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「面白くなくて売れなくても俺のせいじゃないよ」 ハライチ・岩井勇気が「文章がうまい人っぽく」エッセイを書けるワケ

文春オンライン / 2021年10月3日 11時0分

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出版社から「見くびられていた」と明かす岩井さん

 累計10万部突破の大ベストセラーとなったエッセイ集第1弾『 僕の人生には事件が起きない 』に続き、2年ぶりの第2弾『 どうやら僕の日常生活はまちがっている 』を刊行したお笑いコンビ・ハライチの岩井勇気さん。なぜ2作目を書くことになったのか。「佃煮」と表現するご自身の文章へのこだわりについてもお聞きしました。(全2回の1回目。 後編 を読む)

乗り気ではなかった連載第2弾も大人気

――10万部を突破したエッセイ集第1弾に続き、第2弾のエッセイ集が発売になりました。「小説新潮」でも大人気の連載ですが、今回もやはり岩井さんは乗り気ではなかったそうですね。

岩井勇気(以下、岩井) たくさんの方に読んでいただけるのは嬉しいですが、第1弾は、たまたま売れただけなんです。出版社は「10万部突破の大ヒット作」なんて言っていますが、第1弾の初版、たった6000冊ですよ。絶対売れないと甘く見積もっていましたよね。

 しかも、第1弾の発売時に開催したサイン即売会なんて、先着順でチケット配っていたんですよ。全然ファンがいないと思っているだろう、ってビックリしました(笑)。それだけ見くびっていたくせに、10万部売れたら手のひら返しで「第2弾に向けた連載はいつからにしますか?」と聞いてきて、そんな出版社の企みに乗るのイヤですよ(笑)。

 そもそも第1弾は僕の文章が面白いから売れたわけでは絶対にないし、執筆だけで暮らしていけるほどお金も全然入ってこないので、「どうでもいい日常を書くならいいけど、面白くなくて売れなくても俺のせいじゃないよ」と、そこは強調して書き始めました。

漫画はエンターテイメントだけど

――でも実際に10万部売れているということは、それだけ面白いと思ってくださる方がいるからです。周囲の方からも「面白い」と言われますよね。

岩井 そりゃ言われますけど、でも本当に面白いと思って言っているかどうかなんてわかりませんよ。

 今マンガの原作も手がけているんですけど、マンガのほうがよっぽど面白いと思います。マンガを嫌いな人ってあまりいないし、マンガって完全に「エンターテイメント」じゃないですか。でも小説やエッセイって、マンガに比べると娯楽とは言い切れないし、そもそもそこまで需要があるのかもわからない。出版社にしても、面白くなくても売れればいいという判断で出版を決めたのだと思います。

――第1弾の前書きで「文章など全く書いたことがない」と書かれていましたが、作文なども苦手だったのですか?

岩井 作文も全然書けませんでした。だいたい、ネタとTwitter以外の文章を書こうと思ったこともなかったし、自分で文章がうまいなんて思ったこともないです。澤部のほうがよほどたくさん本を読んでいるし、文章をつくるのもうまいと思いますよ。着眼点は僕のほうがあると思いますけど。

――エッセイもネタを書く感覚で書かれているのですか?

岩井 文章を書き上げたら頭の中で一度音読して、発声してもひっかからないように、というネタのリズムで書いています。僕、特にネタ帳とかもつけていなくて、思いつきでネタを一晩で書いたりするんですけど、それはエッセイも同じですね。日々普通に生活して、締め切りが来たら思い出してバーッと書く、という感じで。エッセイ1本だいたい3時間くらいで書き上げています。最近は締め切りにも少し余裕を持っていますけど、ネタもエッセイも締め切りがないと書けないというのは共通しています(笑)。

「文章がうまい人っぽく」書けてた第2弾

――第1弾に比べて文章がうまくなった、文章を書くのが楽しくなった、などの変化はご自身で感じますか?

岩井 相変わらず楽しくはないです(笑)。でも、少しは文章が上手になったと思います。第1弾は最初と最後のエッセイで文章力にだいぶ差がありますけど、第2弾はコツをつかんだので、そこは前作よりも「文章がうまい人っぽく」書けていると思います。

――「文章がうまい人っぽい」とは、どんな書き方ですか? 

岩井 「いい文章っぽい」余韻を残して終わらせることです。読者に「いい話を読んだ」と錯覚させるんです。僕のエッセイはオチがあるわけでもなく、ただ自分で面白いと思ったことをダラダラ書いているだけなんですけど、最後の2~3行を「っぽく」書くと、何かいい文章みたいな読後感で終わらせられるんですよ。

 なので第2弾もそれで書いていたら、担当編集さんから「“~っぽく”書くのに頼りすぎていませんか?」と指摘されたので、「うるせえよ」と思って、ちょっとだけ照れたり、反省したりと、僕の気持ちで終わるように変えました。

――担当編集さんからの修正や指示などは結構あったのですか?

岩井 いや、誤字や語尾を直されるくらいで、そんなになかったです。エピソードそのものに対して「これはちょっと」という修正が2回続くと、そのエピソード自体をボツにして違うストーリーを書いていたので、書き上げた文章に対して修正がたくさん入るということはありませんでした。

母の衝撃の告白

――「どうでもいい日常」とおっしゃっていますが、岩井さんのエッセイはどこから読んでも楽しめます。特にお母様とのエピソードは、「息子を持つ母」として羨ましいと思いながら拝読しましたが、お母様のご感想は?

岩井 それが、マジでびっくりしたんですけど、読んでないんですよ、母。去年の暮れくらいに聞いたら「衝撃の事実教えてあげようか? 私まだ読んでないの」と打ち明けられました。

 重版のたびに、身銭切ってめっちゃ買って親戚や近所の人に配りまくっているのに、読んでないってなぜ? と理由を聞いたら「熟成させて、熟成本にしてるの」と言われました。意味わからねぇ……。そもそもエッセイの中に母親が出てくるということも話していないので、もし読むことがあったら驚くでしょうね。僕も別に、「書いてあるから読んで」とは言わないですし。

――その少しツンデレなところも、仲が良くて羨ましいです。

岩井 ええっ、そうですか……!? 僕の中では、「35歳にもなって、思春期の高校生みたいなことを母親相手にやって、何しているんだよ」と読者に突っ込んでもらえたら面白いかなと思って書いたので、まさか「母親と仲が良くて羨ましい」と言われるとは思ってもいませんでした。そんなふうに読む人もいるんですね……。

僕のエッセイって「佃煮」だと思うんです

――すみません(笑)。でも、そう考えると、岩井さんのエッセイを多くの人が面白いと思うことも納得できませんか?

岩井 極端なたとえだと、僕のエッセイって「佃煮」だと思うんですよ。たとえば友達の家とか事務所に遊びに行くときに、ゼリーの詰め合わせを持っていくと老若男女問わずたいてい喜ばれるんですけど、佃煮の盛り合わせを持っていくのは微妙なわけですよ。そもそも佃煮苦手な人もいるだろうし、「高価なんだろうけど、もらってどうするんだよ」って思うの。それが小説とかエッセイじゃないかと僕は思うんです。だから、佃煮好きの人は僕のエッセイを買ったらいいし、佃煮好きじゃない人にまで強制したくはないですね。

 先日も、島崎和歌子さんや磯野貴理子さんから「エッセイ読んだよ。面白かった」と言っていただき、「は!? あげてもないのに、買って読んでくださったんですか?」と感謝すると同時に、「そんなに佃煮好きだったんですね……」と思っちゃいました。

 自分が作ったからと言って、「佃煮親善大使」みたいにはなりたくないし、佃煮を気に入ってくれた方に「ぜひその佃煮をいろんな人に広めてください」とも思わないです。そもそも僕、漬物食えないし、佃煮もそんなに好きじゃないので……。それでもエッセイを書くのは、「俺の作った佃煮が家にあったので、よかったらどうぞ」という感じなんでしょうかね。書くのは時間がかかるので、話す方が楽ですけど(笑)。

(取材・構成:相澤洋美 撮影:山元茂樹/文藝春秋)

  【続きを読む】「アイドルじゃないのに本の宣伝で写真撮られるのもイヤだった」 ハライチ・岩井勇気が作り上げた「35歳・独身・一人暮らし男性」の日常

「アイドルじゃないのに本の宣伝で写真撮られるのもイヤだった」 ハライチ・岩井勇気が作り上げた「35歳・独身・一人暮らし男性」の日常 へ続く

(岩井 勇気)

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