡ったパリでのゴダールやトリュフォーとの交流、文豪・川端康成とのデート秘話、50代での更年期の苦しみなどが語られます。続きは発売中の『 週刊文春WOMAN vol.11(2021年 秋号) 』に掲載しています。

text:Ayako Ishizu
photographs:Asami Enomoto
hair & make-up:Hiroshi Nomura
styling:Satoko Iida

(加賀 まりこ/週刊文春WOMAN 2021年 秋号)

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